フェイクまである歯列矯正事情

タイの若者の間で歯列矯正がステイタスになっている。
ファッション感覚で楽しむ女性たち。その実態とは?

歯並びを治すために装着する矯正器具。治療を受けたことのある人なら、その煩わしさはわかるだろう。お金も時間もかかり、何より見た目が良くない歯列矯正は、日本人にとって決して素敵なものではない。その証拠に、歯の裏側に金具を付けたり、透明なマウスピースを使ったりと、目立たないように矯正できるほうが人気だそうだ。

ところがタイでは、お金のかかる歯列矯正は、富と地位の象徴。さらに人気ポップシンガーなどが装着していたことから、10年以上も前から若者の間でステイタスになっている。
矯正器具はカラーコンタクトやつけまつ毛のようにファッションアイテムとして市民権を得ており、1000バーツ前後で手軽に買える、カラーバリエーションも豊富なフェイクが数多く売られている。

しかしこのフェイク、体にとても悪いことがわかっている。長期装着することで虫歯や口内炎を引き起こすほか、露店などで売られている悪質なものには有害物質が含まれているため、装着しているだけで心臓病や感染症になる危険性があるという。

実際に、ある14歳の少女は装着してから2ヵ月後に破傷風で死亡した。そのほか甲状腺中毒症を発症し、装着後わずか10日ほどで死亡した女子高生の例もある。

この事故を受け、政府は2010年9月、フェイク矯正器の輸入、製造、販売の禁止に踏み切った。販売した場合は6ヵ月以下の懲役と5万バーツの罰金が科される。
これを機にフェイク矯正の恐ろしさは定着し始め、「恐いから装着しない」という声も増えている。

一方、歯を美しくしたいという本来の目的で矯正している女性も非常に多い。彼女たちのなかには、「歯医者に行くたびにワイヤーを固定するゴムの色を変えるのが楽しみ」と、矯正とファッションを同時に楽しんでいる人もいる。

ちなみにこの歯列矯正、日本では100万円ほどかかるが、タイでは5万バーツ前後でできるという。フェイクが難しくなった今、本当に矯正できる人だけの特権となりつつあるようだ。

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