泰国川崎汽船

陸ASEANの物流市場の成長は間違いない

社長 石田 信夫

《プロフィール》 1959年生まれ。群馬県高崎市出身。早稲田大学卒、社内各部に加え、イギリス、シンガポール、アメリカ赴任を経て、2011年泰国川崎汽船社長現在に至る。
 

「今年から来年が勝負!陸ASEANの物流市場の成長は間違いない」

―タイでは、物流(陸送)がメインと聞きました
 売上比率の75%が物流で、残り25%が自動車船、バルク船、コンテナ船といった海運事業のハンドリングや集荷です。

物流事業というのは、通関、陸送及び国内(バンナー、レムチャバン、アマタナコン)に保有する倉庫を拠点とした荷物集配で、主に自動車、家電、農機具を扱っています。



タイの市況はいかがですか

 東日本大震災直後の2011年3月に赴任してきました。ご存知の通り、タイでは大洪水となり、自動車産業をはじめとするサプライチェーンが打撃を受けました。その後、12年は復興需要によるV字回復を遂げ、売上、利益ともに過去最高益となりました。

そして13年は、復興需要からの反動減と自動車減税の終了による販売減に反政府デモが加わり、自動車メーカーの生産調整が重なって、市況は減速傾向にあります。


ただ、業績(13年度)への影響は軽微で、12年度に比べて小幅な減少となっています。個人的には、それまで過熱気味だった物流市場にとって、いまは冷却期間と見ています。タイ経済のポテンシャルを考慮すれば、中長期的には楽観視しています。



日系と非日系の比率は?

 タイは特殊な市場で、日系荷主比率が非常に高く、3分の2を占めています。タイ以外の市場で、日系比率が5割を超えることはほとんどありません。また、タイは欧米系の競業他社が少ないことも幸いしています。加えて、好材料としては、タイの地場企業の事業拡大や近隣諸国進出により、新たな顧客獲得につながっている点でしょう。とはいえ、タイローカルの物流企業が成長しつつあるなか、あぐらはかいていられません。



タイでも冷蔵、冷凍物流が本格化しているそうですが

 子会社のバンコク・コールド・ストレージサービスが専門に担っています。今年は、バンナーに最新式の設備を備えた倉庫を完成させ、高まるニーズに対応できる体制強化を図りました。

タイ国内で高級なジャポニカ米(日本米)は、品質低下(劣化)を防ぐために冷蔵・冷凍物流需要が高まりつつあります。その他の食品の低温保存需要も、増えてきています。



海外駐在歴が長いと聞きました

 計14年間です。イギリス、シンガポールを経て、タイの前は米国でした。タイ赴任は米国駐在からの横異動だったので、日本から赴任する以上に(タイの)良さを感じました。

振り返れば、米国の赴任先は、バージニア州のリッチモンドという田舎町。日本食を食べるには150キロ先のワシントンDCで購入するか、もしくは共同購入による配送しか手段はありませんでした。それと比べてタイは何不自由なく生活できています。



トップとして、タイの組織はいかがですか

 タイの組織は、オフィスワーカー500人、倉庫、トラック運転手、関係会社を含めるとグループ全体で1600人くらいでしょうか。タイ人スタッフは素直でよく働く印象です。

ただ、マネージメント面では、英語による意思疎通が図れず、ことあるごとにタイ語の重要性を感じますね。マネージャークラス(キーパーソン)の人材育成が肝だと思っています。英語や日本語の語学研修を開くなどして、優秀なキーパーソンの育成に力を注いでいます。



休日の過ごし方は

 週末はゴルフが多いです。たまの休日には近くのルンピニ公園を歩き、小動物やオオトカゲなどを観察しています。食事は、イギリス単身赴任時代に妻から贈られた料理本で覚えた腕で、自炊しています。



社長にとって川崎汽船とは

 古い言葉ですが、弊社は昔から「我先汽船」と呼ばれていたんです。

今も昔も日本の海運業界では、三番手=三男坊として自由な立場だったこともあり、良い意味で秩序を壊すというか、前例に囚われない発想でビジネス展開してきた会社です。今はやや薄れましたが、失敗に関しても寛容で、やり甲斐や活躍の場を与えてもらえる風土がDNAとして脈々と受け継がれています。



今後の事業戦略について

 東南アジア、とりわけ陸続きのASEAN市場はタイを中心に陸の物流が中心となることは間違いありません。本来、陸に力を注いでこなかった弊社グループのなかで、タイ現地法人で陸の売り上げが75%を占めることからしても、異例の地域です。

隣国への物流が盛んになるなか、昨年から倉庫の新設といった設備投資を進めてきました。これらが完成する今年から来年が“勝負の年”となるでしょう。


 

編集後記
かつて「海運王国」と呼ばれた日本。川崎汽船は業界を牽引してきた御三家の一角を担う。その事業領域は、本業の海上貨物輸送だけではなく、航空・海上貨物フォワーディング、陸上輸送、倉庫事業や貨物混載事業など幅広く、現在は、世界を股にかける総合物流事業会社だ。タイは、陸続きのアセアン地域のハブとして将来有望な大物流市場。「我先汽船」のDNAを受け継ぐ、石田社長がタイの地で、どんなウルトラCの経営手腕を発揮するのか注目したい(北川 宏)

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