タイの”富める者”が持つ圧倒的な権力とは?

アジア通貨危機、そしてリーマン・ショック後の経済回復がめざましいタイ経済。
しかし貧富の差は拡大し、平等な社会の実現を叫ぶ声も強くなる一方だ。

「タイのエリート免責文化」と題して、警官をひき逃げしたレッドブルの創業家の孫を取り上げたが、後日、この孫が300万バーツの賠償金を払って民事訴訟を決着させ、タイの「富める者」が持つ圧倒的な権力があらためて明るみとなった。

今回は、タイにおける富裕層への法的な優遇措置と経済格差について追った。

まず、タイには相続税制度がない。これによって資産家は何世代にもわたって一定の資産を引き継ぐことができる。第二に、潤沢な資金を運用し、節税する抜け道が多数ある。

例えば不動産を購入することで最大10万バーツ、生命保険への加入で20万バーツ、退職積立金運用サービスの利用で50万バーツの所得控除が可能。また、年収400万バーツ以上の所得がある場合、37%の所得税が課せられるが、富裕層は法人を設立し、法人にのみ適用される控除を受け、かなりの税金を浮かせている。

対して、このような傘を持たない低所得者層がなけなしの稼ぎを切り崩されているのがタイの格差社会の現状だ。タイの総人口6550万人のうち、年収2万バーツを下回る貧困層は510万人にのぼる。教育ローンや奨学金、障害者手当てなどの政策も実施されているが、本当に貧困にあえいでいる層までは行き届いていない。

それに加え、政府の予算案もずさんだ。例えば、800万人の高齢者のために600億バーツの手当が支給されているが、実際に金銭的補助が必要なターゲットはわずか100万人であり、500億バーツ以上の無駄となっている(因みに、貧困を解消するために必要な額は年14億バーツと言われている)。

「アジア太平洋地域ウェルス・レポート」によれば、タイに住む100万ドル以上の投資資金を持つ富裕層の数は前年度よりも増え、6万5千人に達した。

富める者はますます富み、冒頭で述べたレッドブルの一件のように社会的権力を強める。平等な社会を実現するための画期的な政策の必要性が叫ばれている。

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