JX 日鉱日石エネルギー(タイランド)

タイで“ENEOS”ブランドの認知を

MD 吉田 耕二

《プロフィール》 1961年生まれ。大分県出身。83年青山学院卒業、同年日本石油入社。2011年JX 日鉱日石エネルギー (タイランド) マネージングダイレクター。
 

「タイの全国民に、“ENEOS”ブランドを認知してもらうのが目標です」

―タイでの事業領域は
 メイン事業は、潤滑油の販売です。タイでの売上高約25億バーツのうち、約9割以上を占めています。

同事業のタイでのシェアは約3%です。ご存知の通り、タイは自動車産業の一大集積地ですから、ガソリン、ディーゼルエンジンオイル、ギアオイル、トランスミッション、無断変速機など、自動車向け潤滑油が主になります。あとは、各種工作機械やパワーショベルといった重機、発電用タービンの潤滑油などさまざまです。



現在の業績はいかがでしょう

 今年は、前半の政治混乱期や自動車のインセンティブ政策による反動減で、全体的に落ち込んではいます。ただ、数値的にはかろうじて前年対比100%程度で推移しています。これまで毎年約10%成長(率)を続けてきましたが、今年はほぼ横ばいとなりそうです。

潤滑油事業は、自動車の保有台数に影響を受けるので、生産台数が伸びれば、その分、業績に寄与します。



タイの電力消費量は拡大傾向にあり、エネルギー需要、つまりは市場としてのポテンシャルは高いのではないですか

 現在のタイの電源(電力供給の源)は、日本でいう関西電力や中部電力と同規模です。国土が日本の1・6倍、人口は半分の環境を考えても、電源は足りていません。首都バンコクでも、頻繁に停電が起こっている状況です。タイ政府がEGAT(タイ電力公社)との協力体制で、電源倍増計画を予定していますので、電源事業にはビジネスチャンスがあると思っています。



ビジネス領域を広げるということですね

 ビッグビジネスとなり得るエネルギー事業には食い込みたいですが、なにぶん、エネルギー確保は国家戦略ですので、安々とは入り込めません。

将来的に、得意分野である石油系リテール(小売)まで広げたいところですが、まずは、自社ブランドである“ENEOS”オイルの全国展開を推進していきます。



これまでの海外赴任の経験は?

 シンガポール、マレーシアを経て、タイには2010年7月に着任しました。ちょうど反政府デモ隊(反独裁民主戦線、通称:赤シャツ)と政府側が衝突していた時期だったので、本当に行くのか前任者に確認していたことを思い出します。

驚いたのは、2011年の洪水被害ですね。じわりじわりと首を絞めるように水が迫り来る光景は忘れられません。今回のクーデターは、過去の経験から冷静な対応ができたと思います。ビジネス面で非常に厳しかったのは、政府の「コメ買取制度」による農家への融資未払い問題で、農業機械の需要が落ち込んだときでした。



独自のマネジメント術を教えてください

 日本語と英語の研修はしていますが、基本的に社内言語はタイ語を推進しています。

以前、全社的にTOEIC試験を実施したところ、平均が500点でした。一般的に英語で仕事ができるのは700点と言われていますが、7割と7割の人間同士のコミュニケーションを単純に考えれば7×7=49、つまりは5割しか互いに理解していないということです。それなら、タイでは英語というハードルを外したほうが会社にとってはメリットがあると判断しました。



3ヵ国目ということで、マネジメント面でそれほど気苦労はないと

 そんなことはありません。文化・風習が違うので伝え方には気を使っています。

トップとしては、公平な立場でいるべきだと思っているので、スタッフとは一定の距離感を保って接しています。



プライベート面はいかがでしょうか

 シンガポール時代に最高スコアを記録してからはゴルフに限界を感じ、最近は小型船舶の免許を取得し、釣りをはじめました。金曜から週末にかけてアンダマン海に出るんですが、1メートル級のカンパチも釣れるんです。近場ではパタヤのタイ湾にも行きますよ。



トップ(決定権者)は孤独と聞きます

 それほどでもありません。むしろ、おもしろいですよ。ビジョンや方針を自ら決め、組織を動かすという経験はなかなかできませんので。

特に経済発展の著しい東南アジアは、事業領域を広げることが至上命題ですので、日々アイデアを絞り、実現できるかの可能性を探ることが仕事です。タイはポテンシャルがある国ですし、やりがいを感じます。



吉田氏にとって、JX日鉱日石エネルギーとは?

 日本の石油を安定供給するという、社会に対する責任意識の強さが好きですね。

日本のエネルギー需要を支えているという誇りもありますし、間違いなく貢献していると自負しています。


 

編集後記
国内石油精製販売で国内断トツのJX日鉱日石エネルギー。「エネルギーを、ステキに。ENEOS(エネオス)」のスローガンは誰もが知るところ。タイ進出は、JX日鉱日石エネルギーの前身の一つ、三菱石油時代に遡る1995年で、来年20周年を迎える。ご存知の通り、タイの電力需給は継続的な経済発展で常に逼迫し、政府は目下、電源倍増計画を推進中だという。「超大手(PTT)やライバル(外資)が多く、厳しいがビジネスチャンスはある」と意気込む吉田氏の手腕に期待したい。(北川 宏)

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