タイに根づく農業の仕組みを 「bijin tomato」の挑戦

タイのトマトはおいしくない。そんな先入観に一石を投じるのが、
2015年からタイの人たちと共に「bijin tomato」を生産・販売する迫田昌さん。
農業との出会いから試行錯誤の日々、そして理想とするトマトについて。

タイ東北部コンケーン空港から車で約2時間。迫田さんが代表を務める「JAPAN AGRI CHALLENGE(THAILAND)」の第1農場があるのは、山道を進んだ標高850mのペッチャブーン県ナムナオ。10ライ(1ライ=1600㎡)の敷地に25のビニールハウスを構え、15人のスタッフと共に作業に励んでいます。

6年前までは農業と全く無縁の生活をしていた迫田さんが、なぜタイでトマトを?

「大学卒業後、縁あって東南アジアで働くことになったんですが、その時に訪れたラオスで初めて農業を体験して。それがとにかく楽しかったんです。青空の下で体を動かし、生きるための食物を育てる。作業が終わった後の爽快感、充実感が堪らなくて。一生の仕事にするなら、農業しかないと思いました」。

そう決意した時、大学の先輩であり現在のパートナー・野口さんは、長野県で自身の農園をスタート。それを偶然フェイスブックで見た迫田さんは、すぐに連絡をとり、野口さんの元を訪ねたのだそう。「僕が考えていた海外での農業展開を伝えたら、彼も同じ考えで。彼の農園で準備を進めながら、まだタイの市場に浸透していない“フルーツトマト”で勝負しようと2015年2月、タイへ向かいました」。

タイの人たちと共に
MADE by JAPAN を実現

農園の始まりは、トマト40株、竹を使った手作りのビニールハウス4棟。意気込んでスタートしましたが、豪雨によりビニールハウスが全壊。さらに、栽培を再開した後には病気によってトマトが全滅するなど、1年目は苦難の連続。そんな模索していた時期に、茨城県のイチゴ生産者・遠藤健二さんと出会いました。

「それまで誰かに師事したことはなかったんですが、遠藤さんは紛れもなく僕の師匠です。日本から毎月のようにトマトの様子を見に来てくれ、一緒に試行錯誤してくれたおかげで今があります」と、その存在の大きさを口にします。

年中暑く、雨季には激しいスコールに見舞われるなど、日本とは異なるタイの気候条件に適応させることはもちろんですが、迫田さんと遠藤さんが何よりも重視していたのが、日本のやり方を押し付けないこと。タイの人たちが長く続けられる農法を、ゼロから築いていきます。

「まず第一に、スタッフが幸せじゃないと、出来上がったトマトも人を幸せにできない。おいしいトマトを作るのはもちろんですが、会社としてまずスタッフを幸せにしたい。管理するのではなく、スタッフが楽しめる環境を整えることが、おいしいトマトに繋がると思っています。僕たちのやり方は、日本とタイを融合させた完全オリジナル。“サバイ農法”です(笑)」。

その後は、野口さんが合流。生産は迫田さん、販売は野口さんと分担し、最高のトマトを求めて改良の日々。チェンライに第2農場を開設し、色やサイズなど既存のトマトとは異なる品種や、新たな野菜の栽培にも力を注いでいます。

「タイの人はトマト嫌いと言われているんですが、それはおいしいトマトを食べたことがないからだと思うんです。そのイメージを僕たちのトマトで変えていきたいですし、おいしいトマトをタイの人たちに手の届く価格で一年中、安定して提供することを目指しています。皆さんからの『おいしい』という言葉が、原動力です」。
タイのトマトと言えば、「bijin tomato」。誰もがそう思い浮かべる日が来るのも、きっとそう遠くないはず。


日々愛情を注がれて育ったトマト。甘さの後に、爽やかな酸味とみずみずしさが感じられる


PROFILE
迫田 昌
Sho Sakota
1987年、東京都生まれ。「JAPAN AGRI CHALLENGE(THAILAND)」マネージングダイレクター。慶応大学卒業後、再生可能エネルギーの開発・営業を専門に東南アジアで勤務。2012年、農業に開眼し、15年2月にタイに移住。同年5月、農園をスタート。リフレッシュ方法はフットサル、入浴。影響を受けた本は『男子の本懐』(城山三郎著)。


bijin tomato
飲食店・消費者のみなさんへ
月〜金は訪問販売を実施
タイで生産した日本のトマトを販売。バンコク都内各スーパーやコンビニ、飲食店で取り扱い中。平日16:00前後はスクンビット界隈のコンドミニアムで訪問販売も行っています(特価販売)。トマトジュースもおすすめ!
[問い合わせ]
Telephone:088-573-3287(迫田)
Email:jacco.thailand@gmail.com
Facebook:Bio bijin
Line:@bijin_farms


編集部より
スタッフの人生に寄り添う会社でありたい」と話してくれた迫田さん。現地を訪れて感じたのは、そこで働くスタッフ同士の仲の良さ。ご飯を一緒に作り、みんなで食べる。家族のような関係性から、おいしいトマトが生まれるんだと感じました


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