石田大成社タイランド

IT化に対応、製造業以外にインバウンドなど新たな需要開拓に挑む
社長 厚見 紀彦 

《プロフィール》
あつみ・としひこ

■1972年生まれ。84年〜87年にドイツ滞在。94年に石田大成社に入社。98年から11年もの間ベルギーに赴任後、2009年タイに赴任。11年より現職。
■愛読書:稲盛和夫氏の著書
■趣味:楽器演奏、サッカー観戦、絵画鑑賞
■尊敬する人物:父親
■バンコクの行きつけの店:鳥屋花、なぎ屋
■愛用の腕時計:Baume et Mercier
■よく見るまたは、活用しているウェブサイト:Facebook。
つながっている方々の仕事や趣味に関する投稿や、リンク先の閲覧がメイン
■休日の過ごし方:バンド演奏や作曲など音楽の趣味と読書


 

事業内容を教えてください  
当社は100年前の1916年に京都で創業し、大手百貨店のチラシなどの印刷を始めました。それをきっかけに、イベントや商品の告知内容も企画する、広告代理店のような事業に拡大。京都から首都圏や中京地区にも進出し、製造業との取引も始まりました。タイにおいては自動車など主に製造業向けのマニュアルを作成しています。渡されたデータを印刷するだけではなく、メーカーと協力し企画・編集段階から参加します。2010年にタイにある日系企業を買収し、そのアユタヤの印刷工場を利用していたのですが、12年に他社とのジョイントベンチャーで新たな工場を造りました。印刷も行いながら、日本同様に製造業などの販促サポートツールの作成、イベントや展示会などの告知の企画も行っています。

 

タイでもデジタル化が進行しています。ビジネスモデルも変革の時期ですね
当社は印刷業が祖業ですが、当然時代の流れに対応は必要でしょう。広告宣伝関連はもはや紙よりもデジタルが中心です。IT事業はホームページ作成などから始まりました。しかし今やパソコンではなくスマートフォンやタブレットの時代です。アプリケーションの開発にも力を入れています。従来は紙だったマニュアルやカタログも、アプリケーションに落とし込むことも増えてきました。製造業向けだけでなく、需要が増えそうなEラーニングなどにも対応できるよう、動画や音楽などのデータも組み込んだものも作ることができます。また今はIoTといい、あらゆるものをインターネットに繋げるというムーブメントが起こっていますが、その中で使われるAR(拡張現実)技術を駆使したアプリケーションも当社が開発し、情報の連携に役立てています。他にも日本で小売業の販促サポートの経験から、物流も理解したうえで、Eコマースサイトの開発・運営も開始していきます。

 

ITにおいて日本と違う点もあるようです 
デジタルサイネージで流すコンテンツ作りは、日本でもタイでも重点事項です。当社ではタッチパネルによる双方向かつタイムリーに情報が流れるコンテンツを中心に提供しています。自動車のディーラーなどに置き、最新の製品情報やニュース伝達に使われるケースが多いです。タイでのIT事業は、BtoBに関わるものを中心に据えています。同じ会社・グループ内での情報伝達に、当社のITソリューションが使われることもしばしばです。

 

製造業以外で需要が伸びている分野は何でしょう
観光業は大いに期待できます。タイから日本への観光客が大幅に増加している。20年の東京オリンピック・パラリンピックまでにもっと訪日客を増やすのに私たちも協力しようと、旅行代理店や日本の行政のサポートも推進しています。さらに日本とタイにおいて、社内にインバウンド事業部を立ち上げました。日本で代理店の元、ツアーの広告を作ってきた経験も生きています。2年前から「MadooJapan」(マードゥー・ジャパン)という、フェイスブックページを立ち上げ、旅行を含めた日本情報をタイ、インドネシア、ベトナム語で発信中です。「いいね!」はタイ語ページで38万、3ヵ国で100万近くに達しました。観光地である京都発祥の当社が、本当の日本の姿を伝えることにより、インバウンドを喚起します。

 

今後について
当社は印刷という川下から、企画という川上の方にも事業を広げてまいりましたので、その強化を進めます。インバウンドでは今後は単なる旅行以外のものも広げたいですね。当社の取引先に医療機器メーカーもありますので、協力して医療に関してもインバウンドもサポートしたい。タイではこれから高齢化が進むので、シニアビジネスやバイオビジネスなどにも商機はかなりあるでしょう。顧客と当社でベストな方法を考え、最適な情報伝達を行えるようにしていきます。

 

海外駐在は2度目だそうですね
1998年から2009年までベルギーにいました。まず営業を離れ、制作現場での実践後、北欧4ヵ国での事業に注力し、その後はルーマニアやブルガリアといった東欧諸国を開拓してきました。EUは国境に関係なく往来がかなり自由でしたから、イギリス以外のベルギーの近隣国にはよく車で行ったものです。欧州から直接タイに来たので、日本からいらした方とはまた違う、先入観の少ないフラットな目線でこの国を見られると思います。

 


 

編集後記
IT化が進み、変革を迫られた印刷業。タイにおいて石田大成社は自動車産業を中心としたマニュアル作成という安定した事業を続けつつ、デジタルの新事業にも果敢に挑戦している。印刷という受け身の立場から、自ら企画を考える能動的な姿勢は、同じくデジタル化の影響を受ける出版に身を置く筆者にも大いに刺激となった。そして偶然、筆者も同時期に欧州某国に在住。同じEU加盟国からタイヘ移った厚見氏とは最後の話題で大いに盛り上がった。(斯)

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