賛否渦巻く性犯罪の死刑論

タイ全土に蔓延している、婦女暴行をはじめとする性犯罪
殺人に至る例もあり、加害者への刑罰に対する議論が広がっている

 

ここ最近、タイ国内では、わいせつ行為や性犯罪の事件が毎日のように発生し、メディアを騒がせている。先日も、サラブリー県の女性教師が性的暴行を受けた上に殺害され、ノンタブリー県では、61歳の女性が31歳の男性から乱暴される事件が起きた。
タイ国家警察によると、2009〜13年の間に発生した性的暴行事件の発生数は年平均で約3万件。また、女性と子どもの人権保護活動を行うNGO団体「パウィナー財団」には、昨年656件もの被害が報告された。また、暴行後に殺害された被害者の中で最も低い年齢は1歳8ヵ月、最高齢は81歳。加害者の多くは継父や友人、近所の人間だそうだ。
タイの法律では、性的暴行を加えた上、相手を殺害した犯人に対する最高刑は死刑。だが、犯人が自ら殺害を認めた場合には終身刑に減刑される。度重なる事件を受け、国民からは自白による減刑の廃止を望む声があがる一方、暴行殺人=死刑となると(殺害する必要性がなくとも)被害者が口封じに殺される可能性が高まることなど理由に、反対する声もある。
そんな中、2つのドラマに注目が集まった。一つは3チャンネルで放送された「レーンターワン」、そしてデジタル放送GMM25チャンネルの「プアン・ラック・プアン・ラーイ」。どちらも、ストーリー中に性的暴行シーンが含まれているにも関わらず、高視聴率を記録。性犯罪への厳罰を求める一方で、このような内容のドラマが人気を得ていることに対し、タイの社会問題を投稿・議論するSNSページでは、「性犯罪者には死刑を求めているのに、このようなドラマを支持するとはおかしい」といったものや「こういった人たちの意識が変わらなければ。法改正だけでは犯罪率は下がらない」といったコメントが寄せられた。
これに対し、視聴者の多くは「ドラマはドラマとして、現実とちゃんと区別して見ている」と反論。しかし中には「男の主人公が相手の女性に乱暴する理由も理解できる。それに、結局はハッピーエンドで終わるから問題はない」と、性犯罪を正当化するような意見もあり、ファンの間でも議論が起きている。

この記事をSNSでシェア!

一番上へ戻る