ソフトバンクテレコム(タイランド)

グループ力の強みを生かしたビジネスを展開

ダイレクター 魚返 宏司

《プロフィール》 1961年生まれ。兵庫県神戸市出身。米国アリゾナ州立大学卒業。セブンハーツ株式会社、ユニデン株式会社を経て、日本テレコム入社(現ソフトバンクテレコム)。2012年10月にソフトバンクテレコム(タイランド)ダイレクター就任。15年4月1日、ソフトバンクテレコム(シンガポール)ヘッド・オブ・アジア兼務。現在に至る。
 

ソフトバンクグループだからこそ
可能なビジネスを実践

厳密に言えば、1997年に国際デジタル通信(当時)がタイに駐在員事務所を設置したことにさかのぼります。同社は、2005年にソフトバンクに買収され、その前年にソフトバンクグループとなっていた日本テレコム(当時)と合併したことで、日本テレコムのタイ駐在員事務所となりました。その後、06年に日本テレコムが社名をソフトバンクテレコムへ変更、同社のタイ支店となりました。現地法人化したのは、2013年です。



—タイでの事業領域を教えてください
事業の中心は、SI(システムインテグレーション)となり、顧客は、ほぼ100%日系企業です。主な事業は、進出企業の事務所や工場における、デバイス、サーバーを含む、社内ネットワーク全般の構築です。また、日系企業の日本本社とタイ法人または支店を結ぶ国際回線のタイ側のサポートも致します。そのほか、日本ではすでに展開していた、タブレット端末とクラウド系商材をあわせて提案するサービスを2年前から、タイでも開始しています。



—具体的にどのようなサービスでしょうか
なかなか説明するのは難しいですが、12年に、ある大手自動車メーカーがタイで開かれたモーターショーで導入・実践しました。同メーカーは、顧客に対して、言葉では伝わりにくい、他車との違いをタブレットで説明しながら販売することで大きな反響を得たそうです。 それまでは、販売員が膨大な機能や商品情報をペーパーで読み、覚えていましたが、変更点がある度に、いちいち変更し、再度、伝達、刷り直すというコストが発生していました。同サービスを導入したことで、クラウド上にあるデータを本社が一元管理。変更点があれば、すぐに修正し、販売員はクラウド上の情報にアクセスして、すぐにタブレットで読むことができます。

そのほか、ある航空会社では、機材ごとに異なる分厚いマニュアルを常に持ち歩いていたパイロットやキャビンアテンダント用に導入。ペーパーレス化に成功し、その波及効果は、それまでのコストを半減させたそうです。

つまり、業務を効率化することは、事業コストを下げるだけではなく、売上にも直結することになるわけです。現在までに、タイでは11社に導入してきました。



—業績も好調と聞きました
2014年度の業績は、対前年度比130%で、初の営業黒字を達成できました。現地法人化後、これまでも売上や変動利益は右肩上がりで伸びてきましたが、それ以上に先行投資が大きく、ようやく実を結びました。



—13年から14年にかけては、政情不安が続きました
13年前半は、12年から続く洪水(2011発生)からの復興特需で大幅に依頼が増えました。日系企業の中には、比較的、洪水被害を受けなかったラヨーン方面の工業団地へ移転する動きもあり、対応するために、弊社も13年8月、アマタ支店を開設しました。その後は、ご存知の通り、政情不安による投資抑制時期が続きましたが、終息後の14年後半から徐々に回復。 現在は、サービス・販売系企業の設備投資により、順調に依頼が増えています。



—2015年度の見通しは
終息後から少し遅れるかたちで、製造業の設備投資が本格化すると予想しています。今年度も2年連続の営業黒字が目標です。 今後は、第3の事業として、ヤフーや米市場に上場した中国のEC(電子商取引会社)大手“アリババ”といったネット系企業の集合体である強みを生かしたビジネスを展開したいですね。



—シンガポール転勤が決まったそうですね
4月1日付けです。ただ、弊社はシンガポールが東南アジア地域の統括拠点なので、引き続きタイも担当することになります。



—海外赴任が長いと聞きました
最初に入社したメーカー時代に、3年ほどドイツに赴任。その後、日本テレコム(現ソフトバンクモバイル)に入ってから、今回で3回目となるシンガポールとタイを合わせると、トータルで約12年が海外です。



—タイでの生活を振り返り、いかがだったでしょうか
もちろん仕事上のプレッシャーはありますが、タイ人の大らかさ、優しさにも救われ乗り切れました。いつか何らかの形で恩返ししたいと思っています。



—あたなにとって、ソフトバンクグループとは
2004年にソフトバンクグループとなり、正直、最初は企業文化の違いに戸惑いもありました。とはいえ、それは紛れもなく歴史に残る、稀代の起業家・孫正義氏を垣間見るチャンスとなりました。


 

編集後記

母体は日本テレコム。その後、孫正義氏により、ソフトバンクテレコムと変わった。最大の強みは、グループ会社のサービス・技術・人材・資本を活用した総合力。米市場に上場した中国EC大手アリババも、その一社だ。「グループ力こそが他社との差別化です」とはっきり言う魚返氏。孫氏の基盤を活用した第3の事業がどういったものなのか。4月1日、ソフトバンクテレコムを含めたソフトバンク通信4社が合併し、ソフトバンクモバイルとして、新スタートを切った同社から目が離せない。(北川 宏)

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