僧侶兼ゴルフコーチが願う
タイに日本人の“最期の場”を


初めてタイを訪れたのは、修行僧の一員として。
実父は奈良で600年以上続くお寺の僧侶。プロゴルファーとしてタイに
移住した中村さんに起きた運命の出逢い、そして芽生えた壮大な志とは。

 

タイに移住したのは、2008年1月。当時35歳だった中村さんは、プロゴルファーとして活動しながらスクールコーチを兼任。けれどそのすぐ4カ月後に、プロゴルファーをキッパリ辞めようと決意する出来事が起こります。

それは、両親に連れられてやってきた小さな女の子との出逢いでした。

「彼女のスイングを見た瞬間、運命の出逢いだと感じました。その時、彼女に後光が差して見えたんです!」と語気を強め、中村さんは当時を振り返ります。

少女の名前は、立松里奈。いくつものゴルフ大会で優勝経験があり、今年の5月末には15歳のアマチュアとしてプロツアー初参戦。世界が注目する若手ゴルファーのひとりと言われる彼女は、当時6歳の小さな体にも関わらず抜群のセンスを持ち合わせ、衝撃を受けたと中村さんは言います。そして、その次の瞬間には自身の引退を決め、「この子は天才だ! 僕が絶対世界一に育てるので、僕にすべてを任せてください!」と、里奈ちゃんのご両親に話したのだそう。そして、里奈ちゃんが14歳を迎えた去年の7月。宣言通り、世界一の称号を手にしました。

けれど、中村さんが目指すのは里奈ちゃんが20歳の時に、日本の賞金女王になること。まだまだ、ふたりの道のりは続きます。また、その道とは別に、中村さんは新たなビジョンを描いていました。

ゴルフ場の常識を超えた
“セント”からヒントをもらって

「タイに長く住んでいて、タイで最期を迎えたいと思っても、そんな場所が用意されていなくて不安に思う方も少なくないですよね。タイを離れて日本に戻ったとしても、自分の子どもに迷惑をかけたくないと言う声も聞いてきました。みんなの求める場所が無いなら、僕が作ってしまおうと思ったんです」。

そう考え始めたのは2010年。志が同じ仲間と出逢い、アイデアが形になったのは昨年の夏。こうして、「一般社団法人 タイゴルフ&ウェルネス振興協会(TGWA)」が立ち上がりました。

活動の軸となるのは、もちろんゴルフ。ゴルフ場を中心とした福祉施設の実現を中村さんは願っていました。アイデアのもとは、スコットランドのゴルフ場「セント・アンドリュース」。

ここは、ゴルフをしている人たちと同じ敷地で一般の人が散歩をしたり、犬を連れて歩いたりと、ゴルフ場の常識を超えた“みんなの憩いの場”になっていたと中村さん。自身の施設の構想はすでに出来上がり、完成は5〜10年後を予定しているのだそう。

「ゴルフ場の敷地内にZEN Golfer’s Factoryのアカデミーとシニア向けの施設を併設予定です。トーナメントのオフの時期には世界中のプロが合宿に集まり、また、リタイアメントされた人たちが穏やかに過ごせる空間にしたいですね」。

そんな空間とともに、タイで最期を迎えた人たちが安らかに眠れる日本式のお寺を建てるのが、中村さんが見据えるゴールです。タイ式ではなく、日本人のための日本のお寺。そして、お墓。眠る人もお参りに来る人も、異国であることを忘れるような場所を思い描いています。

「タイに生きる日本人の不安を取り除きたい」。中村さんはゴルファーであるとともに、生粋の僧侶でした。

中村さんと里奈ちゃん。2016年の世界選手権で優勝したカップを持って

 


PROFILE
中村 映禅 Eizen Nakamura
「ZEN Golfer’s Factory」代表取締役 兼「一般社団法人 タイゴルフ&ウェルネス振興協会(TGWA)」代表理事。1972年生まれ。奈良県出身。実家は奈良で600年以上続くお寺を持つ。自身も僧侶として活動しながら現在はプロゴルフコーチに専念。独自のメソッドを持ち、注目を集める。好きな言葉は「念ずれば花開く」。

 


一般社団法人
タイゴルフ&ウェルネス
振興協会(TGWA)

2016年7月設立。生涯スポーツであるゴルフと、
健康・癒やし・幸福をテーマに、
タイの高いゴルフと医療・ウェルネス関連を融合。
またツーリズムの振興も図る。
[問い合わせ]
Tell:085-238-7736
E-Mail:info@tgwa.jp


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