社会保険料値上げ

来年1月発効、26年ぶりの値上げに踏み切る

 


急速な経済成長を遂げ、国民のライフスタイルも以前とは変わりつつあるタイ。先月末、労働省社会保険事務局が26年ぶりに社会保険料の値上げを発表した。

タイでは、社会保険料の支払い額は月額の基本給与額に応じ、一律5%の源泉徴収となっている。今回の施策では、基本給上限を15,000バーツから20,000バーツに引き上げ、それに伴い、毎月の差引額も750バーツから1,000バーツと、250バーツ増となる。同局のスラデート事務局長は、「現在のタイの経済状況や物価を考えての決断である」と述べた。

タイ国立開発行政研究院(NIDA)が社会保険加入者1251人を対象にした調査によると、反対約60%、賛成約20%、残り約20%はどちらでもない、という結果であった。反対派は値上げせずに現状維持、賛成派は給与額に連動するのは妥当との意見があった。また、医療費、退職金、失業手当の順にサポートを望んでいることも分かった。

今回の施策では値上がりだけでなく、それに付随する「医療サービス」にも焦点が当てられている。現在、社会保険指定の病院は国内238箇所。社会保険加入者1430万人と比較すると、極端に少ないのが現状だ。加えて、同局は労働者1人当たり年間1,460バーツしか指定病院側に助成しないことを発表。病院側の負担が増すことになる。前出を受け、来年は3箇所の私立病院が指定先から脱退すると発表。私立病院協会のポンパット会長は「国立病院より、私立病院の方が医療サービスが高くなければいけない、という概念はおかしい。国立病院では時間外診療も別料金だが、私立病院はそれができないというのも問題ではないか」とコメントした。

「労働省が現在検討中だが、来年1月には省令として発効されるだろう」と話す同局のスラデート事務局長。医療費を筆頭に、出産、子育て、年金と、ライフステージに不可欠な社会保険。新施策は、真の“労働者のための福祉”となるか。今後の行方を見守りたい。

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