「ヤードンの悲劇」

毒ガエル入りの密造酒による死亡事件が発生。
規制を強める政府と、存続派による論議の行く末は

日本では「酒は百薬の長」とも言うが、それは正しく作られたものを適量嗜む場合に限ってのことであろう。

チョンブリー県で10月22日、有毒なガマガエル入りの酒を飲んだ13人が吐き気や痙攣などの重篤症状を起こし、30代の男性と60代の女性が死亡した。

被害者たちが飲んだのは「ヤードン」と呼ばれるタイの薬草酒。

密造酒だが1杯10Bほで販売され、少量で酔えることから古くから親しまれている。

通常は紅花やカバノキといった植物や動物を35〜40度の蒸留酒「ラオカオ」に1カ月ほど漬け込むが、そもそも違法であるだけに製造者によって製法はまちまち。

今回、カエルを混入したと見られる男は今もなお逃走中のため、事件の詳細はわかっていない。

しかし、死亡した2人の体内から高濃度のメタノールやシアン化水素といった有害物質が検出されたため、政府はヤードンの製造・販売に対する取り締まりを改めて強化する方針を発表。

また国税局も「ヤードンは飲料用としての安全性が認められず、滋養強壮などの健康効果も立証できない」と、これを援護した。

一方で、巷では「政府による伝統文化の否定」だとする声が続出。

北部プレー県の伝統酒支援団体のエームオーン代表は「調査結果を待たず規制強化を図るのはあまりに乱暴」として、政府を非難している。

また販売者たちも「ヤードンは昔からその土地に根付き、地域コミュニティの形成に役立つもの」と主張を続け、今後の動向が注目される。

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