自殺を生中継するメディア

警察と報道関係者に取り囲まれた容疑者
現場のプレッシャーが自殺を誘発した可能性も

 

 18日、バンコクのバンケーン地区にあるラチャパット大学プラマハーナコーン校で殺人事件が発生。男性教授2名が死亡し、犯人は逃走した。死亡したのはピチャイ・チャイソンクラーム教授(50)とナッタポン・チュムウォラターイー教授(50)で、警察は同大学内に設置された防犯カメラの映像から同僚のワンチャイ・ダナイタモーヌット教授(60)を犯人と特定し、行方を追っていた。
19日14時40分頃、警察は容疑者をサパーンクワーイにあるホテルの駐車場で発見。同容疑者は車内で自分の頭に銃を突き付けていた。警察は自殺を思いとどまるよう説得。事件の第一報は地元新聞社によるフェイスブックのライブ映像ですぐに広がり、現場には多くのメディアが殺到。説得開始から約5時間後、容疑者は自殺を図った。
一連の事件を生中継したメディアの行為は、08年から施行している放送・通信事業法(第37条)にふれるのではないかと世間から疑問の声があがった。それに対し、タイ国家放送通信委員会(NBTC)は「最も重い刑罰は事業許可取り消し処分が適用される」とコメントしている。
なお、容疑者は遺書を残しており、その内容は殺害した教授2名の犯行動機だった。かつて2人にいじめられたこと、名誉を傷つけられたことを挙げ、最後に「絶対に許せない」と書かれていたという。
容疑者の立てこもりから自殺に至るまでの経緯を生中継したメディアに対しては「今回の報道は行き過ぎ」や「ショッキングな映像はモラルに反する」、「容疑者に対する人権侵害だ」などの批判がネット上で相次いだ。
交渉術など心理学に詳しいNIDA大学のアーノン教授は事件の映像を見て「カメラに撮影され続けながら、警察の説得も受けていた容疑者は取り囲まれた状況に対してかなりのプレッシャーを感じ、自殺に追い込まれたのではないか。もし、警察がしっかり報道規制を敷いて容疑者への説得を適切に行っていれば、自殺を食い止められた可能性がある」と自身のSNS上に投稿した。この意見には多くの賛同が寄せられ、警察の対応能力とメディアの報道姿勢の問題が浮き彫りとなった。

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