疑惑の寺院に、強権発動

遅々として進まない捜査に、首相が伝家の宝刀(44条)を抜く

 

2月16日、プラユット暫定首相は、超法規的な権限を行使できる暫定憲法44条を適用。中部パトゥムターニー県にあるタンマガーイ寺院を、強制捜査対象地区とした。
同寺院は、マネーロンダリングや収賄疑惑など、300を超える罪に問われている疑惑のデパート。最重要人物のタマチャイヨー僧侶の逮捕に向け、昨年から法務省特別捜査局(DSI)が動いているが、“信者の壁”に阻まれるなど遅々として進展せず。だが、今回の44条の行使で、捜査員以外は同寺院への立ち入りができなくなるほか、反対・妨害行為、写真や動画の撮影行為は禁止。違反した場合、1年以下の懲役または2万バーツ以下の罰金が科せられる。
DSI、警察、軍隊は、44条の発動を受け、同日午前4時から寺院内の強制捜査に踏み切った。出入口で検問を行い、外部からの進入を阻止。また、他の寺院の僧侶と結託して妨害行為を行わないよう、DSIは国家放送通信委員会(NBTC)と通信会社から協力を得て、タンマガーイ寺院とその周辺の通信を遮断した。
捜査員が退去を促すも、院内に残った信者達は1000人余り。食料の備蓄が底を付くも出ていこうとせず、抗議活動を継続。25日には、ある男性信者が寺院近くの電波塔に登り、「今夜9時までに44条を撤回しなければ、ここから飛び降りて死ぬ」と書いたボードを掲げ、捜査活動の中止を訴えた。捜査員や僧侶たちが説得するも応じず、ロープを首に巻き、塔から投身。自殺を図ってしまった。
強制捜査から2週間(3月2日時点)。これまでDSIと警察は、4000人以上の捜査員を投入、空からはドローンを駆使するなど、2000ライ(3・2㎢)に及ぶ全敷地をくまなく捜索しているが、いまだタマチャイヨー僧侶は発見されず。当初、「10日で決着を着ける」と意気込んでいたパウィット副首相兼国防相は、「逮捕するまで捜査を続ける」と長期化を覚悟。同暫定首相は記者に対し、「44条は継続する」と、手を緩める気配はない。
伝家の宝刀、「44条」を発令するまでになった今回の逮捕劇。タイ軍政の威信をかけた大捕り物の行方に、国民の熱い視線が注がれている。

 

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