タイ農業4.0

イノベーションでコスト削減も零細農家は脱落

言わずもがな、タイで活躍するビジネスパーソンにとって、タイの産業高度化政策「タイランド4.0」は必須ワードだが、今回のテーマは“農業4.0”。察しが良い方は、おわかりだと思うが、イノベーションでタイ農業の生産性と品質を高める政策だ。

農業協同組合省農業普及局のソムチャイ局長によれば、同政策はすでに2016年から開始され、新技術を活用して約17億バーツのコスト削減を実現。同時に農業売上も約43億バーツ上がったという。

対象となるのは大規模農園(300ライ/1ライ:1600㎡)。ドローンを使った空からの監視体制(人的コスト削減)や有機肥料(農薬減)のほか、タマサート大学が開発した“オーガニック”というアプリで、QRコードによる農産品の品質確認(農場名や住所といったトレーサビリティ)も可能になった。

ほかにも、農業生産工程管理(GAP)による農産品の安全のための仕組みづくり「タイGAP」の策定・取得という試みもある。これは、土地管理、土壌、苗木、水管理、施肥、害虫処理、消費者安全、環境保護の質を担保するものであり、タイGAPに認証されると、生産者は独自のQRコードを取得。スマートフォン利用者(消費者)が生産物に関する最新情報を獲得しやすくなるという、まさに農業のデジタル化だ。

とはいえ、ドローン1台の購入に数十万バーツがかかるなど、デジタル化を実践できるのは、体力(資金力)のある大農園のみ。タイでは人口の約4割が農業従事者だが、未だ多くが家族経営の零細農家で、1人当たりの平均年収は6万バーツ弱。世帯収入も同約15万バーツが現状だ。多くの農家にとって、設備投資は夢のまた夢だろう。

こうした構造的な問題を解決するには、政府による手厚い補助が必要だが、やり過ぎれば自立への自助努力を妨げ、ばら撒きにもつながる。タイにとって農業は経済を支える主産業(世界20位以内の輸出国)だからこそ、舵取りは難しい。

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