「タイ語文化功労賞」受賞
タイと一番“深密”な日本人


今年7月、「タイ語文化功労賞」をタイ政府から受賞した、在タイ日本国
大使館・広報文化部長を務める小林さん。2013年に三度目のタイ勤務となり、
足掛け14年。深まりが増す、タイとの関わりをひも解きます。

 

月曜から日曜まで、日々隙間なく埋められた手帳が示す忙しさ。御年58歳。文化、芸術、スポーツ、青少年交流など日本とタイに通じる幅広い業務を全うしながら、タイ国内で行われるさまざまな行事に出席していると言い、その数、年間200以上。驚きを隠せずにいると、「大使館は頑張る日本人を応援するのが仕事ですから」と目尻を下げる小林さん。

そんな小林さんが、初めてタイ人と出会ったのは50年前。父親の仕事の関係でホームステイにやってきた研究生が、タイ人でした。その後、高校時代の海外交流派遣先、外務省入省後の研修先として選ばれたのもタイだったのだそう。「研修時代、チュラロンコーン大学に2年在学しましたが、当時の級友は良家のお嬢さんたち。ベンツで送り迎えされる上流階級の人たちの暮らしを近くで見ることができた、特別な時間でしたね」。

今年、修好130周年を迎えたタイと日本。両国は、言わば二卵性双生児だと小林さん。インドと中国、西洋の文化をうまく吸収してきた歴史しかり。革新的な進化をもたらした明治天皇とラマ5世の関係性しかり。600年以上前から親交が続く国は、他には無いと言います。「タイ全土に、“日本”というブランドが浸透していますし、日本人と言うだけで信頼されるのは、これまで築き上げてきた友好関係に他なりません。ただ、もっとも密だったと言われる山田長政の時代、彼は毒殺されています。これは、どんなに親しき仲でも油断は禁物という戒めとして、肝に命じています」。ゆえにバランス感覚が大事だと言い、30年以上の“全方位外交”で小林さんはそれを実践してきました。

勝つことは簡単。全体を見て、
負けないことが重要なんです

「第二の人生の始まりだと思いました」。そう小林さんが口にするのは、50を過ぎてからの大学生活。タイ政府が厳選した将官級しか入れない「タイ王国国防大学」に2015年、日本人として初めて入学を果たします。そこは、軍・警察高官の他、政・官・財界幹部が集められ、授業は各界トップによる講義に加え、各地の軍事施設での現場体験、ボーイスカウト資格取得のためのキャンプなど、一般の人では決して体験できない日々の連続だったのだそう。「当時、大学の授業を受けながら大使館業務も並行するとてもハードな毎日でしたが、今後のタイを牽引するであろう280人の同期ができました。国防大学での経験は、私にとって大きな財産です」と、目を輝かせます。

日タイの友好関係を取り持つ役割を担うからこそ、タイ国内での人脈作りが欠かせません。これまでに何十、何百もの繋がりを駆使し、両国間に問題が起きないようバランスをとり、万が一、問題が起きたとしても、幅広い繋がりですぐに対応できるよう備えてきたと言います。小林さんの緻密な外交が、両国の関係を陰からそっと支えているのです。

「私の中で大切にしているのは“負けじ魂”。人に勝つことは簡単ですが、目立ちすぎてもダメ。全体を把握して、負けないことが重要であり、70点でやり続けるのがいいんです。だからこそ、情報収集は欠かせません。片方につくのではなく、勝つ方につく。偏らずに、柔軟に対応するのが私の仕事ですから」。

骨を埋めるならバンコクがいいと断言する小林さん。後生にその背中を見せながら、まだまだ現役は終わりません。

国防大学のボーイスカウトキャンプにて。どんな時でも楽しむことを忘れない小林さん


PROFILE
小林 茂紀 Shigeki Kobayashi
在タイ日本国大使館・広報文化部長。1959年、京都生まれ。83年外務省入省。ラオス、シドニー、タイでの勤務を重ね、2013年から参事官として、三度目の在タイ大使館勤務。17年、タイ語普及貢献者に贈られる「タイ語文化功労賞」を受賞。旅行好きであり、これまでに53カ国を訪問。リラックス方法は週1回のマッサージ。

 


在タイ日本国大使館

今年は日タイ修好130周年

関連情報は大使館HP「日タイ修好130周年公式ウェブサイト」をご参照ください。
Website: www.th.emb-japan.go.jp/jt130/index-jp.htm
[問い合わせ]
Tel: 02-207-8500
Tel: 02-696-3000
Address: 177 Witthayu Road, Lumphini


編集部より
「自分たちにはない、アイディアとバックグラウンドが若い世代にはある」と、うれしそうに話してくれた小林さん。積み上げてきた自身の経験に加え、新たな時代を受け入れる柔軟性に刺激をもらうと同時に、休みなくタイ国内を飛び回るエネルギーに脱帽しました(M)

取材・文 山形 美郷


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