タイ日本通運

AEC発足に向け原点回帰

取締役社長 村澤 修

《プロフィール》 1957年生まれ。神奈川県横浜市出身。1981年早稲田大学卒業、同年日本通運入社。ドイツ・イギリス・アメリカで延べ15年の海外勤務、2013年5月より現職。
 

タイ独自の販売手法を確立させます

―タイ日本通運の事業領域は
弊社グループは、タイだけで8つの事業会社があり、そのなかで弊社は中核を担っています。

主に、航空、船舶を利用した輸出入フォワーディング、通関、引っ越しがメインです。なかでも、輸出航空貨物輸送の収入が全体の50%を占めています。タイ日通グループの規模感は、日本以外に弊社が独自に分けるグローバル4極総括地域のうち、南アジアオセアニア地域の約3割の収入規模となります。



昨年の政情不安の影響はいかがでしたか

利益確保面では確かにかなり厳しい年になりました。ただし、タイは自動車産業以外でも、ハードディスクドライブなどコンピュータ周辺機器、光学機器なども、部材調達+生産+販売/輸出のサプライチェーンが集積・確立しており、ロジスティクス業者としては底堅い市場です。積極的な営業活動により、売上では前年比2ケタの伸長を確保できました。



タイでは、新年度(1月)を迎え、年度末にはAEC(ASEAN経済共同体)発足を控えています

物流業界にとって、AEC発足は追い風となるでしょう。タイは、AEC域内と中国南西部を含めた大メコン経済圏のハブとなる国です。

国内ネットワークに加えて、域内ネットワークをどう強くしていくかが、至上命題だと思って取り組んでいます。発足後、通関手続きの簡素化が進み、荷物の積み直し規制など非関税障壁が徐々に解除されるはずです。そうなれば、いま以上に鉄道・トラック輸送の利便性が高まり、市場規模は急速に拡大するでしょう。


とはいえ、すぐにEU(欧州連合)のようにボーダレスになることはありません。隣国との経済格差、異なる言語、国境を跨ぐ関連業者の既得権益の調整などハードルはあり、官民挙げて取り組まなければクリアできない事柄も多いでしょう。われわれも物流のエキスパートとして、そこに参入し協力していきたいと思っています。



海外赴任が長いと聞きました

タイで4ヵ国目です。ドイツ、イギリス、アメリカを経て、タイは2013年から赴任しています。アジアは今回が初めてですね。今年で、ちょうど社歴の半分が海外勤務となりました。個人的にも節目の年です。

ですから、もう一度、原点に戻り、弊社の基幹業務である「引っ越し」を改めて見直し強化しています。企業活動は、ヒト・カネ・モノの順番で動きます。赴任される方の新生活をしっかりとサポートし、その後、お客様の投資計画(設備輸送)に着実に対応する。その上で、輸出入や国内・域内輸送・3PL業務へとつなげて行く。

我々にとって、引っ越し業務と設備輸送は、営業の“入口”であり、先発ピッチャーであると心得ています。(AEC発足)大局が変わろうとする今こそ、改めて足場を固めて、中継ぎ、抑え、へとしっかり展開できる、柔軟に対応できる組織(会社)を形成していきます。



マネジメントで、日本や欧米との違いを感じますか

“郷に入れば郷に従え” “住めば都”です。海外勤務・海外生活に、ストレスを感じることはないですね。また、弊社のなかで、タイの位置付けは、アジア市場の中でも有望視する国で、本社からのサポートも手厚く、仕事はしやすいです。

もちろん、国が違えば風習や行動様式の違いを感じることもあります。ただ、大事なのは、きちんとゴールを示し、そこに至るプロセスについて説明してあげる、それをお互いに合意しあうことだと思っています。



プライベートはいかがですか

単身赴任は初めてですが、何不自由なく生活できています。ゴルフもやりますが、ランニングが趣味です。タイに赴任後ハーフ8回、フル1回マラソン大会に参加し完走しました。ここでは市民レースが多く、カンチャナブリー、カオヤイ、スコータイ、プーケットといった地方レースにも仕事の仲間(走友会)と一緒に観光兼ねて参加しました。お客様や出張者との会食がない日は、帰社後近所の公園を10㎞ほど走ります。



学生時代は何かスポーツを?

中学・高校と陸上の短距離選手でした。長距離は専門外でしたが、イギリス赴任時代に不摂生がたたり、急激に体重が増え、一念発起で毎朝ジョギングをはじめました。それから、義務が習慣に、習慣が趣味へと変わっていきました。その後ヨーロッパ赴任中に、ロンドン、アテネ、パリと3回フルマラソンに出場し完走しました。



社長にとって、日本通運とは

潜在能力を秘めた感じが、タイに似ていますね。ただ、両者とも機敏性に欠け表現の仕方が下手で、正しくストレートに社会へ伝えられていない面もあります。

今後は、スピード感を持ってお客様へのソリューションをもっと早く的確に出せるよう能力を高めていかなくてはと思っています。


 

編集後記

「引っ越しは日通」のキャッチコピーで知られる日本通運。総合物流国内最大手であり、世界最大級の規模を誇るグローバル企業だ。戦前に、トラックを用いて集荷・配送業務を開始し、現在の物流業界を作ったパイオニア。AEC発足で、国の垣根を超えた経済発展が予想されるなか、ヒト・モノを運ぶ物流網は生命線。村澤社長は“物流元年”とまで呼ばれる今年の目標に、「原点回帰」を掲げた。基盤(体づくり)を固め、発足(大会に挑む)に挑むのは、お手の物、といった具合だろうか。(北川 宏)

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