タイ新日鐵住金

事業会社を連携させシナジー効果を

社長 奥苑 一成

《プロフィール》 1961年生まれ。1984年九州大学法学部政治学科卒業。同年新日本製鐵入社、94年本社鋼管営業掛長(企画調整)、2000年八幡製鉄所総務部総務グループリーダー、03年本社鋼管営業部特殊管グループリーダー、11年タイ新日鐵、12年タイ新日鐵住金(社名変更)社長、現在に至る。
 

「20社以上ある事業会社を連携させ、シナジー効果を発揮させます」

―タイの鉄鋼消費は堅調に拡大しているようですね

 まず、東南アジア諸国連合(ASEAN)の鉄鋼需要は足元約5000〜6000万トンで、すでに日本の内需を超え、今後さらに増えると言われています。なかでも、タイは鉄鋼消費大国で年間約1600万トンが消費されています。そのうち、約1000万トンを輸入に頼り、現地生産は700万トン程度です。輸入の半数強は日本からで、日本の鉄鋼メーカーにとっては、重要なマーケットの一つです。



タイの地場鉄鋼メーカーでは、生産できない品種があるのですか?

 タイは、早い時期から日系の家電、自動車メーカーが進出し、いまやASEANで有数の集積地となっています。当地に進出されたお客様からは、「日本で調達する材料と同じものを」とのご要望が基本にあり、長年培ってきた国内での信頼関係が当地でも生かせる、と言う点で、アドバンテージがあります。また、製品のなかには、高炉から一貫したつくりこみが必要なものも多く、日本鉄鋼メーカーの強みが生かせるマーケットです。



ライバルの韓国企業ポスコは、インドネシアで高炉一貫製鉄所を稼働したようですが

 弊社も過去にタイ政府の要請に応えるかたちで製鉄所建設を検討したことがあります。ただ、高炉建設には莫大な資金が必要であることに加え、タイの現行法制下では環境アセスメント(環境影響評価)等、さまざまな規制をクリアする必要があり、タイ政府の検討も進んでいないのが実情です。環境規制だけではなく、地方自治体が企業を誘致し、その地域の振興につなげられるような仕組みになっていないことも、高炉建設のような大型プロジェクトがなかなか進行しない一因になっていると思います。



タイには、世界一の鉄鋼生産国である中国製品が流入していると聞きます

 世界の鉄鋼市場は、中国の過剰生産により、アジアを中心に供給過多となっています。日本メーカーとは直接は競合しない分野がほとんどですが、中国からの大量の輸出材がこの地域の鋼材市況を押し下げ、我々の販売価格も間接的な影響を受けざるを得ない、という実態にあります。



今こそ、2012年の世紀の大合併によるシナジー効果が発揮される絶好の機会ですね

 二社の統合は、うまく行っていると思います。タイにおいても、タイ新日鐵住金も陣容が充実し、事業会社もグループ全体で20社以上を有する企業集団となり、品揃え、サービスなど含め、お客様の多様なニーズに答えられる体制を構築できています。



初の海外駐在と聞きました

 自分のキャリアの中では、自動車用鋼管の営業をしていた時期が長く、その間、幸いにもいくつかの海外事業案件に携わることができました。当時住友金属の子会社であった住友鋼管との広州でのJVや、インドネシアでの事業会社設立など、貴重な経験をすることができました。その当時から、タイにはすでに事業会社があり、何度も出張しました。これらの経験は、今のポストで非常に役に立っています。



順調ということですね

 タイを含むASEANは、今後とも鉄鋼需要の成長が見込まれるマーケットであるだけに、国内外の鉄鋼メーカーとの競合も日々、厳しさを増しています。ただ、統合もあり、当地に展開する事業会社網は、競合他社に比し、一日の長があると自負しています。これら事業会社が個々の機能をフルに発揮し、新日鐵住金グループとしてのシナジー効果を発揮できるよう支援していきたいと思っています。



タイ赴任はいかがですか?

 当地に赴任しての海外駐在も2年半が過ぎました。子どもが大きいこともあり、タイには妻と2人で来ました。ゴルフは嫌いではありませんが、なかなか実力が伴いません。時間のある時は、妻と小旅行や街歩きを楽しんでいます。



今後の目標は?

 やはり、事業会社群をさらにこの地に根付かせ、グループシナジーを最大限に発揮させ、存在感・影響力のある企業集団にしていくことを目標にしたい、と思います。  また、タイのマーケットは当社にとっても重要ですので、共存できることが大前提ですが「どうすれば当地鉄鋼業が発展できるのかを考えてみたい」と最近、思うようになりました。タイの鉄鋼業界は、輸入、現地生産のバランスに象徴される通り、残念ながら順調に発展してきているとは言い難い状況です。個々の企業の努力に加え、国レベルでの政策議論をさらに深めていくことも必要なのかもしれません。

 

編集後記 「鉄は国家なり」と言われて久しいが、それは国内に限ったこと。むしろ、東南アジアを中心に海外市場は拡大傾向にある。なかでもアジアのデトロイトと呼ばれるタイは、鉄鋼メーカーの常客“自動車産業”の大集積地。それゆえ、競合ひしめく激戦地と化している。困難を乗り越え海外プロジェクトを成功させてきた奥苑社長の調整力は、合併によるシナジー効果を発揮させるには適任だと感じた。真の新生“タイ新日鐵住金グループ”が誕生する日も近い。(北川 宏)

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