罪を問われない金持ち

スピード超過による交通死亡事故が発生
タイにはびこるエリート特権の闇が再び露見した

 

去る13日午前、アユタヤ県とサラブリー県をつなぐパホンヨーティン通りで、自動車輸入会社社長、ジェンポッブ容疑者(37)の運転する黒のベンツが前方を走るフォードに衝突。フォードに乗っていた大学院生のギッサナさん(男性・32)とタンタパンさん(女性・34)の2人が死亡した。
SNSにアップされた動画では、ベンツが速度を落とさないままギッサナさんの車に衝突。炎上する様子が映しだされていた。事故発生後、同容疑者は「針が怖い」という理由でアルコール及び薬物検査を拒否。警察がこれを受け入れ、検査を行わないまま、バンコク都内の病院に搬送されたことが発覚した。
このお粗末な捜査にネットは大炎上。説明を求める国民に対し、国家警察のソンポン副広報室長は「容疑者はアルコール検査を拒否できるが、タイ国陸運法により、拒否=飲酒状態とみなし、飲酒運転の嫌疑をかける可能性がある」と回答。ジェンポッブ容疑者は、飲酒運転致死、警察の捜査妨害及び無謀運転、器物損壊の容疑で、アユタヤ県裁判所に一旦拘留された。
高級車、死亡事故、警察のずさんな捜査。このキーワードで思い出されるのは、本コーナーで過去に取り上げたレッドブルの孫のひき逃げ事件だ。同件では1人の警察官が死亡。300万バーツの賠償金支払いで民事訴訟を決着させ、タイの富める者の権力が明るみとなった。
世間の声を受け、今回は事故の究明が進むかと思いきや、ジェンポッブ容疑者の弁護士が、ケガの治療を理由に保釈願いを提出。裁判所は容疑者に対し、「出国禁止」「運転禁止」「運転免許取消」「裁判所の呼出への出頭」の条件を付けた上で保釈請求を受諾した。条件付きとはいえ、2人が死亡した事件にも関わらず、保釈金はわずか20万バーツ。さらに、容疑者の車にあった薬からうつ病と不眠症を患っている可能性があるとし、現在、病院の庇護下に置かれている。
ひき逃げ事件から約4年。同様の事件が起きたことで、この国の金持ち特権が根深い問題であることが露わになった。前回、「相手が権力者だろうと見逃すわけにはいかない」と息巻いていた警察。果たして今回は、国民の納得のいく判決に、導くことができるのだろうか。

この記事をSNSでシェア!

一番上へ戻る