悲劇の爆発事件、再び

ホアヒン、プーケットなどで死傷者多数。未だ逮捕者ゼロの現政権が抱える新たな課題

 

国民投票が行われた4日後、シリキット王妃の誕生日を祝う母の日の前日11日、それは起きた。ホアヒンやプーケットなど全8県での連続爆発事件。翌12日にも爆発は続き、タイ人4人が死亡、外国人観光客を含め34人が重軽傷を負った。
当初、イスラム国などの犯罪組織によるテロ、現政権に不満を抱く国内組織、そして長年タイを悩ませる深南部のテロ組織の犯行が疑われたが、タイ国家警察庁は12日に会見を開き「国内の組織による犯行の可能性が高い。南部のテロとは関係はない」と断定。13日には、反政府色の強い地域とされるチェンマイ出身のタイ人男性1人を拘束した(現在は釈放されている)。地元紙のコムチャットルック紙も「南部テロ組織ではない。彼らの犯行ならもっと被害が大きくなっていた」と論じると、遠回しに犯人扱いされた反政府勢力の筆頭、反独裁民主戦線(赤シャツ隊)のリーダーであるチャトゥポン氏は「この事件に赤シャツ隊は関係ない」と容疑を否定した。
しかし、爆破物に使われた起爆装置の携帯電話から、マレーシアの通信会社のシリアルナンバーが使われていたことが判明し、南部テロの可能性が急浮上。テロ対策に詳しい専門家は「彼らは組織力をつけ、南部だけではなく、対象エリア外でも破壊工作を行っている」とコメント。綿密な計画の下、これだけ確実に破壊活動を実行できるのは、南部のイスラム系武装勢力しかいないといった見方も出ている。
19日現在、政府が拘束している容疑者はゼロ。プーケットの爆発現場から採取したDNAの検査により、逮捕状が出ている容疑者が1人いるが、身柄を確保するまでには至っていない。これでは捜査が後手後手だと言われても仕方がないだろう。
血なまぐさい事件が起きると、即座に影響が出るのが観光産業。すでに20万人減、2億9300万ドルの減収といったネガティブな数字が試算され、暗い影を落としている。GDPの1割を占めるこの国の観光産業へのダメージは想像以上に大きい。
エラワン廟での爆発事件に続き、再びメンツを潰された格好となった現政権。国民投票も無事に終えた矢先の大事件だった。一難去ってまた一難。まだまだタイには課題が山積している。

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