“ロボット大国”タイへ

ロボット製造開発が国を挙げての巨大市場に

 
すでに人口ボーナス期も終わり、労働賃金が上昇し続けているタイ。3年後にはタイ国内企業の半数がロボットを導入し、2030年には約65万人分の労働力をロボットが担うことが予想されている。

 昨年の閣議で、政府は産業用ロボットとファクトリーオートメーション(FA)化に関する促進施策を承認。BOIの恩典には、FA化を進める工場に対し50%の法人税免除が追加され、財務相は組み立て部品の輸入税免除などの優遇措置を次々と決定した。

最大の需要はやはり自動車製造業で、東南アジアに輸入されているロボットの約4割を占めるスポット溶接機。次いで射出成型取り出しロボット、多関節ロボット、リニアガントリーロボットが続く。

ロボットの国内生産状況は、日本やドイツから部品を輸入し国内で組み立てるシステムインテグレーション(SI)が主流だが、将来的に製造開発の全てを国内で賄いたい政府は、独自のロボットテクノロジーを構築すべく研究開発機関「ロボティクス・エクセレンス・センター(CoRE)」の設立を発表。
既にタイ石油公社(PTT)、サイアム・セメント・グループ(SCG)などの大手企業では自社でロボット開発を行っており、タイ・ビバレッジも2億バーツを投じてロボット開発会社を立ち上げている。

サイアム商業銀行の経済ビジネス情報センターによると、自動車製造業で1機350〜450万バーツのスポット溶接ロボット(耐用年数8〜12年と仮定)を導入した場合、工員5人分の労働コスト(日給400〜480バーツ)が8〜10年で回収できるという。電子関係や飲食業はさらに6〜10年と早く、導入するにはこの上ないタイミング。ヒトよりもミスが少なく、さらにコストも低いとなれば、現場導入は加速していくだろう。

タイが“世界の工場”の称号を守り抜くため、国を挙げて取り組む構えのロボット開発・FA化。遅々として進まぬ施策も多い中、果たしてどこまで実現に近づけるだろうか。

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