現採日本人の就職とは?タイ人材業界サミット後編

タイで活躍する人材紹介会社3社が参加し、タイにおける採用動向について議論した2時間。後編は、「現地日本人採用」について。 タイで日本人を採用するメリット、デメリットは? 平均給与とは? 日本人に対して、日系企業はどう考えているのか−。

現採日本人の就職とは?タイ人材業界サミット後編

 

日本人のメリットは安心感デメリットはコストの高さ

—前回はタイ人雇用でしたが、今回は現地採用の日本人についてです。まず聞きたいのは増加傾向やトレンドです

JACリクルートメント 大津(以下J):増加傾向にあるかどうかについては、増加はしていないですね。この2〜3年はほぼ横ばいで推移している現状です。2012年頃よりローカライズに向けて動く企業が増え、現地採用の日本人募集も増えるかにみえましたが、これまでのところ、日本本社とタイ側の意向が合わないなどの理由で、採用件数は伸びませんでした。ただ、最近では日本採用という枠にとらわれず、海外に活躍の場を見出す優秀な人材が増えており、そこに目を向けた企業がタイの現地法人の立ち上げ責任者や各統括部門の責任者として、現地で募集するという動きも活発化してきています。

OSリクルートメント 吉田(以下O):当社は紹介事業が中心ではないので件数は少ないのですが、あるとすればニッチな部分ですね。特殊な化学分野、内部監査、タイで弁護士資格を持っている人材など本当にピンポイントなんです。ただ、マッチングの成功率は低い状況です。

リーラコーエン 吉田(以下R):あまり増えているとは思いません。日本人採用は選考レベルが上がっていると思いますし、採用する側も慎重になられている感じを受けます。タイもシンガポールの日本人採用の状況に近づきつつあり、採用基準は高くなりつつあると思いますね。一方で、その他の東南アジアでは日本人採用がさらに活発化している印象があります。

J:以前に比べて目立ってきているという意味では、タイ人同様にIT、ウェブ系の職種では日本人も増えてきていますね。


—企業側から見る現地日本人採用のメリットとデメリットはなんでしょうか

J:こちらに来られる日本人の方はタイ、もしくは海外で勝負をしたいと決められている方が多いです。海外でやっていくために必要なバイタリティがあり、目標意識も高い方や元々タイのことをよく知っていたり、タイ語を話せる方もいらっしゃいます。そういった方々は採用後、即戦力として活躍していただけるので、企業としてはおおいにメリットがあると思います。デメリットは前述のような人材を採用された場合には正直ないと思います。ただ、タイ語でいう「サバーイ」、いわゆるラクな働き方を望む人も少なからずいらっしゃるので、そういった方を採用された場合には期待値に届かない、または日本本社や日本人クライアントとのやりとりに支障が出るケースも見受けられます。そうした点を考えると、採用時点でのスクリーニングが非常に重要になってくると思います。

O:最近の傾向として、経験値、スキルが同じであり、タイ語を話せる日本人と、日本語を話せるタイ人を比べた場合、タイ人を選ぶという企業が増えています。もちろん仕事内容にもよると思いますが……。そういう状況なので、現地採用の日本人の採用基準が必然的に高くなってきていると思います。日本人の現地採用をした場合、想定した実績や成果が出せればいいのでしょうが、そうでない場合、コスト面がデメリットになります。そのため、ピンポイントの需要はあっても、大きな需要はないのかなというのが正直なところです。

R:クライアントへの安心感とビジネスレベルでしょうか。クライアントは日本人の方が多いので、よほど日本語が流暢なタイ人なら別ですが、カタコトの日本語でビジネスを進めるのは簡単ではありません。日本のビジネス習慣も影響すると思います。そして、日本のビジネスマンは総じて優秀な方が多いんです。幅広い業務をこなせて、責任感も強い。そういう意味で日本人のメリットはあるかと思いますし、日本人の方がパフォーマンスが高い傾向にあるのは事実です。逆にパフォーマンスが発揮できなかった時のデメリットはあるかと思います。
現地採用と駐在は、変わらないと思っているのですが、現地採用でも駐在でもキャリアビジョンを提示してあげないと働いている方は苦しいのかなと。現地採用の人たちはその土地でやっていくっていう気持ちでいます。そのため、キャリアプランを見せてあげないと、やる気もそがれてしまう。タイ人スタッフも同様ですが、現地採用の日本人スタッフにもきちんと教えてあげることが大切です。結構そういった悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか。

 

勤務地を選べるが結果も求められる

—雇われる側のメリット、デメリットはどうでしょうか

J:先にデメリットを述べると、日本採用との待遇面の差は大きなところですね。メリットは2点あります。1点目は、現地採用は自分で働く場所を選び、自分の決断で動けるということです。待遇のいい日本採用で海外に来ようと転職したものの、「いずれは海外に行ける」という話で入社したにも関わらず、1〜2年は研修という名目で外に出してもらえない。そして、海外のポジション自体がなくなってしまったということで、現地採用で探そうと弊社にご相談に来られる方も多いです。
2点目は、若手の方に当てはまりますが、日本で働くのに比べて、仕事の幅も広がり、責任のあるポジションを任される可能性が高いことです。日本で働いていると「マネジメントなど幅広く裁量権を持ちたいが、上がつかえているような状況で任せてもらえない」、「海外に出向したいが、あと10年は働かないとチャンスがない」といったジレンマを抱える方も多く、そういった方は海外に出ることで活躍の場が広がります。

O:メリットは勤務地を選べるところです。タイが好きな方はそれが一番のメリットだと思います。デメリットはキャリアの先が見えづらいところだと思います。現地採用はあくまでタイ限定での勤務になるケースが多いので、どうしても駐在員とは違った形で評価される傾向にあります。 

R:若い方に関して言うと、入った当初から責任のあるポストを任されることが多いです。業務の範囲も広いので、そういった意味ではスキルも積み重ねていけるというのはメリットだと思います。デメリットは日本には教育、研修制度が整っていますが、タイに来るとどうしても即戦力扱いなので、厳しく評価されます。経験が豊富な方も同様に、日本では与えられないような責任範囲を持って仕事が任されることがメリットであり、デメリットは経験を買われて採用されているので、日本で働くよりも成果が問われることでしょうか。


—スキルでいうと英語は必須なのか、タイ語は喋れないとダメなのか、という問題も出てくると思います

J:これも企業によりますね。全体的には英語は日常会話が最低限で、TOEICだと600点くらいでしょうか。タイ語については社内のタイ人と意思疎通ができる程度を求められるケースが多いです。タイ語が必須の案件はそこまで多くはないですが、全体の40%位になると思います。英語必須の案件は80%程度。ただ、タイ語必須の案件は増加傾向にあると思います。製造業になると、工場のスタッフがタイ語しかできないケースが多く、バンコク市内のオフィス業務でもタイ人との円滑なコミュニケーションを理由に、タイ語の日常会話を必須とする案件が目立ってきています。

O:同じような印象です。日本人に求めることが企業で少し違うと思うのですが、日本人向けの専属営業というケースが多いと思います。あとは日本人とタイ人の間に立ってやらなきゃいけない調整役のような仕事というのが結構あるので、タイ語もある程度要求されるのではないかと思いますね。

R:英語力は必須です。英語力不問の求人はアジア全体でも減少傾向にあると思います。タイ語に関しては営業職だとローカル企業へ営業に行くケースもあり、自ずと窓口対応がタイ人の場合もあります。社内に日本人が少数の場合に指示系統が直接タイ人であることもあり、「日常会話程度はタイ語を喋れた方が良い」と依頼されるクライアントも増えています。


—英語を話せる日本人は結構いると思うのですが、タイ語を話せる日本人の給料は高くはないのでしょうか

一同:高くないですね。

J:言語能力だけでは付加価値にはならないと思います。

O:結局、言葉よりも仕事ができるかどうかでしょうね。

 

案件は営業職が多く平均給与はピンキリ

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—平均給与について。これもピンからキリだと思いますが、どうでしょうか

J:製造業でいえば、エンジニアですと平均すると8〜9万バーツ(以下B)程度です。10年以上、金型を専門にやっていたというような熟練の技術者の方ですと、10万B以上になってきます。営業職は未経験は5〜6万B、経験者は7〜8万B。あとはコミッションがついていれば、また違います。
飲食業は正直弊社ではあまり取り扱いがないのですが、進出される企業は増えてきているため、日本人で飲食経験があり、店舗管理できる方がいないか、というご相談はいただきます。その場合、店長クラスになると6〜7万Bくらいでしょうか。件数が少ないので厳密には言えませんが……。

O:割と「ニッチで高いスキルを持った日本人が欲しい」と言われるケースが多く、給料が高いケースもあります。10万Bを超えるのもありますが、その代わり仕事内容はピンポイントです。そういった場合は、もはやコネクションで探す場合が多いですね。


—求められる職種については、どういうものが多いのでしょうか

J:多いのは、業界問わず営業職です。全体の5割ほど。日系企業を専任として営業を行います。最近では、外資のメーカーも進出してきているので、日系マーケット向けに日本人が採用されるケースが多いですね。業種でいうと製造、非製造が半々くらいです。細かくいうと、製造業、物流、商社、建設業、ITです。その他の職種は、工場の技術者、ITエンジニア、バックオフィス系がそれぞれ1〜2割ずつとなります。
最近の傾向としては、アジア統括拠点の責任者というポジションもあります。タイを拠点にアジア展開を考える企業ですと、タイや海外で経験があることを重視し、こちらを拠点に活動してくれる方を探されています。理由のひとつとしては、日本社内では海外で活躍できる人材の確保が難しいというところにあるようです。

O:営業系はそういったケースが多く、タイローカル企業で日本人に特別なセールスプロジェクトを任せたいとの意向で、そういった方を実際に紹介したケースもあります。あとは技術系の場合、工場の品質管理、生産管理、金型設計、電子基板の設計開発などですね。

R:最近増えてきたのは、タイ以外の東南アジアの企業から「タイに支社を立ち上げたいので現地で責任者を採用したい」というケースです。日本からではなく、東南アジアのタイ近隣諸国からのご依頼も増加傾向にあります。


—特別なスキルを持った日本人を雇うケースが増えているんですね。現場を経験していて、かつASEANを理解している人材の一本釣り。ただ、実際そういう人材は多くはないですよね

O:あまりないですね(一同笑)。

J:タイ国内で見つけようと思うと非常に難しいため、弊社では世界10ヵ国25拠点のネットワークを利用し探しております。

O:求職活動中の方がこういう案件に該当するケースは少ないです。おそらく企業からすると「当初は駐在で来たが、タイでの仕事を望み、タイで転職したい」という人材を期待されているのかなと思います。

 

現採日本人が離職する理由とは一体?

—営業が多いということですが、新規営業か既存営業はどちらが多いですか?

J:企業によりますが、製造業は既存の企業を回るというのが多いですね。サービス業、非製造業になりますと新規営業の割合が高まります。

O:同じです。製造業さんは既存の方が多いと思います。ただ、最近進出された企業から営業担当者のオファーをもらう場合は、当然新規営業が中心になりますし、状況により異なります。全体数からみると比率は半々くらいです。

R:6割強は既存営業かと思います。新規営業に関しては確かに非製造業に多いですよね。バンコクに進出してきた時期に関連していると思いますが、製造業の場合は既に販路が形成されていることもあり、既存が多くなりますが、最近は新規の販路を拡大されている製造業も増えてきています。


—企業からヘッドハンティングを要望されることはないのでしょうか

J:日本人に限らず、タイ人でもありますね。具体的にこういった企業にいる日本人がほしいという話も実際にあります。

O:企業名が名指しの場合もあります。「この会社で働いていた人いませんか?」といったケースです。


—現採日本人の場合の離職、つまりミスマッチというのはどういったときに起きるのでしょうか

J:日本人の場合、早期退職についてはタイ人ほどケースは多くないですね。数ヵ月で辞めるという方はほとんどいませんが、あるとすれば、やはりタイ人と同じく仕事内容のミスマッチです。日本人同士のため、面接でお互いわかったつもりで話していたが、実際は詳細が伝わっていなかったケースなどです。日本の場合は、人事担当者も個別にいますし、書面できちんと説明されています。しかし、タイでの採用の場合、日本人出向者の方は人事の経験がない方も多く、「業務内容は営業です」とシンプルに案内し、選考される側もわかったつもりになり、採用となってしまうことも多いわけです。
実際は営業といっても多種多様なスタイルがあるため、最初に思っていた内容と違うということになってしまう可能性が高いです。日本人を採用する場合でも面接時に会社概要やビジョン、仕事内容をいかに詳しく説明するかが重要になってきます。そのため、弊社では日本人を初めて採用される企業向けに面接や採用時のコツや注意点を含め、アドバイスさせていただいております。また、面接にもご同席させていただき、プロの立場から改善点などをご提案させていただくこともあります。

O:日系企業ではないのですが、ローカルの大手企業で、日本人を採用したいというところもあります。ミスマッチと言えるかわからないのですが、企業側の期待値が大きすぎるケースがあります。日系企業と違い、ローカル企業はノルマ達成が大変なようです。なんとか達成しても、そのノルマがどんどん上がっていきます。その結果、退職に繋がっているという話もあります。日系企業で働くのとローカル企業では感覚がずいぶん違いますし、雇用の形式や役割が違う感じはします。

R:経験を買われての即戦力採用が多いため、採用した側もシビアに結果を求められていますので、面接時にできることとできないことははっきりさせておいた方が良いかと思います。これまで働いてきた企業によって文化や職務範囲も違うので、仕事の進め方も含めてできる限り事前に確認しておくことでミスマッチは少なくなるはずです。

 

【タイ人材業界サミットを終えて】

2時間に渡って話し合ったサミット。初の試みは、興味深い話が次々と飛び出し、個人的には非常に勉強になった。タイ人だろうが、現採日本人だろうが、何よりも大切なのが、コミュニケーションの問題。面接時の事前の説明にはじまり、さりげない気遣い、日常的な会話……。一見簡単に見えるものほど、実は難しい。そんな真理を改めて考えさせられた。

 

【参加企業】


OS Recruitment

TEL:02-679-5076~7
E-mail:info-os_thai@outsourcing.co.jp
URL:www.outsourcing-thai.com
5th Fl., Bangkok City Tower, 179 South Sathorn Rd.

【タイ人紹介案件の割合】製造業80%/非製造業20
【日本人紹介案件の割合】全体の1%未満
【会社としての強み】製造オペレーターに特化。バンコク周辺に10の採用拠点。製造現場の状況を日本人による日本語での現状報告や労務問題点などをフィードバックすることが可能
【プロフィール】2011年よりタイで事業をスタートし、現在はバンコク周辺に3子会社10拠点を展開しています。日系企業として製造オペレーターの人材派遣事業を展開する唯一の企業です。製造メーカー様のモノづくりのこれからをささえる企業として派遣事業以外、紹介、請負、労務管理委託事業など総合的な人材サービスを提案し、お客様の発展と現地従業員の生活水準の向上を目指しております。


Reeracoen Recruitment

TEL:02-653-2700
E-mail:info@reeracoen.co.th
URL:reeracoen.co.th
Unit 1108, 11th Fl, One Pacific Place, 140 Sukhumvit Rd.

【タイ人紹介案件の割合】製造業50%/非製造業50%
【日本人紹介案件の割合】製造業50%/非製造業50%
【会社としての強み】ジュニア~ミドル層のホワイトカラーポジション(営業、経理、輸出入事務、エンジニア等)に多くの実績
【プロフィール】Reeracoenは株式会社neocareerの海外ブランドとして、海外4拠点にて人材紹介の実績を持ちます。タイ人のご紹介は勿論、日本人のご紹介に関してもタイ在住及び日本在住者のご紹介が可能です。通常の人材紹介事業の許可申請とは別に、国外に渡る人材紹介の届出を提出しておりますので、安心してご利用いただけるかと思います。日本人採用専門担当もおりますので、お気軽にお問い合わせください。


JAC Recruitment

TEL:02-261-1275
E-mail:jp@jac-recruitment.co.th
URL:www.jac-recruitment.co.th
10th Fl, Emporium Tower, 622 Sukhumvit Soi 24

【タイ人紹介案件の割合】製造業50%/非製造業50%
【日本人紹介案件の割合】製造業50%/非製造業50%
【会社としての強み】スケールメリット(バンコク・アユタヤ・イースタンシーボードに拠点あり)。徹底した情報提供とスクリーニング。日本人による日本語対応(日本人13名常駐)
【プロフィール】アジア9ヵ国で最も強いネットワークを持つ日系人材紹介会社として、ここタイでは2004年よりスタート。現在まで最大規模且つ高水準の人材紹介サービスを提供しております。業界別(製造業、IT、サービスなど)に特化したコンサルタントを配置し、企業様、求職者様それぞれに適したご提案をさせていただいておりますので、まずはお問い合わせください。

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