ヤマト運輸(タイランド)

タイの宅急便事業へ参入

MD 荒川 滋

《プロフィール》 1970年12月9日生まれ。東京都出身。94年早稲田大学政治経済学部卒、同年ヤマト運輸入社、2009年人材育成課長、11年人事総務課長、12年3月Yamato Unyu(Thailand)取締役社長。現在に至る。
 

「近い将来、タイでも宅急便事業へ参入します」

―タイに進出されて25年と聞きました。現在の事業領域を教えてください  現在の事業は、国際貨物の輸出入と、輸出入の通関を通した配送、日系企業を主体とした引越し、貸し切り配送業務(オーダー配送)、自前の倉庫で預かっている荷物の配送の4事業が柱です。



業績はいかがですか

 これまで25年間、アジア通貨危機(1997年)を除けば、タイ経済と共に成長し、現在も堅調に推移しています。運送業界内での過当競争がなかったことも要因ですね。 ただ、今後は違います。産業が発展し、所得水準も上がり、市場は拡大の一途を辿っています。参入業者も増えれば、当然、単価は下がり、価格競争が生まれます。ニーズも細分化され、ドアtoドアがメイン、いわゆる宅配便事業が求められるでしょう。つまり、少量多頻度化が進むと思われます。



御社の代名詞でもある宅配便サービス「宅急便」事業が求められるわけですね

 現時点でも、バンコク市内だけであれば可能だと思います。タイ全土に広げるとなれば、すぐにとは行きません。 現状は、宅急便網構築に向けて検討している段階です。



タイの物流インフラ網は脆弱という方もいます

 そんなことはありません。現に大手小売業が店舗網を広げられるのも物流インフラが整っているからです。そういった業務(運送)を生業とする企業もありますが、一手に引き受けられる大手物流会社が少ないのではないでしょうか。



日本の宅配事業のパイオニアである御社ならば引き受けられるのではないですか

 荷物を届ける行為は、それほど難しいことではありません。ただ、「決まった時間に無くさず、壊さず、着実に届ける」を約束するのであれば話は別です。まして、eコマース(電子商取引)による代金引き換えなど、ドライバーが金品を扱うことになることも想定しなくてはいけません。優秀で信頼に値するドライバー教育が最大の課題でしょう。



タイにヤマト式がお目見えするのは近いですね

 すぐにはじめるか、来年かは、まだ答えられません。果たして“ヤマト式”をそのまま持ち込んで成功するかどうかも見極めなくてはいけません。 タイのニーズは必ずしも日本と同じとは限りません。宅急便の理念を変えずカスタマイズは必要です。

他にも、日本ではヤマトのドライバーが来れば、家のドアを開けてくれますが、タイでは開けてもらえないこともあるでしょう。配送の手順でも、確認のサインをもらうのに、中身を細部まですべて確認してからサインするといった商習慣の違いなどによるハードルもあります。



課せられたミッションはたくさんありますが、着任してからの進捗・達成率はいかがですか

 赴任して2年が経ちました。大きな違いは組織形成のあり方でした。日本のヤマト運輸という会社は、組織間の壁が良い意味でなく、互いのことに口をはさみつつ、皆で課題解決を図ってきた企業です。そのため、繁忙期には総務の人間であっても、引っ越し業務を手伝うこともあります。

逆にタイでは、一人ひとりの職務がきちっと分けられ、誰かが休むと他がサポートできないといった問題がありました。前述した、引っ越し業務が繁忙期のときに他部署の人間を回すことができないといった具合です。まずは、縦割りの壁を取っ払いフラットな組織作りにかなりの時間を割きました。



プライベートでの変化はありますか

 海外赴任については、社の方針として遅かれ早かれ、あると思っていました。ですから、上司から打診を受けた時は「いよいよ来たな」と感じたほどです。タイに来てからは、日本よりも圧倒的に家族と過ごす時間が増えました。ゴルフは、仕事の一貫で覚えたので上手くはありません。



組織という土台ができたいま、今年は新たなスタートが切れたわけですね

 近い将来、タイの現地法人トップとして本格的な宅配事業への進出を決断することになると思います。弊社全体としても大きな投資となるので失敗はできません。開始時期も含めて、慎重な判断が求められるでしょう。そうなれば、現在(300人)の数倍の規模となります。大きなリスクをはらむチャレンジであっても、積極的に挑戦させてくれる土壌こそ、弊社最大の特徴だと思います。


 

編集後記 「クロネコヤマトの宅急便」でお馴染みのヤマト運輸。今や我々の日常生活において欠かすことのできないサービス「宅配便」事業を立ち上げ、日本最古の運送事業者といわれるパイオニア企業だ。日本人にとっては「今日送ったので、明日◯◯時に着きます」と当たり前の文句だが、ここタイでは稀有なサービス。そんななか、荒川氏は「市場を見極めた後に開始する。決断に向けた準備はしている」と力強く答えてくれた。タイが“宅配便元年”を迎える日も近い。(北川 宏)

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