2023年最新版
駐在員なら絶対に知っておきたいISOの基礎知識

ISOとは、スイスのジュネーブに本拠地がある国際標準化機構のこと。国際標準化機構の英語表記は「International Organization for Standardization」。

では、国際標準化機構とはその名の通り、世界の標準(規格)を決める団体のこと。例えば案内標識や看板、長さや質量、時間を表す単位、そして身近なところではコンセントやプラグなどの規格が挙げられるだろう。これらを国際的に標準化することで、世界中の人が便利な生活を享受できることになる。

また、食品など商品の品質やサービスをISOで統一化することで、安全・安心なものを消費者や顧客に継続的に提供することが可能だ。

このISOで「定められた規格で商品やサービスを提供している」かを証明するのが、ISO認証。ISOこれは、提供する商品の品質やサービスが水準以上であると認められたときに得られる認証証明書のことで、この認証証明書が発行されて手元に届いたときは一般的に公開することが可能。

タイで活動する日系企業によってもビジネスの鍵となるISO。
ここでは「国際間の取引をスムーズにするための共通基準を決める」などの目的を持って定められたISOの重要性や、取得するためのプロセスなどを紹介。駐在員なら知らなければならないISOの基礎知識を整理した。

ISOの基礎知識

主なISO及びマネジメントシステムの種類と目的

「国際間の取引をスムーズにするために共通の基準を決める」。そのような目的を持って定められたISOには、番号によって多くの種類があり、そのうちの「マネジメントシステム」規格は、いわゆる「組織の仕組み」を指す。このISOマネジメントシステムは「うまくいく仕組み」を構築する上で不可欠だ。

日本企業がタイでISOを取得するべき理由とは

文書一つを例にとってみても、タイ人と日本人の間には理解度に差があり、例えば技術関連文書にしても、タイ特有の書き方に適応した翻訳でないと理解されないことが多い。そこで、お互いの「理解のための根拠」として重要な役目を担うのがISOだとされている。日本でのやり方をそのままタイに持ち込み、なんとなくやり過ごしていくのではなく、しっかりとタイに根付き理想の事業を展開していく。ISO認証取得は、そのような場面において日本企業と日本人経営者のアドバンテージになり得るツールだと言えるだろう。

ISO取得をタイ人に任せきりにするのはNG

「ここはタイだからタイ人主体で」「事情をよくわかっているタイ人に自由にやらせたい」。ISOを取得する場合に、日本人は口出ししない方がいいとする経営者も多い。

しかし、タイ人に任せきりで体裁だけを整えていくというのは費用の無駄。組織が前進するための方向性などはもちろん経営者が主体となって決めていくことが大切だ。日本人が積極的にコミットし、現状を把握していくことでISOの価値が発揮され、事業を正しい方向へ導けると言える。内部監査などを通じて、経営方針に基づいて活動できているか、目標は管理されているか、コスト削減は出来ているかなどを随時把握する。経営者自らがこのような組織の方針に参加するための重要なツールの一つがISOなのだ。

ISO認証は3年間を1サイクルとして持続していく

ISOは認証取得したらそのままでいいかというとそうではない。3年間の有効期限があり、ISOのマネジメントシステムを継続的に活用するにはきちんと運用できているかを審査する必要がある。

ISO認証は、まず取得から1年後と2年後に「維持審査」があり、この時点で持続的に動いているかをチェック。さらに3年目には「更新審査」が行われる。つまり、ISO認証は3年更新になっていて、3年間を1サイクルとしながら繰り返して維持していくことになる。この1サイクルの間に実施される「定期審査」や「更新審査」もとより、自社内で行う内部監査も重要な項目だ。監査を通じて修正すべき点が見つかれば是正し、予防が必要となれば予防処置が必要になってくる。

以上のことから、ISO認証は取得時にだけコストがかかると思われがちだが、定期的な更新に伴ってコストが発生することも知っておかなければならない。

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ISOの合言葉は「持続可能」と「サスティナビリティ」

鍵となるのは引き続き
Sustainable(持続可能)
Circular economy(循環型経済)

現在、経済界で引き続き旬となっているISOの合言葉は「Sustainable(持続可能)」 と「Circular economy(循環型経済)」 。これを受けるようにして、近年一般的に言われているのが3R(Reduce,
Reuse, Recycle)。この中のReuse(再利用)率は世界的にみても、8.6%という少ない数値に留まっていることが多方面で懸念されている。

そこでISO総会では、2021年9月に「ロンドン宣言」
を採択。今世界が直面している気候変動を、ISOの規格を活用することで「アジェンダ2050」の目標達成を支援する。環境に関して2024年までに既存の規格をテコ入れすることと、新しい規格の導入を計画しているところだ。

このような世界的傾向の影響で、今後は益々持続可能・循環型経済へのアプローチや対応が目に見える形となり、顧客の要求とともにサプライチェーンの中で厳しく要求される。各企業は顧客からの要求が来てから取り組むのでは、取り残される心配があるだろう。

国連主導のSDGs(持続可能な開発目標)についても評価・認証への動きが出てきていることから、年次レポート(環境報告書等)のような形でまとめて発表できるようにしておく必要が出てきた。

これからの企業活動にとって大切なのは、顧客の要求によって仕方なくISOの認証を取得するのではない。ISOの認証を使って自社のアピールをし、業績を上げて行く選択をすること。そのためのキーワードが、経営者が参画・主導するISO活動だ。

ISOが
Net-Zero Guidelineを発表

そのようなネットゼロ(カーボンニュートラル)が広まる時流へ乗るようにして、ISOはエジプトで開催されたCOP27に先駆けてNet-Zero
Guidelineを発表。2050年までに、ネットゼロを達成するための指南として以下のような目標を掲げ、マネジメントシステムを通してこれらを達成できるように奨励している。

  1. 排出の削減 (再生可能エネルギーへの乗り換え)
  2. カーボンオフセット (他社からGHG排出クレジットを買う)
  3. 透明性と説明責任 (排出量の第三者の検証)
  4. ステークホルダーの参加 (サプライチェーンを巻き込んでの活動)

したがって現在急務となっているのは、ISO14001環境マネジメントシステムを使い、環境側面・環境負荷を理解しながらそれらの低減活動を開始すること。そしてISO50001
エナジーマネジメントシステムを導入して省エネ対策を行い、環境に貢献することだ。

さらにISO14064 で温室効果ガス(GHG)排出量のモニタリングを行い、様々な省エネ活動を通してどの程度CO2の削減に貢献しているかを数値化して世界に発信することが必要となっている。

ISO認証を利用して自社アピール
まずはISO14001を受けることが鍵!

企業の運営にとって基本であるISOの3本柱は、製品品質・サービスに対応するための「ISO9001」、環境への貢献を示すための「ISO14001」、社会的責任への取り組みに必須となる「ISO45001」だ。

これらの3本柱に加えて、持続可能・循環型経済に対応するISO50001(エネルギーマネジメント)の要求が、欧州からアジアの取引先に今年から要求が増している。これは決して製造業に限った事ではなく、サービス業や商社業務においても取引先から要求される可能性があるだろう。

特にISO14001の認証を受けることはもはや必須。もしくはその一環として自社事業での環境活動を開始しないと、世の中からの目が厳しくなってくる時代がすでに到来していると言えるだろう。

【ISO50001】とは

ISO50001「エネルギーマネジメントシステム(Enerergy manegement
system:EnMS)」は、企業等で使用するエネルギーを管理し、継続的改善を図ることを目的とした国際規格。ISO14001が環境管理面を対象範囲としていて、必ずしもエネルギーパフォーマンスの改善に焦点を当てているわけではないのに対し、ISO50001はエネルギー管理面が対象範囲。企業のエネルギーパフォーマンスの改善に関して、より具体的な要求事項が盛り込まれているため、確実な改善が見込める。このため、ISO14001と併用することで更に省エネ効果を生み出す。

また、ISO50001はISO14001と親和性の高い規格であることから、ISO14001を取得している組織は、より効率的に認証取得が可能だ。

贈収賄防止を目的としたISO認証も必須!

現在、もう一つ注目しておかなければならないのがISO37001(贈収賄防止)。東南アジア諸国では、すでにISO37001を取得していないと公共事業への入札が出来ない状況になった。

国連主導のSDGsについても評価・認証への動きが出てきているので、年次レポート(環境報告書等)のような形でまとめて発表できるようにしておく必要がある。

顧客要求だから仕方なくISO認証を取得するのではなく、ISO認証を使って自社をアピールして業績を上げて行く選択をする時期に来た。そのためのキーワードは、経営者が参画・主導するISO活動だ。

【ISO37001】とは

国際標準化機構が2016年10月に出版した国際規格で、贈賄防止の仕組みを組織に構築・運用するもの。他のISO規格と共通の構造を持ち、他の規格との整合性が保たれている。組織の規模や贈賄のリスクにより、リーズナブルで最適な仕組みを構築できるのも特徴。

ISO認証マネジメントシステムの代表例

【ISO9001】品質マネジメントシステム

組織が方針・目標を定めてそれを達成するための認証で、あらゆる組織に適用可能な一番基本のシステム。サービス業や行政分野での認証取得が進んできていて、BOI認定企業なら2年以内に取得必須。

【ISO14001】環境マネジメントシステム

「持続可能な発展」をテーマに、組織の環境パフォーマンスの向上に役立つ規格。特にサプライチェーンの中で要求されることが多く、ライフサイクルを考えた環境負荷の低減と順守義務をベースにしている。

【ISO45001】労働安全衛生マネジメントシステム

作業の危険源の特定から災害リスクの低減を目的として、ISO9001の品質及びISO14001の環境に続く組織における社会的責任をカバーする労働安全衛生規格。

【IATF16949】自動車産業向け品質マネジメントシステム

世界の自動車メーカーが共同で開発。フランス、米国、ドイツ、イタリアの自動車メーカー、部品貿易協会のフォーラムなどが品質システム要求整合化のために活動しているIATF(International Automotive Task
Force)によって作成された自動車産業用品質マネジメントシステム。自動車部品を生産する組織はそのサプライチェーンを通して取得が迫られる規格だ。

【ISO10002】苦情対応マネジメントシステム

顧客苦情をシステムで対応するマネジメントシステム。最近はソーシャルメディアの発達で悪い情報等が瞬時に伝わってしまうので、このシステムを利用して備える。

【R2】(Responsible Recycling:リサイクル認証)

電気・電子機器のリサイクル事業における環境、労働安全及びセキュリティに関する規格が認証可能になり「責任あるリサイクリング、R2」として発行された。

【AS9100】航空宇宙産業向け規格

航空宇宙産業向けの規格。ボーイング社やゼネラルエレクトリック社の航空機エンジン等航空機の部品を生産する組織には認証取得は必須。

【ISO13485】医療機器の品質マネジメントシステム

医療機器産業に特化した品質マネジメントシステムに関する国際規格。日本を含む世界各国の医療機器に関する規制において、品質管理手法のベースとして採用されている。対象となる組織は、医療機器・体外診断用医薬品のライフサイクル(設計・開発、製造、保管、配送、据付け、附帯サービスなど)に関与している組織など。対象となる製品としては、各国で指定されている医療機器および体外診断用医薬品(埋込み医療機器を含む)や、これらの製品に組み込まれる部品・材料・素材など。

【GMP HACCP】適正製造規範

食品を製造・加工・包装する組織がまず適用しなければならない基本規格。GMP(Good Manufacturing Practice:適正製造規範)、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control
Point:危害要因分析重要管理点)の管理を中心にシステムを構築する。肌につける、口につける化粧品ではISO22716として化粧品GMPが発行される。

【FSSC22000】食品安全システム

大手食品メーカーや小売との取引条件となるケースが増えている食品安全規格であるISO 22000を、追加要求事項で補強した食品安全マネジメントシステムに関する国際規格。GFSI(Global Food Safety
Initiative)によってベンチマーク規格の一つとして承認されている。包括的なサプライヤー管理を目指す食品メーカーにはこのスキームが要求される。

タイでも確実に広がる認証取得の流れ
ISOを知っておくべき必要性

近年、組織は事業を通じて利益を追求するだけではなく、顧客の要求を満たす品質を安定供給できる体制を整えているか、環境配慮は行き届いているか、情報セキュリティは万全かなど、多岐にわたる会社の在り方を問われるようになってきた。

こうした課題を解決する有効手段として世界的に注目されているのが、品質マネジメントシステム(ISO9001)や環境マネジメントシステム(ISO14001)をはじめとしたマネジメントシステムの国際規格なのである。

そんな流れはタイでも広がっていて、今やISO認証がないと新規取引に参入できない場合もあるので注意が必要だ。また、事業継続マネジメントシステムや社会的責任に関する規格(ISO26000)への関心も高まり、マネジメントシステム審査登録制度
(第三者認証制度) はますます重要性を増していると言える。

ISO取得のプロセス

1. ISO取得の目的を定める

例えば製造業なら「モノづくりの手順」「顧客対応に関するルール」などに関して、「自社ではこうする!」といった目標を定める。また、ISO認証取得には、種類によって6ヶ月〜12ヶ月を要する。

2. ISO審査登録機関に依頼

ISOの規格をベースに構築した仕組みを審査するのがISO審査登録機関。審査会社や登録会社などとも呼ばれるが、正確な名称は「ISO審査登録機関」となる。そのような専門の審査登録機関と契約し、目的を達成するための仕組みを構築。組織・経営、人材、設備、製造、営業、支援業務などをまとめてISO審査登録機関が確認する。

3. 認証登録審査

ISO審査登録機関が認証登録審査を行う。規格に沿ってシステムが構築されているかを「ステージ1審査」 「ステージ2審査」
を通じて審査。不適合であれば是正していく。是正した内容が認められるとISO審査登録機関から認証登録推薦され、認定機関による判定を待つ。

4. 登録の推薦・判定

各審査登録機関の判定委員会(ISO及び認定機関に認められた)が登録の可否を決定し、認定機関が行う年2回の審査登録機関に対する立ち合い審査で容認する。

【認定機関とは】
認定機関とは、ISO(国際標準化機構)及びIEC(国際電機標準会議)で決められた基準およびガイダンスに基づき、そのISO審査登録機関が審査登録を行える能力があるのか審査する機関。合格した機関には認定書を授与し審査の許可を与える。1カ国に1機関存在し、その国におけるISO認証制度の頂点に位置する。

5. 登録証の発行

認証の授与が決定後、登録証を発行。

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