インタビュー タイの新潮流
WiSE編集部 RyDEEN Co., Ltd.
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2018.03.25

20年、30年後に繋がる研究支援を

独立行政法人日本学術振興会
バンコク研究連絡センター長 山下 邦明

《プロフィール》
やました くにあき

■香川県出身、1947年生まれ。71年上智大学外国語学部卒業後、NGO事務局員〜国連職員(UNESCO本部フランス・パリ)〜九州大学教授を経て2012年7月から現職。
■座右の銘:人は出会うべき人と出会うべき時に出会う
■好きな作家:五木寛之、浅田次郎など
■趣味:人と会うこと、飲むこと、歌うこと
■バンコクの行きつけの店:ワイズの美食倶楽部・掲載店(まず一度は行ってみる)
■休日の過ごし方::食べ歩き、読書、タイマッサージ

 


 

事業概要についてお聞かせください
まず、日本学術振興会とはその名称通り“学術を振興する機関”です。文部科学省傘下の独立行政法人ですが、日本最古の機関として、今年で設立86周年を迎えました。日本の大学教授や研究者への研究資金として最大の機関でもあり、年間3,000億円ほどを提供しています。科学研究費(科研費)の提供を求める研究は、年間10万件ほど。その募集から選考、贈呈まで我々が一手に担当しているわけです。

これは希望者全員に与えられるわけではなく、選考を経て約2万5千件に絞られます。研究者が受けられる支援としては科研費の他、文科省からの運営費交付金があるのですが、その予算は年々減少し、研究者にとっては厳しい状況となっていますね。

ノーベル賞受賞者も多数輩出していると伺いました
はい。近年ノーベル賞を受賞している先生方も若い時に、科研費の支援を受けてきています。この科研費とは、主に基礎研究に対して提供されるもので、基本的には人文学・文学も含め、社会科学、自然科学、医学、農学、歯学などすべての学術分野に対して提供されています。基礎研究は、20年、30年後に結果が出るものです。息の長い支援に対して、感謝の意を評してくれる先生方も多いですね。

また日本だけではなく、海外の研究者と連携を図って共同研究を促進させるのも我々の役割です。そのため、世界中に海外センターが10カ所設置されています。

バンコク事務所の役割は?
もっとも大きな役割は、アジア各国の共同研究に向けた協定提携のための啓蒙活動です。お互いの交流の必要性を理解をしてもらうべく、各国を訪ねています。フィリピン、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、マレーシアといったASEANに加え、バングラデシュなどを含めた機関と共同で資金を出し合っています。その他、論文博士号やポストドクターの研究を目指す主に若手の研究者を対象に、日本の大学院に招く事業もあるので、

年間を通してタイの大学を回っています。もちろん前述したASEAN全域なども同様です。

大学間の連携も活発になっています
僕がタイに赴任当時、タイに事務所を構える日本の大学は20余りしかありませんでしたが、今は50を超えました。それに比例するように、共同研究も活発になっています。
例を挙げると、カセサート大学と山口大学。カセサート大学は農業分野に力を入れているんですが、薬学や農学分野が強い山口大学と連携して研究を行っています。それは熱帯植物を発酵させ、新しい乳製品を作る研究だったのですが、我々が3年間支援したことで研究の成果が出ています。今後、産業界が絡んで製品化されていくでしょう。

また京都大学では、メコン川流域の河川の自然環境保護のため、ベトナム、ラオス、タイと協力した取り組みを行っています。

研究者同士の交流も盛んだと
過去に1〜2年、我々の機関を通じて日本の大学院で研究を行った外国人を対象に、「同窓会」を設けています。今では、世界18カ国に同窓会があり、2万6千人ほどの同窓生がいます。
バンコク事務所では、タイ、フィリピン、インドネシア、バングラデシュ、ネパールの同窓会への支援をしています。年に1回か2回、同窓会が主催するセミナーやシンポジウムが開かれるのですが、普段なかなか揃わない研究者が顔を合わせることで、いい刺激を受けているようです。

また、同窓会メンバーの教え子が日本の研究に興味を持ち、同窓生になるなど縦の繋がりも生まれています。

今後の展望について
タイはASEANで突出した発展を遂げてきました。かってタイで博士課程を有する大学は少なかったですが、国内で博士号を取得できませんでしたが、今では可能になるなど大学のレベルも高まっています。今後はタイ周辺国に目を向け、各国と日本との結びつきをより強固にするのが私の役割ですね。

バンコクセンターのスタッフ、全員集合!


 

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