首都高速道路㈱

ストックの有効活用を伝え信頼を得ることが重要

バンコク駐在員事務所所長 田沢 誠也

《プロフィール》 たざわ・せいや
■1963年秋田県出身。87年豊橋技術科学大学大学院修士課程修了。同年首都高速道路公団入社、2010年国際企画課長、13年ITS推進課長、14年国際担当部長兼バンコク所長
■座右の銘:己ばかり考える奴は、己をも滅ぼす、
人を守ってこそ己が守られる
■趣味:ゴルフ、スキー、アーチェリー、映画鑑賞、漫画、温泉、車、
バイク、パズドラ、ポケモン
■よく見るまたは、活用しているウェブサイト
(自社以外):ヤフーニュース
■愛読書:キングダム
■尊敬する人物:九戸政実
■バンコクの行きつけの店:なぎ屋
■休日の過ごし方:洗濯、睡眠、無言でいること
■愛用の腕時計:スカーゲン
■愛用の鞄:GTホーキング
■社用車:フォード・エクスプローラー
 

―タイでの役割は?
駐在員事務所としては、情報収集が主な業務です。ただ、弊社は、プロジェクトオフィスライセンスを取得しているので、何かを販売することはできませんが、コンサルティング業務は直接契約できるんです。例えば、高速道路の設備について、日本では当たり前のETC(自動料金収受システム)やITS(高度道路交通システム)を活用したソフト面でのコンサルティング提案ですね。実際に進出4年が経ち、8本受注しています。首都高速道路は、すでに日本で約310km網となっていますが、ご存知の通り、東京の渋滞はいまだになくなりません。とはいえ、軽減するためのソフト施策を導入するなど、知恵と道具を用いて減らす努力は続けています。だからこそ、日本での経験をタイで生かせる面は、数多くあると感じています。



―タイの渋滞は世界的に有名です
高速道路網は、それなりに整備が進みネットワークは構築されていますが、連結部分が不十分な点もかいま見えます。ジャンクションを増やしたり、車を逃がす工夫がされておらず、まだまだ解消する手段はあるはずです。基本的に都心に向かって車が集中するから混むわけです。つまり、都心へ向かう道路のキャパシティオーバーが渋滞の原因となっています。単純に、2車線の道路に対し、4方向から車がくれば自ずと8車線必要となる足し算です。ですが、8車線の道路を建設することは現実的に難しく、分散する工夫が必要となるわけです。



―上手くさばくための知恵を提案するわけですね
その通りです。しかも、寸分たがわず日本(東京)と一緒と言う必要はなく、メンテナンスの際にはタイ(現地)で部品調達できるような工夫をする提案をします。他国の人間がすべて口出すようでは、タイのためにはなりません。業績で考えれば、すぐに利益の上がるビジネスではありませんが、お客様第一の理念をもって、地道に支援し続け、信頼を勝ち得ることが将来につながるんです。



―長期的な運営事業を任されることが狙いでしょうか
首都高は、日本では建設していますが、タイでは建設そのものよりも、オペレーションとマネージメントがメイン事業ですから。まずは支援(コンサルティング)。保守・管理・運営はもっと先でしょう。現在は、人材・技術交流を地道に深めて行くことが重要です。タイの高速道路は、ドンムアン有料道路会社(DMT)、タイ高速道路公社(EXAT)、バンコク高速道路会社(BECL)といった複数の組織が管轄しています。前述の連結部分の整備が不十分なのも、そのせいでしょう。ただ、外国人の我々が、そうした部分にまで口を出すことはしません。重要なのは、「いまある道具で最適化を目指す」。つまりは、ストックの有効活用です。現存の高速道路の運営を見直し、劣化を防ぎつつも、サービス品質を下げない。そうすることで、お客様が離れず、収入増につながるわけです。



―タイ赴任は、2014年からと伺いました
2014年9月に、2代目の所長として赴任しました。ただ、以前は、日本で国際課長でしたので、タイには出張ベースで何度も訪れています。飛行機で6時間のタイは、秋田県(出身)が、東京から車で8時間を考えれば、距離を感じることはありません。なにより、タイは地政学上、ASEAN各国へ行くにも適していて、仕事の面では、タイで良かったと思うことが多いですね。

2011年に駐在員事務所を開設して4年が経過しました。現在はタイのみならず、マレーシアの高速道路会社とMOUを締結しようと準備を進めています。すでにインドネシア、ベトナム、フィリピン、カンボジア、ミャンマー、ラオスでも支援協力をしていますし、今後、ASEANでの道路運営に関わる事業が増えていくでしょう。日本がこれまで培ってきた高速道路計画、建設、運営、維持管理などのノウハウや技術は、必要とされるレベルに達していると思います。立ち上げから4年が経ち、基盤は整いました。また、今年は公団から民営化されてちょうど10年の節目の年です。タイとアセアン発展につながる支援=仕事に勤しみます。



―タイでの生活はいかがですか
ゴルフは、運動のためにするくらいですね。学生時代から社会人までバスケットをしてきました。先日、事務所の皆でコートを借りて楽しんだのですが、50代ではカラダが動きませんね。今は、2人の息子の試合観戦が楽しみです。帰国するたびに観に行って、口出ししていますよ(笑)。


 

編集後記
首都高速道路。2005年10月に、道路公団民営化(高速道路株式会社法)により設立された。あれから10年。東京を離れ3年が経った編集子の取材に対し、田沢氏から「今年3月に、大井JCT〜大橋JCT間が開通し、中央環状線の全線が繋がったんですよ」と聞かされた。記者として、都庁、国土交通省を担当していた頃、全線開通はかなり将来だと感じていた。同氏の「道路整備は時間がかかるが、自分が死んだ後でも残る。だから仕事をする価値がある」に感嘆。(北川 宏)

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