道端でお金を配る稀なる分限者

ラマ9世交差点付近に現れ、現金を配布する一人の男。 かつてのトップミリオネアの、その動機はいったい…

コロナ禍のある日、「チャンネル3」のレポーターが建設労働者キャンプを取材で訪れた際、近くのラマ9世交差点付近に高級車で乗りつけた一人の男が、周囲の人たちに現金を配っている光景を偶然目にした。

レポーターが車の方へ向かい写真を撮ると、その男は急ぐように走り去ったという。

男の名は、ホールンルアン・サワット氏(79)米国フォーブス誌の「世界のトップミリオネア500」にランクインしたこともある、タイ人の富豪だ。

同氏は、毎朝5〜6時の間に自宅を出発し自分のオフィスへ向かう。

その道程には多くのスラムがあり、高速道路の下で寝ているホームレスや物売りをする幼い子どもなどがいた。

そんな光景を見ていていたたまれなくなり、貧しい人たちに現金を配るようになったのだ。

「自分の親は中国からの移住者でとても貧しかった。

私も幼い頃から親の仕事を手伝い苦労したので、貧しい人たちの気持ちをわかっている。

私が配る100〜200Bのお金は大金ではないが、彼らにとっては命を繋ぐのに必要なとても大きなお金かもしれない。

彼らから感謝の言葉と笑顔が返ってくれば、私はそれだけでいい」。

あるインタビューでサワット氏はそう語った。

同氏はかつて鉄鋼業と不動産業で成功を収めたが、1997年のアジア通貨危機で約2,000億Bの負債を抱えて破産。

当時、「お金がない・逃げない・払わない」というセリフで世間を賑わせたこともあった。

その後、同氏は 3年で破産から復活した。

現金を配ることはけっして売名行為ではなく、貧しさも豊かさも体験してきた、自分にとっての幸せのためだという。

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