【Special Interview】物欲なき世界

なぜ人々はモノを買わなくなったのか?日本は長年に渡り、デフレから抜け出すことができず、消費も潤わない悪循環に突入。「モノが売れない」という根底にあるのは、単に所得の問題だけではなく、「物欲」との決別でもあった。日本のみならず、全世界で消費が落ち込んでいる理由とは何か? 話題書「物欲なき世界」の著者である菅付氏に話を聞いた。

 

日本で話題書の著者 菅付雅信

 

《プロフィール》
菅付雅信(すがつけ まさのぶ)編集者/グーテンベルクオーケストラ代表取締役。1964年生。『コンポジット』『インビテーション』『エココロ』の編集長を務め、出版からウェブ、広告、展覧会までを編集する。著書に『はじめての編集』『中身化する社会』等。下北沢B&Bにて「編集スパルタ塾」を開講中。多摩美術大学非常勤講師として、「 コミュニケーションデザイン論」を担当。

 


 

モノを持っても幸せになれない

 

―「物欲なき世界」を書こうと思ったきっかけを教えてください
ソーシャルメディアによる可視化が急激に進む社会の行く末を描いた「中身化する社会」(星海社新書)という本を2年半前に出したのですが、そこで外見や見栄が無効になる社会のあり方を丁寧に調べて行ったんです。そうすると、先進国で消費全体が落ちているというのが見えてきたのです。そこで消費欲が低下する世界というのはどういうものになるのかを描こうと思った次第です。

 

―物欲だけではなく、“欲離れ”が進行している気がします
何を持てば幸せなのかというのが問われ、価値観が大きく揺らいでいると思います。これまでは「モノがたくさんある状態」が幸せの象徴でした。そして、それを実現する大量のお金があることが幸せであると謳うのが資本主義の基本原理ですが、それを皆が疑い始めています。特に先進国はその傾向が強い。「モノを持っても幸せになれない」のはなぜなのかを書きたいと思ったわけです。

 

―菅付さん自身、10年前と比べて物欲は変わってきていますか
僕は編集者ですから、資料として本やレコードは今でもかなり買っています。ただし、服や雑貨は本当に買わなくなりましたね。もはや必要最小限で十分という考えです。

 

―服を買わなくてもいいというマインドになった時、世界でも同じような傾向はありましたか
ほぼ毎年ニューヨーク(以下NY)を訪れているのですが、2011年に行った際、人々の装いが急激にカジュアルになっていると思ったんです。ちょうどその時期iPadなどのタブレットが出始め、皆がこぞって地下鉄やバスの中などでフェイスブックやツイッターに脇目も振らず書き込んでいたわけです。iPadに夢中なので、他人の外見なんて見ていないなと。もはや興味の対象が、外見よりもソーシャルなコミュニケーションに移っていると感じましたね。

 

―9・11(アメリカ同時多発テロ)の影響もありましたか
リーマンショックの方が影響は大きいと思っています。当時、NYのエリート層がかなりリストラに遭いました。あれで価値観、人生観が変わった人というのは本当に多い。「大企業に入れば、一生高収入で過ごせる」という幻想が崩壊し、資本主義的価値観とは異なる幸せを追求し始めた頃でした。

 

―多くの人が服を買わないわけじゃないと思うんです。実際、ユニクロは人気があります
ファッションの昔と今の何が大きく違うかというと、〝コミュニケーションツール〞としての機能が落ちたのです。背景には、ソーシャルネットワーク(以下SNS)の台頭があります。SNSが出てくるまで、ファッション自体が、有効なコミュニケーション・メディアでした。その人が「どういうグループに属しているのか」、「どんな感性を持っているのか」というのを示すツールでしたから。それがSNSにとって代わられたわけです。

 

―タイの富裕層の消費欲の高さは相当なものです
発展途上国が成長の踊り場に達するまでは、そのような傾向があります。7〜8年前、最もポルシェが走っている都市は上海だといわれていました。エスタブリッシュされた〝富の象徴〞に、新興国の人たちは強い憧れがあるわけです。最近の調査で、中国でのラグジュアリー・ブランドの売り上げがアメリカを超えました。中国という一つの国で世界のラグジュアリー・ブランドの33%を買っているというのが、驚異的で異常ですよね。

 

―高級ブランドの売り上げは落ちてないのでしょうか
ラグジュアリー・ブランドは、新興国でかなり売り上げを伸ばしています。一方、中堅ブランドは厳しいですね。中国や中近東、南米でも有名なブランドじゃないと生き残れない。彼らはトップ5くらいにしか興味がないですから。

 

―まさに二極化ですね。では今のバンコクはどう思いますか
僕は毎年一回以上来ているのですが、アジアのハブ都市として、大変魅力的だと思います。気候も人々も穏やかで、経済的なエネルギーもあるし、観光や商業エリアとしては東京を超えそうな勢いですね。バンコクの方が、東京よりも外の世界とコネクトしている気がします。

 

―タイのカルチャーについてはどう思いますか
タイの文化が世界で評価されるには、評価される場所に行くしかないんです。そういう意味で、タイ人の映画監督であるアピチャポン・ウィーラーセタクンが、カンヌでパルムドール(2010年『ブンミおじさんの森』)を獲ったことは素晴らしいことだと思いますね。広告のクリエーターも評価が高いですし、タイ人のクリエーターには期待しています。

 


 

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