チャオプラヤー川“魔の三角地帯”

茶色い濁流に飲まれていく夫妻の乗った曳舟

現在進行系で、各地に甚大な被害をもたらす集中豪雨。 母なる大河も、ひとたび氾濫すれば“暴れ川”と化して…

熱帯低気圧の影響で、9月上旬より全国的に頻発する自然災害。

遺跡観光でお馴染みの中部・アユタヤ県もまた、顕著な被災地のひとつである。

河川の氾濫により県内10地区で約3万戸が浸水し、アユタヤ王朝時代の名残を残す川沿いの仏教寺院をはじめ、歴史公園やゾウたちのエレファントキャンプまでも洪水の被害に見舞われている。

大小無数の川を擁し、水害の多発地域として知られる同地だが、9月29日午前11時過ぎ、なんとも痛ましい船の転覆事故が発生した。

現場はチャオプラヤー川とパーサック川の合流点に近く、アユタヤ王朝時代から「クン・サンパオ・ロム(=船が沈没する場所)」と恐れられる危険地帯。

水位が上がるとたちまち三角波が立ち万物を飲み込んでしまうことから、出航前の安全祈願を欠かさない船主も少なくないという。

他方、川底に眠る沈没船から価値ある遺物を盗み去る“川底ハンター”が狙う、お宝スポットとしても有名だ。

転覆したのは、貨物を積んだ艀(はしけ)をけん引する曳舟。

安全を祈願していたかは定かでないが、ベテランの船頭(64)とその妻が乗る船が方向転換を図ったところバランスを崩し、傾き始めてから僅か10秒で朱色の船底が完全に上を向いてしまった。

桟橋から一部始終を撮影していた動画には「危ない! もう、沈んじゃうよ」という悲鳴と共に転覆の瞬間が収められ、周囲の騒然とした様子も見て取れる。

事故から3日後、船頭の遺体は90kmも下った場所で発見され、夫妻の娘が父の誕生日に贈った腕時計から身元が確認された。

妻は現在も行方不明のまま。

普段は穏やかな表情を見せるチャオプラヤー川だが暫くは警戒が必要。

不用意に近づかないでほしい。

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