愛憎渦巻く殺人事件の判決

3年前、有名人が殺害されたセンセーショナルな事件 テレビドラマさながらの展開に訪れた大どんでん返し

3年前に起きた殺人事件が、あらためて注目されている。

被害者が元五輪選手というだけではなく、複雑な人間模様がクローズアップされ、謎が謎を呼んだ一件の判決が下されることとなった。

13年10月19日、射撃競技の元五輪選手であるチャクリット・パニットパーティカム氏は、車を運転中、バイクに乗った2人組に射殺された。

当時さまざまな憶測が飛び交ったが、後にチャクリット氏の妻の母親が殺し屋を雇い、実行させたことが発覚。

娘がチャクリット氏から暴行を受けて流産したことに怒り、チャクリット氏に報復するため、120万バーツで殺害を依頼したという。

ここまでは夫の暴力に耐えた不憫な妻、娘の行く末を憂慮する母が起こした事件として、悲しいストーリーで終わるはずだった。

しかし、事態は徐々に変わっていく。

事件が起きた同年7月、チャクリット氏は、麻薬の使用、家庭内暴力、拳銃・刃物の不法所持などで逮捕されると、妻は6000万バーツもの大金を勝手に引き下ろしていたことが判明。

後に妻は保釈された同氏を信用できず、今後の生活のためにやったことだと釈明している。

それだけではない。

チャクリット氏の関係者によると、同氏は過ちを妻に謝罪し一度は許されたものの、事件直前まで「いつ殺されるかわからない」と周囲に漏らしていたという。

また、身の危険を察知していた同氏は、自家用車に録音機を付けていたが、警察が調べると何者かが一部の音声を削除していた。

不穏な事実が次々と明るみになると、疑惑の目は徐々に妻に向けられていく。

そして昨年12月19日、裁判所は一連の犯行を母親ではなく、妻によるものだと断定。

決定的な証拠はいまだに明らかになっていないが、事件の首謀者として妻には死刑が言い渡され、実行犯の殺し屋2人には無期懲役、妻の母親は免訴となった。

判決を受けて、容疑を否認した妻はすかさず控訴。

まだまだ長引きそうな気配もある。

最高裁の日程がまだ未定だが、いずれにせよ、どのような判決が下されるのか? 新たな事実は浮かび上がってくるのか? タイ全土が注目しているのは間違いない。

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