郵船ロジスティクス(タイランド)

5ヵ年計画の肝はICT導入とM&A

社長 間庭 浩

《プロフィール》 1960年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学卒。1985年日本郵船入社、神戸支店配属後、東京勤務。コンテナ営業、バルク船担当、98年NYK Line(Germany)、2007年NYK Line(India)で現地法人社長を歴任後、13年から現職。
 

「今年開始した5ヵ年計画の肝は、ICT導入とM&A」

―タイの物流市況はいかがですか
 ご存知のとおり、2012年の自動車販売優遇税制(一台目助成金)の煽りを受け、昨年上期後半から販売台数が減退し、さらには反政府デモ・バンコク封鎖で消費も落ち込み、物の流れも悪くなり市況としてはかなり緩んできています。そんななか、新サービスの立ち上げとして開始した「全国定時配送」が功を奏して幾分か、リカバリーできました。



全国配送とは陸上輸送ということですね

 弊社グループは、海運企業というイメージがありますが、海上に限らず航空貨物、通関、陸送、保管など総合物流事業を展開しています。

陸送に限ると海空の輸出入のフォワーディング事業、サプライチェーンの根幹となるミルクラン事業などを行っており、サブコンを含めて1日1000以上のトラックを運行しています。

特に全国定時配送はハブ&スポーク型で小口荷物も含めた混載便を毎日バンコクから仕立て、お客様にも良い評価を頂いています。



政情不安などで、経済成長が鈍化しつつあるとも言われています

 鈍化していることは事実です。ただし、BOIの直接投資案件を見る限り、政情不安後の景気回復はかなり期待が持てます。今年度の事業計画は昨年実績とほぼ横ばいですが、来年度に期待して投資・事業拡大の準備中です。



日系と非日系の売上比率を教えてください

 日系企業7割、タイローカル企業など非日系が3割で、主な顧客層は、自動車、家電、化学品業界です。貨物構成のポートフォリオのバランスが悪いと不景気時には収支に直撃してくるので、日系顧客の基盤拡大を土台としてタイローカル顧客の新規獲得が当面の課題です。

また、タイは世界の台所のごとく生鮮貨物の輸出も多く、この分野にも切り込んでいきたいと思っています。



物流会社の方は、海外勤務が長いと聞きます

 タイで3ヵ国目です。これまでドイツ4年、インド3年を経て2013年4月から、タイに赴任しています。

ドイツ時代は、「ベルリンの壁崩壊(1988年)」から10年が経ち、東と西の融合による経済発展が著しく成長しはじめた頃で、モノと人の往来が盛んで、物流業界も活気に溢れていました。その後、インドには2007〜10年まで赴任。日本の高度経済成長時代のような勢いを肌で感じる国でした。

とにかく人口が多く、物流市場の将来性の高さは世界で類をみないでしょう。



タイはいかがですか

 タイは馴染みやすい場所というのが第一印象です。社内には、良い意味で“ゆったり”“のんびり”な時間が流れているのを感じました。

そこで、最初に掲げたのが「Change Your Mind」でした。一年間、スタッフ全員に直接声をかけるよう心掛け、皆の意識変化に力を注ぎ、今年から開始となる5ヵ年計画を立てました。



5ヵ年計画の初年度が始まったわけですが

 現在、弊社には3500人のスタッフがいます。そのうち半分がオフィス・ワーカーです。会社規模としては若干余剰感はあります。

だからと言って、リストラをするわけではありません。例えば、現在保有する倉庫規模が27万平方メートルであれば、5年以内に40平方メートルに、トラックの保有台数700台を1000台に増やすなど、ロジスティクス会社として本来あるべき形態で事業規模を拡大させ、余剰人員を吸収していく予定です。


そのため、事業拡大を図る手法のひとつとして、ICTの積極的な導入による効率的なオペレーションの実現を目指しています。なかでもトラック運行部門や海空の輸出入通関・CS部門を一元化することにより、コスト削減・効率化が図れるとみています。戦略の一つに近頃流行のM&Aも盛り込んでいます。



一定の裁量権が与えられているからこその戦略ですね

 裁量権がある程度与えられているが故に、“スピード感”を大事にしていきたいですね。

このところタイの政治もトップダウン型ではありますが、懸案事項をスピード解決しており、今年後半の景気回復に世論は期待感を寄せているように感じられます。個人的にも政治が安定する事で、再び追い風が強まり、ビッグウェーブがやってくることに期待したいです。その時に、しっかり“スピード感”を持って波に乗って目標数値を達成することが、私の至上命題だと思っています。



休日はどう過ごしていますか

 タイのビジネスシーンでは外せない“ゴルフ”があるので、どちらか一日だけでも夫婦で過ごすようにしています。

ほかには、料理が趣味なので、スタッフを自宅に招いて振る舞うこともありますよ。料理学校に通っていたこともあり、単身で赴任したインド時代は、三食自炊で、ランチボックスも作っていました。


 

編集後記
四方を海に囲まれ、貿易立国として経済発展を遂げた日本にとって、海運業は欠くべからざるもの。同社は、業界御三家のひとつ日本郵船(NYK)グループの中核を担う企業。陸海空貨物をバランスよく取り扱い自前組織で40ヵ国に事業所を展開する国際総合物流会社だ。タイの物流市場でも他を圧倒する存在感で、業界トップクラスの実績を誇っている。そんな右肩上がりの中でも、「チェンジ・ユア・マインド」を掲げ、5ヵ年計画を策定するほどの気を吐くトップ像には賛嘆。(北川 宏)

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