家計債務が過去最高に

好調に伸びる個人消費の陰にはローン問題も

万国共通、年の瀬の風物詩とでも言うべきだろうか。

近年増加の一途をたどる家計債務が今改めて問題視されている。

タイ商工会議所大学の発表によると、一般家庭における債務は昨年の同時期よりも7.4%ほど増加し、過去最高となる一世帯平均34万Bを記録。

同大学の経済ビジネス予測センターでは無作為に選んだ全国の国民の経済状況について独自に調査したが、対象者の8割が住宅や自動車の購入費用などなんらかの債務を抱え、月平均にして1万6,000Bの返済しているという。

またその内4割超は違法な金融業者から金銭を借り入れし、不当な利息を支払っているとみられる。

こうした違法業者の利用は、平均月収が1万B以下の家庭がほとんどだという点も興味深い。

こうした要因の背景として同センターのタナワット所長は、長期化する米中貿易戦争の影響や農作物価格の下落、観光産業の低迷といった国内経済の減速を挙げ、収入や貯蓄が不十分であるにも関わらずローンに依存する国民生活に警鐘を鳴らしている。

また、家計に占める医療費の高さについても指摘した。

国家統計局の調べでは、タイ人中間所得者層の平均月給は2万6,900Bほど。

これに対し、生活費は全国平均で2万1,300B、バンコク近郊では3万3,400Bにまで上り、収支の均衡が崩れた状態となっている。

家計の改善には節約が第一歩と思われるが、近年の物価高騰によりそれにも限界があるだろう。

識者の間では、低所得者層の人々がいわゆる“ヤミ金”に頼らず済むよう、公的なソフトローン制度の導入や医療費削減のための見直しが叫ばれている。
また、今年発表された「マーサー・メルボルン・グローバル年金指数(MMGPI)」においてタイは、労働者に対する福利厚生や老後の個人資産レベルの低さ、さらには低所得者層への支援不足が顕著だとして37カ国中最下位の不名誉を獲得してしまった。

経済的なゆとりが人々の幸福度に直結するか否かはさておき、来年こそ、政府主導による経済の立て直しに期待したいところだ。

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