アビーム・コンサルティング (タイランド)

メコン経済圏にまでコンサルティングサービスを

MD 四十谷 裕之

《プロフィール》 1964年生まれ。福井県出身。同志社大学大学院修了。大手物流会社を経て、2000年アビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルティング)入社。05年より、中国(上海)、東南アジア(タイ、マレーシア)、US(ロスアンゼルス)での海外プロジェクトを経験。06年執行役員、10年よりABeam Consulting Thailand MD。現在に至る。
 

「メコン経済圏にまでコンサルティングサービスを広げていきたい」

―タイでの事業領域を教えてください
 柱としているサービスは3つです。1つめは、売り上げ全体の7割を占める基幹業務システムの導入支援。これは、主にクライアントの経営課題の解決のために、ERP(統合業務パッケージ)をベースとしたIT基盤の構築をメインとしたサービスです。

次に、業務改革、プロジェクトマネジメント、新規ビジネスモデルの立ち上げ支援といった、ビジネスコンサルティング領域ですね。

最後が「AMO (Application Maintenance Outsourcing)」と呼ばれるIT導入後の保守運用サービスとなります。



業績はいかがでしょうか

 2013年と同様に、業績は順調に推移しております。主なクライアント層は、日系6割、タイ(欧米含む)4割です。メインである日系企業は全体の7割が自動車関連企業となります。徐々にですが、タイ大手企業の案件が増えています。

7月に開催したセミナー(BOI/日経BP社主催)でもお話しましたが、消費者の購買意欲が高まりを見せている中、特に流通・小売業の動向に目が離せないと感じています。



ビジネス領域を広げていると聞きました

 タイローカル企業へのサポート案件が増えるなかで、東南アジア(ASEAN)域内の可能性を感じ、今期(4月)からは4本目の柱とするべくビジネスコンサルティングの新事業(ASEAN域内支援事業)をスタートさせました。

ご存知のとおり、東南アジア(ASEAN)では2015年にASEAN経済共同体(AEC)発足を控えています。それにより、通関手続きの簡素化にはじまる自由貿易が進むと言われ、EUに似た経済共同体に変わります。なかでも、タイを中心とするベトナム・カンボジアといった陸続きの東南アジアは大メコン経済圏と呼ばれ、同圏内を消費市場と捉えた流通や小売などの非製造業の成長が期待されています。

弊社では専門チームを組み各国の市場調査をはじめるとともに、ASEAN域内のビジネスコンサルティングをタイを基点に開始しました。すでに数件、大手日系企業からの引き合いもあります。



海外赴任はタイが初と聞きましたが

 海外赴任は今回が初めてですが、05年以降は、上海、タイ、インドネシア、マレーシアといったアジアを中心に、海外プロジェクトに携わってきましたので、海外に対する不安はありませんでした。ただ、トップ=決定権者として赴任すると聞いたときは、まさに青天の霹靂でした。



トップとしての4年半を振り返りいかがですか?

 2010年に赴任し、最初に取り組んだのが、事業の選択と集中です。赴任当初にあった3つの事業を1つに集約させ、収益重視路線を取りました。その後、少しずつ事業を拡大してきました。また、我々のサービスはモノを売るビジネスではなく、それぞれのコンサルタントがお客様に無形のサービスを提供するビジネスです。よって一人ひとりのコンサルタントが会社の「資本」ですので、人材育成には力を入れています。

新たな試みとしては、新卒社員を1年間、日本(本社)に派遣させる「OTA(オーバーシー・トレイニング・アサイン)」という教育制度を3年前から実施しています。日本でのトレーニングや実際のプロジェクトに従事するなかで、アビームという会社を理解し、経験させ、タイに呼び戻す方法です。もちろん、中途採用のメンバーに対しても日本から講師を呼んで10日間トレーニングをする育成プログラムを実践しています。



今後の目標を聞かせてください

 今年で5年目になるということもあり、タイ赴任の集大成の気持ちで取り組んでいます。ASEAN域内支援事業を今期からスタートさせたとお話しましたが、まずはその基盤づくりを着実に完成させたいと思っています。

個人的には、赴任当初に目標の一つとして掲げたビジネス英語のレベルアップですが、東南アジアの中でのコミュニケーションであれば苦にならないレベルまで上達したかなと思っています。

趣味のゴルフは日本にいた頃と比べて際立った上達はしていませんが、毎年のアベレージは0.5ずつ減ってきていますので、少しは成長しているのかなと前向きにとらえています。ちなみに今年の平均は90を切るまでになりました。



四十谷さんにとってのアビームとは

 社内を見て仕事をするのではなく、我々は“クライアント・セントリック”と呼んでいる、お客様が望むサービスを提供することにフォーカスしている点が誇りであり、アビームという会社の一番好きなところです。この「会社としてのコア精神」を後進に伝えていくことも、今後の役割の一つだと思っています。


 

編集後記
「日本発、アジア発から世界へ」を掲げ、総合コンサルティング会社としてグローバル展開を進める、アビーム・コンサルティング。企業を成長へ導くサポートがメインの業界で、自社の力を測る指標は、いかに優秀なコンサルタントを多く抱えるかだ。四十谷氏が「人材力は会社の資本」とし、1年間の日本派遣を社員教育に取り入れたのも頷ける。刻々と、産業トレンドが変貌する東南アジアのいまを切り取り、“タイ発”の新事業を立ち上げた同氏から、アビームイズムが感じられた。(北川 宏)

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