タイを蝕む“ごみ問題”

リサイクルのはずが…自国を失うことに?

年々深刻化する世界の“ごみ問題”。タイでは今月に入り、絶滅が危惧されているクジラやアオウミガメがプラスチックごみを飲み込み、死亡したニュースが連日報道されている。毎年、プラスチックごみが原因で海洋に生息する数百匹の生物が亡くなっている海洋汚染問題が、改めて浮き彫りになっている。

その矢先、去年1年間でタイに輸入された電気電子機器廃棄物(E-waste)は約9万トンに上ったと、タイ工業省が発表。「なぜ有毒ごみをわざわざタイに輸入する必要があるのか」と、国民から不安の声が挙がる。

他国からE-wasteを含む産業廃棄物を輸入し、ごみのエネルギー化を進めるタイ。最も問題なのは、環境上、適正なE-waste管理のためのインフラ整備や知識を持たない、無許可の個人経営の不法リサイクル業者の存在である。野焼きや溶剤のリサイクル作業によって発生する有害物質を含む煙や蒸気、排水口への垂れ流しなど、近隣住民の健康にも被害を及ぼすのは必至だ。

ご存知の通り、E-wasteは鉛やカドミウム、水銀といった健康に悪影響を及ぼす有害物質を含有。この不適正処理によって甲状腺機能異常、肺機能低下、成長障害、精神的疾患、認知発達障害、細胞毒性、遺伝毒性などとの関係性も報告されている。タイのE-waste問題を研究するニッチャー学者は「すぐにでもこの問題の対策に取り組まなければ、近い将来、タイは誰もが想像したことのない恐ろしい状況に陥るだろう」と警鐘を鳴らす。

海外からのごみ受け入れをめぐっては、中国が今年1月からプラスチックをはじめとする廃棄物の輸入を停止する措置を導入。タイではパソコンやスマートフォンの普及に伴い、その分野のE-wasteだけでも3倍近い数字になるとみられているが、現在のところ、政府はそれに適応する法律の発効などの政策をとる予定は無いという。

このまま適切な管理体制を興じなければ、タイは“微笑みの国”から“ごみの国”になる日も、そう遠くはないのかもしれない。

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