過去最大級の干ばつがタイを襲う〜被害の大きさは15年ぶり

7月6日、アユタヤ県の運河沿いで地盤沈下が発生。深さ2m、距離100mと甚大な被害となった(7日=マティション)

7月6日、アユタヤ県の運河沿いで地盤沈下が発生。深さ2m、距離100mと甚大な被害となった(7日=マティション)

 

バンコク近郊にも広がる被害。
工業用水に与える影響は?

毎年、雨期と同時期に襲ってくるのが、干ばつ。この一見パラドックスな現象は、局所的な降雨地域とそうではない地域の二極化により起こり、被害の大きさは15年ぶりとも、20年ぶりとも報じられている。影響はバンコク近郊にまで及び、隣接するパトゥムターニー県では、渇水で水圧が下がり、数百メートルに渡って道路が寸断。アユタヤ県でも農家の水の汲み上げによる地盤沈下が起きた。

被害が甚大なのは、77県中12県で、北部、東北部、中部に集中。北部ラムプーン県のゲンゴー湖は、釣りなどで人気を博す観光地として有名だが、湖が干上がってしまい、魚は死滅。中部ナコーンサワン県では、川の水位が8メートル下がり、水の汲み上げができず、ある農家は100ライの水田の半分を失った。国家の一大事を受け、プミポン国王が各県での人工降雨を指示されたものの、大きな成果を上げるまでには至らず。4大水源のうち、プミポンダムとシリキットダムの貯水量は日々減少し、このままでは8月末には干上がるらしい(7月10日時点)。

工業用水への影響も気になるところ。タイ国工業団地公社のシーワニック・ハッサディン副総裁は「深刻な状況だ」とし、対策として地下水利用に触れつつも、性急な汲み上げは地盤沈下を引き起こす可能性があり、「あくまで最終的な方法」に留めている。現在、最も被害を受けている工業団地として、東部ラヨーン県のマープタプット工業団地を挙げたが、「まだ水は足りている。甚大な被害にはならない」と強調した。ちなみにバンコクへの影響は、チャオプラヤー川の水量が低下することで海水が増え、水道水の塩分濃度が上がるとされている。

ソムマーイ・パーシー財務相は7月13日、干ばつに苦しむ米農家への支援策として、タイ農業・農業協同組合銀行(BAAC)から600億バーツを拠出することを発表。稲作以外の作付用の短期、もしくは長期借入金に充てる。

今回の被害は、エルニーニョが原因とされており、タイに限らず、北朝鮮、韓国にも広がっている。「もはや地震が起こらない国はない」といわれる現代において、自然災害はどんな国でも想定する必要がある。お天道様に任せてばかりでは、危うい。

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