SBIタイオンライン証券

後戻りはできません常識を覆す船出は、始まったばかりです
CEO 元久 存 

《プロフィール》
もとひさ・めぐむ
■1961年生まれ。山口県出身。86年山一證券入社、2001年松井証券専務取締役。11年SBIホールディングスに入社、ベトナム、韓国駐在を経て14年SBIタイオンライン証券設立に伴いタイ赴任、現在に至る。
■バンコクの行きつけの店:寅次郎、なぎ屋、Khunying(エカマイの海鮮タイ料理)
■よく見るまたは、活用しているウェブサイト:アルク(英辞郎)
■休日の過ごし方:ネットサーフィン

 


 

サービス開始(2015年10月)から5ヵ月が過ぎました
少なからず、価格面(手数料)で業界へのインパクトはあったと思います。業界浸透は図れたと感じていますよ。今後は、顧客獲得に向けた地道なブランディングを続けていきます。タイの証券市場は、売買が非常に活発ですので、インターネット・トレーディングは受け入れやすい土壌があります。意外かもしれませんが、システム(技術面)も日本と同様あるいはそれ以上かもしれません。現在、タイの証券口座は約110万口座ですが、潜在的には500〜600万口座程度までは拡大するでしょう。経済成長とともに中間所得層が増えていけば、自ずと株の取引に興味を持つ人も増加していくと思います。そうした“これから株をはじめる人”をターゲットに個人投資家を増やして行きたいですね。

 

ネット証券会社のパイオニアである御社は一日の長がありますね
日本での証券取引においての手数料の自由化は1999年でした。同時に訪れたのがインターネットの普及です。この2つのインパクトが日本の証券市場を一変させました。いまでは、個人投資家のほとんどがネットサービスを活用し、SBI証券のシェアも個人取引の約4割を占めるまでに至っています。とはいえ、成功までには多くの失敗も重ねています。その経験があるからこそ海外展開に踏み出せました。タイにおいては、フィナンシアサイラス証券というパートナーに恵まれたことも大きいですね。日本と違うのは、タイは手数料の自由化が先で、ネット化はその後でした。タイの証券事情に合わせたブランディングが必要でしょう。

 

具体的にどのような手法でしょうか
ご存知の通り、タイはSNS大国と呼ばれるほどフェイスブックやインスタグラム、ラインといったSNSツールの利用者が多い国です。そこで、弊社としてタイ語のフェイスブックを立ち上げ、すでに6万フォロワーに達しています。同時に、企業としては発信しにくい情報は個人(元久)のフェイスブックで発信しています。こちらのフォロワーも1万7000人を越えました。タイ人への訴求を考える上で気付いた点は、直感的に判断する傾向が強く、右脳を刺激するような手法が効果的だということです。現在、タイでは日系証券会社(実際に営業している)は新参の弊社を含め数社だけです。我々が採る戦略は、日本ブランドの活用です。2000店以上の日本食レストラン、街を歩けば目につく日本語の看板やポスター、海外旅行先では日本が人気№1です。これを逆手に取らない手はありません。

 

しかも、タイの大手証券会社の多くが外資系証券会社です。マレーシアや台湾企業がトップクラスであれば、日本企業が割り込んでもおかしくはないでしょう。日本色を強める手法で挑んでいきたいと思っています。手数料の大幅引き下げで少なからず、敵を作ったことは確かです。もう後戻りはできません。とにかく前に進んでいくしかないのです。

 

SBI以外でも、海外経験が多いと聞きました
若いころに米国留学、SBIでは韓国、ベトナムと赴任してきました。ベトナムと比べればタイ・バンコクは衣食住すべての面で天国ですよ。立ち上げから時間も経っていませんし、なかなか休む時間もありませんが、タイ語学校に通い、タイ人スタッフと食事会を開き、コミュニケーションを図る努力は続けています。彼らとローカル店にも通うのでポイントカードが貯まり放題ですよ。人材流出を防ぐ意味でもスタッフとの日頃のコミュニケーションは大切です。実は、タイには縁を感じているんです。若いころ、米国に渡った際、最初に入った不動産屋で日本人と間違えて私が話しかけたのがタイ人でした。英語で初めて話した相手です。結局、意気投合し、その後2年間ルームシェアした、古い友人となりました。当然ながら、タイ赴任後もよき友人としてお付き合いしています。当時は、知らなかったのですが、タイのとある財閥の一族だったんです。

 

元久氏にとって、SBIとはどんな企業ですかい
思いがけない場所へ進出する会社だなと思います。2〜3年後、今度はどこに進出するのだろうかと思い描いています。投資家にとっても魅力=興味の尽きない企業ではないでしょうか。国内でネット証券会社の経営に携わり、今度はタイ(海外)で、再度、立ち上げから経営を経験できることを感謝しています。まるで人生を2度生きている感じでしょうか。

 


 

編集後記
1999年の株式媒介委託手数料の自由化と同時に、それまでの対面営業とは対極的なインターネット売買を開始。最大のウリは手数料の安さで、瞬く間に個人投資を取り込み、いまでは日本の個人投資家の4割を顧客に持つ。昨年、タイ初のネット専業証券会社を開業。日本同様に圧倒的な手数料の安さとネットという簡便なツールを使い、業界にインパクトを与えた。マスコットの法被には「薄利多売」の4文字。「隠しても仕方ありませんから」(元久氏)。業界の風雲児の姿があった。(北)

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