タイ大塚製薬代表

独自製品を作ることが至上命題

取締役社長 﨑山 基行

《プロフィール》 1976年1月3日生まれ。福岡県(小倉)出身。1998年九州工業大卒、同年大塚製薬入社、広島支店、2009年アジアアラブ事業部、11年タイ大塚代表取締役社長。現在に至る。
 

「世界に類を見ない独自な製品を作ることが至上命題です」

―大塚製薬の代名詞といえば「ポカリスエット」ですが……
 ご存知の通り、日本では医療用医薬品とポカリスエットなどの消費者商品を事業の二本柱としていますが、タイでは少し異なります。

ポカリスエットなどの消費者商品は、タイの消費者商品を研究開発しているOSARというグループ会社から代理店を経由して販売しており、タイ大塚製薬は医薬に特化しています。主な事業は、輸液(水分や栄養を補給するための点滴)、経腸栄養、治療薬、医療機器販売ですね。



タイでも研究開発していると聞きました

 日本と同じ領域とはいきませんが、サムットサーコーンの工場内の研究所で、糖尿病向や免疫力を上げるような栄養剤をタイ大塚独自で研究開発しています。競合他社が欧州から輸入するなか、弊社ではアジアの栄養概念を取り入れつつ、現地で研究開発を行い、製造しています。東南アジアのなかで、とりわけタイはGDPの成長とともに健康意識が高まっています。市場としては、今後も有望な地域だと思います。



業績も好調というわけですね

 02年にタイは、日本の国民皆保険制度に近い、診療費の一回一律30バーツ制度が導入され、すべての国民が診療費の一部を負担するだけで同じ質の医療サービスを受けることができるようになりました。

その一方で、この10年間で医療費が膨らみ、国の財源が不足して医療費や薬剤費のコントロールがはじまりました。短期的には厳しい状況下に置かれることもありましたが、長期的には医薬産業は、国の成長とともに拡大すると思います。我々の使命は、タイの医療水準を上げ、患者さんのQOL(生活の質)に貢献することです。



御社にとって、タイのマーケットの重要度は?

 タイは大塚製薬にとって初の海外進出地(1973年)で、重要な拠点です。弊社グループは、グローバルに150社を展開し、約3万人以上が働いていますが、そのうちの半分がアジア地域に集中しています。

マーケットのサイズでは、中国、インドといった人口の多い国には敵いませんが、ASEAN(東南アジア)の中心であり、かつ中進国として成長するタイは、医療・医薬分野の市場として堅調に推移すると見ています。今後は、ASEANや中東向けに、輸液や栄養剤などタイ発の輸出を伸ばしていきたいですね。



赴任して3年と聞きました

 タイ大塚製薬では約900人のスタッフが従事しています。日本人はマネジメントとしては本社に私一人で、あとは工場に一人いるだけです。

弊社には「医療は文化」という考えがあり、“現地の文化を理解せずには、その国の医療ニーズを知ることはできない”というコンセプトのもと、早くから現地化を進めています。また、弊社には、失敗して学べという社風があり、現地法人にある程度の権限を与えてくれています。

決定権者として、判断の重さを感じることは多々ありますが、現地の人間と一緒に悩みつつ、よりよくしていきたいですね。



初の海外勤務で変化はありましたか

 プライベートでは、3番目の子どもがタイで生まれました。日本にいたときに比べ、家族で一緒に過ごす時間が増えたように思います。

忘れもしないのは、2011年の洪水でしょう。弊社が扱う輸液は、タイでのマーケットシェアが40%以上あります。洪水時に、競合他社の工場が水に浸かり、透析患者への供給が間に合わない状況となり、ビジネス抜きに弊社の工場をフル回転させ、出荷しました。弊社の工場にもあと数キロという地点まで水が迫り、毎日気が気でなかったですね。タイ政府からも直接の連絡で感謝を伝えられ、自分が関わってきた仕事が「人々の役に立つ社会貢献業だったんだ」と再確認できた出来事でした。


また、生産が間に合わない分は在タイ日本大使館が中心となり、関連する日系企業やタイの政府側を取りまとめていただき、日本の各輸液会社が力を合わせ“東日本大震災の恩返しだ”との思いから“チームニッポン”で協力し、透析患者に届けることができたんです。これも、自分たちの存在意義を肌で感じる貴重な経験となりました。



今後の目標は?

 手前味噌ですが、面白い会社だと思います。社風については前述しましたが、弊社の社是は「世界の人々の健康に貢献する革新的な製品を創造する」です。

医薬・医療製品を研究・開発するオリジナルカンパニーである以上、ユニークかつ、世界に類を見ない独自の製品を作り、その製品を速やかに必要とする顧客に届けることが至上命題とされています。

だからこそ弊社では、先輩たちも含め多くの失敗を重ねてきたはずです。社歴17年の私にも、少なからず大塚イズムが浸透しています。タイ駐在というチャンスを与えられた以上、失敗を重ねつつも挑戦し続けたいですね。


 

編集後記 大塚製薬は、ポカリスエットやカロリーメイトなどの健康飲料や健康食品の「消費者関連事業」と、新薬メーカーとして世界に名を馳せた抗精神病薬「エビリファイ」の独自開発に代表される「医療関連事業」を二本柱とする独自の経営スタイルを貫く稀有な企業だ。同社の根幹にあるのが“大塚らしさ”だという。若干36歳でトップとして当地に赴任してきた﨑山氏からも、失敗を恐れず、飽くなき挑戦を続ける大塚イズムが感じ取れた。タイ発の大塚製品が生まれる日も近い!(北川 宏)

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