タイの刑事裁判に潜入! (前編)〜”トンロー強盗事件”の初公判

被害者は日本人! 強盗事件の初公判を傍聴。
当事者不在で、判決はどうなる?

2015年2月に日本でも報道された(犯人を逮捕した日本人が語る”トンロー強盗事件”)、“お手柄邦人男性”が捕まえた強盗犯の初公判が、7月3日、刑事裁判所で開かれた。
被害者の日本人は本帰国のため、「仕事を休んでまで行けません」とあっさり辞退していた。公判開始は9時。しかし、待てど暮らせど、始まらず、9時40分、最初に入廷したのは犯人ら3人で、裸足に上下オレンジ色の囚人服を着用。ロープでつながれ、手錠と足かせをつけられている。座ったのは、編集子と並びの傍聴席。隣に刑務官や警察官の姿はない。

さて、事件を少しだけおさらいしよう。2014年11月、犯人ら3人は、スクンビット界隈で日本人男性が操作していた携帯を奪おうと襲いかかったものの返り討ちにあい、1人を置き去りに逃走。後日2人も御用となり、“お手柄ニッポン人”と相成った。

閑話休題。10時、1時間遅れで被害者不在の公判が開始された。裁判官が証人として呼び出したのは、事件当時、通訳として付き添った(被害者の)同僚女性。裁判官は「被害者の言葉を一語一句、忠実に訳したのか、それとも、被害者からまとめて話を聞き、要約して訳したのか」など事細かく、当時の状況を聞いていく。そんなやりとりを犯人らは、ジッと見ている。

傍聴しているうちに、通訳者が気の毒に思えてきた。犯人逮捕時やその後も、被害者が呼ばれる度に警察署に付き添い、挙句、“偽証はしない”との誓約書にまでサインさせられる。踏んだり蹴ったりである。しかも、裁判に当の本人(被害者)は来ないし、代理出廷を拒めば、通訳者も罪になるとまで言われたそうだ。不憫なのは、裁判で、犯人やその家族の前にも顔をさらけ出す上に、被害者に代わって、犯人特定の役回りを演じなくてはならない。まるで当事者。聞けば、通訳者の両親は出廷要請に対し、「なぜ当事者(日本人)が来ない。うちの娘に何かあったらどうしてくれるの」と釈然としていないご様子。ちなみに日本も法律上、正当な理由がなければ、拒否できず、処罰の対象となる。とはいえ、日本からでは、簡単に出廷できないのも事実。次回は、日本とは違う、実際の裁判の状況をお伝えする。

後編はこちらから>タイの刑事裁判に潜入! (後編)〜”トンロー強盗事件”の初公判

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