日本駐車場開発(タイランド)

タイには、ビジネスチャンスが溢れている

代表取締役社長 川村 憲司

《プロフィール》 1964年生まれ。大阪市出身。89年滋賀大学卒業、阪和興業入社。92年コロンビア共和国駐在、97年上海復旦大学留学。99年日本駐車場開発入社。05年取締役副社長就任、10年NPD(日本駐車場開発)タイランド社長就任(兼任)。現在に至る。
 

タイには、ビジネスチャンスが溢れている

—タイでの事業領域は日本と一緒ですか
弊社のビジネスモデルは、いくつかあります。例えば、日本では駐車場附置義務条令により、大規模な建築物に、駐車施設の附置を義務付けています。ただ、現実は大都市では公共交通が発達しているため、都心に車で通勤し値段の高い駐車場を利用する機会は少なく、駐車場が余っている現象が起こっています。そこで、弊社は空いている駐車場を借上げ、付加価値をつけて、必要としている人に賃貸する、いわゆる不動産サブリースの駐車場版を日本で開始(1991年設立)したのがはじまりです。

ほかにも、立体駐車場での入出庫の待ち時間の無駄に注目し、弊社スタッフによるバレーサービス(入出庫代行)を行うことで、待ち時間の無駄を解消させました。安心・安全にも着目し、立体車場内に人検知センサーを設置し、駐車場内に人がいた場合、機械をストップする仕組みで、事故を未然に防いでいます。さらに、駐車場運営にサービス業であるという理念を導入させました。駐車場を利用して「今日はいいサービスを受けた」と思う人は少ないでしょう。期待感がないからです。そこに、スタッフを教育し、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」との声出しをはじめだけで、当時は、評判が高まったのです。

—タイでも積極的な展開をしていると伺っています
タイ進出は4年半前(2011年)です。ラマランドビル、チャーンイサラビルといったオフィスの駐車場を手がけましたが、都心でありながら、皆が車通勤する点で日本とは異なり、苦労しました。昼間の空きがない駐車場をどう運営するのか。まず、駐車場内をランク分けし、一番便利な場所を、少し料金は高いがVIP向けに、その他もいくつか区分して、値段とサービスに差をつけたのです。価値を利用者に選択してもらう手法は当たりました。続いて、夜、ガラ空きという状況を活用しました。シーロムにはタニヤという繁華街があります。そこで働く人たち向けニーズを開拓するため、ワンナイト料金として格安で駐車場を貸し出したのです。とにかく、タニヤの全ての店を回りリサーチしましたよ。

—まさに根気でニーズを発見したわけですね
必ずチャンスはあるんです。現在は、駐車場の高度・効率化を図っています。ご存知の通り、タイではまだまだ人の手によってサービスが支えられています。日本では当たり前の「事前精算機」を導入し、出入口を自動無人化。セキュリティ面でも、ガードマンが必ずしも機能していないことも多いです。そこで、駐車場内にカメラを100ヵ所以上設置し、ポスト(ヒト)を大幅削減、その分、高給料の優秀な人材を管理者として派遣、管理させました。すると、安全面が高まりコストは安くなるという逆転現象も起こっています。現在、タイでは20ヵ所以上の有名ビル駐車場を運営しています。

—渋滞解消に駐車場運営が活用できると聞きました
実は、いまトヨタ自動車のリーダーシップで、チュラロンコーン大学が中心となり、バンコクの渋滞解消プロジェクトを進めているんです。そこで都市中心部の交通渋滞の緩和のため、弊社もプロジェクトの中心メンバーとして、パーク&ライドと呼ばれる仕組み作りを進めています。自動車をやや郊外の公共交通機関の駅やバス停付近に設けた駐車場に駐車し、そこから公共交通機関に乗り換えて通勤してもらうと、都心に入る車が減るという考えです。

すでに、BTSサパーンタクシン駅、MRTバンスー駅、BRTラマ3世駅付近等に弊社が数ヵ所の駐車場を開拓し、利用者の募集を開始しています。また、将来的に実現してみたいのは、サトーン交差点の駐車場運営です。四つ角のビル駐車場を全て弊社が運営できれば、四つのビルのテナントは、どの駐車場を利用してもいいルールにして、前もって帰宅する際に出やすい駐車場を利用してもらえば、帰宅時に交差点に進入する車の数は圧倒的に減り、夕方の帰宅ラッシュの渋滞を防げるはずです

—新たな事業が目白押しですね
先日、シーロム駅近くのクラウンプラザホテルの入るラマランドビルにレンタルオフィスを開所しました。この分野でも、過去になかった様な感動を与えるサービスを提供していくつもりです。ビジネスは“ハッピートライアングル”が大事であると常々、考えています。例えば、駐車場のオーナーとユーザーのハッピーだけでなく、駐車場運営を活用し、タイの渋滞が解消できるような社会のハッピーが実現できてはじめて、ビジネスとして成功したと思うわけです。この国には、ビジネスチャンスが溢れかえっています。やり甲斐そのものです。


 

編集後記

開口一番「どんな会社か知らないでしょ?」と川村社長。駐車場ビジネスがサービス業とは思わなかった。聞けば同社の成功体験に“ナットク”。人は期待感を上まわったときに感動する。駐車場サービスへの期待感は低い。徹底した努力で大きな感動を与えられたわけだ。単純なことだが、気づかない人の方が多い。そこにビジネスチャンスが転がっているという。世界的な渋滞都市バンコク。緩和は、国家の悲願だが、遅々として進まないのも事実。川村社長のアイデアが功を奏するか。(北川 宏)

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