東レ

繊維業はAECの発足により需要が増す

在タイ国東レ代表 丁野 良助

《プロフィール》 1950年生まれ。高知県出身。1973年東洋レーヨン(現東レ)入社。2001年TTEL副社長、03年繊維加工技術部長、09年TSD社長、13年東レタイランド社長に就任。現在に至る。
 

技術の東レ。繊維根幹に、医薬、水処理、バイオへ

—タイは、御社にとって重要拠点だと伺いました

タイは、東レにとってグループ初の海外生産拠点を設けた国で、2013年に進出50周年を迎えました。ポリエステル・レーヨン(T/R)混紡織物などを手掛けるタイ東レ・テキスタイルミルズ(TTTM)、ポリエステル・綿(T/C)混織物やエアバッグ用基布などを手掛けるラッキーテックス(タイランド)社(LTX)、衣料用・産業用原糸や樹脂コンパウンド、ポリプロピレン、蒸着フィルムを製造するタイ東レ・シンセティックス社(TTS)など、9つの事業会社で構成されるグループで、従業員は約5000人強です。他にも、カーボンマジック(タイランド) 社(CMTH)では、スポーツカーのボディや医療用X線関連部品などの炭素繊維コンポジット製品を生産するなど、幅広い事業を展開する重要生産拠点です。

—世界的に繊維需要は、増えていると聞きます

日本では、繊維事業は斜陽産業というイメージを持たれていますが、グローバルでは違います。2013年の合成繊維(合繊)供給量は、全世界で7330万トンでしたが、20年には9340万トンまで増えると予想されています。繊維業は、決して斜陽ではありません。特に、タイを中心とするASEAN地域では、AEC(ASEAN経済共同体)の発足により、域内6億人市場が誕生し、ますます需要が増すでしょう。

—競合他社との競争激化は免れませんね

ご存知の通り、いまや日本を代表するグローバル企業である“ユニクロ”向けに開発した新素材により、機能性に優れた「ヒートテック」や「エアリズム」といった衣類が誕生しました。実現できたのは、従来の糸売りからテキスタイル(生地)、染色、縫製といった一貫生産で作れる体制と技術を構築してきたからです。今後、タイやASEANでは、生活水準が高まり、さらに高付加価値素材の需要増が予想されます。

—日本では、脱繊維を進めるメーカーが多いです

弊社グループでは、あくまでも繊維事業を中核に、技術研究を続けて強みを伸ばす方針です。そこに、繊維で培った技術を生かした医療、電子情報材料、水処理膜、炭素繊維といった非繊維事業を成長エンジンとしています。例えば、ASEANには良質な水資源がありません。最近では、浄水場施設の大型案件を受注しました。また、水処理膜技術を応用した、バイオ事業も検討しています。さらに、タイは医療大国と呼ばれる通り、他国からの医療ツーリズムも盛んです。すでに、チュラロンコーン大学と共同で、人工腎臓の臨床実験をはじめています。医療機器・医薬事業も拡大していくでしょう。今後も、繊維事業を根幹に、さまざまな事業展開を進めていきます。

—海外畑と聞きました

海外赴任期間は、通算で約20年(累計6ヵ国)です。最初の赴任先は1983年からインドネシアのスラバヤで32歳でした。その後、英国、タイ(1度目)、英国(2度目)中国を経験し、タイ(2度目)の現在に至ります。楽観的な性格と酒好きが高じて、多くのグローバルな友人・知人ができました。滞在したどこの地域にも、思い入れはありますが、なかでも中国(南通)時代は、お茶とお酒の文化に傾注し、公私ともに多くの朋友が出来ました。また南通の日本人会の会長と共に、真剣に白酒について研究する“白酒同好会”を発足し、その会長も兼務していました。とにかくお茶もお酒も良く飲みましたね。

—海外でのマネジメントは、お手のものですね

東レの方針として、現地化を進めていますので、各階層の研修制度が整い、ローカルスタッフの幹部も成長していますし、タイのグループのなかには、役員の半数がタイ人という会社もあります。個人的には、その国の気質を理解した上で、モチベーションを維持させる仕組み=環境作りを実践し、できる限り製造現場のライン長は現地人を登用して任すべきと考えています。

—休まる時間はありませんね

中国には「活到了 学到了」という言葉があります。人生死ぬまで勉強という意味です。現在、64歳となりましたが、齢60を過ぎて2つの変化がありました。ひとつは、ドライバーの飛距離が伸びたこと、そして、もうひとつが酒の量が増えたことです。中国出張で日本人がよく体験するのが、白酒で歓迎され、酔いつぶれることでしょう。先日、中国で現地の強者と呼ばれる方と一緒した際に「なんで、あなたはそんなに早く飲むのか」と驚かれました。仕事もゴルフもお酒もまだまだ勉強中です。
 

編集後記

齢60を過ぎて、ますますパワフルになると話す豪胆な姿。人類学、茶、酒など博識ぶりにも驚嘆。聞けば、日本本社の日覺昭廣社長とは同期という。タイの地は、将来需要を見越し、今後も巨額設備投資を控える。だからこそ、社内屈指の海外畑で旧知の丁野氏に任せるのだろう。いまや、東レの炭素繊維は航空会社の必須アイテム。ユニクロにとっては最強のパートナー。巨大な水ビジネス市場における水処理技術も世界トップ。グローバル企業“東レ”から目が離せない。(北川 宏)

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