東京都立 産業技術研究センター バンコク支所

公設機関初の 試験所設置を目指します
所長 西野 義典

《プロフィール》
にしの よしのり
■大学卒業後、大手電機メーカーに入社。
2008年より(地独)東京都立産業技術研究センター(都産技研)にて
中小企業の電子機器開発支援や国際規格取得支援に従事。
15年4月都産技研のバンコク支所設立とともに、バンコクに赴任。
日系企業の技術支援を行い現在に至る。
■座右の銘:為せば成る。組織運営では「命令系統の一元化」。
■趣味:旅行
■バンコクの行きつけの店:タイ料理のTaling Pling
■よく見るまたは、活用しているウェブサイト:
仕事がらタイの規格のサイトはよく見ます。http://app.tisi.go.th
■休日の過ごし方:家族旅行によく行きます。各地の水上マーケット見学、ホアヒンなどのリゾート地やスコータイ、ウドンターニ、チェンマイなど地方都市へ行くことも。

 


 

改めて組織について教えてください
一般の方には、馴染みのない組織かもしれません。地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターは、基本的には、東京都内の中小企業に技術支援を行うための公設試験研究機関です。2006年にいくつかあった同様の組織を統合して独法となりました。

 

例えば、中小企業が製品開発のために高額な試作機を一から導入すれば体力的(資本力)な壁にぶつかりますが、当センター内の機器を提供して操作方法を指導することにより、中小企業の研究開発をサポートしているのです。
LED照明機器の試験や耳の不自由な人向けにスピーカー開発などを行っているほか、高電圧試験、非破壊透視試験、ガラス技術、環境防カビ試験、放射線試験、高速通信試験、めっき・塗装複合試験、光学特性計測技術など幅広く行っています。

 

2015年のタイ・バンコク支所開設は海外初と伺いました
仰るとおりです。当センターは、現在、東京臨海地区に新たな都産技研の本部を開設したほか、多摩テクノセンターなど4カ所の拠点を併設しています。そして、15年に ASEAN地域に展開する日系中小企業の技術支援を目的にタイ・バンコクに支所を設置いたしました。よく勘違いされますが、日系企業の進出支援ではなく、あくまで既出日系企業の技術的なサポートがメインとなります。
通常、検査・試験設備のないタイ現地法人、特に中小企業では何らかの技術的トラブルが発生した場合は、本国(日本本社)へ送らざるを得ない状況が多いと聞いています。または現法トップが技術畑出身者ではなく、必要な技術判断ができず、結局、日本から技術者を呼び(出張)解決することもあるでしょう。さらには、日本ではやっていない事業の立ち上げや、製造ラインの増設する際など、相談窓口がないタイでは困っている中小企業も多いんです。
公の機関であれば、無償あるいは安価に解決することができるはず。特に昨今では、東京都内の中小製造業の進出も増えていましたし、まずは相談窓口として開設し、これまでの2年間は各企業を行脚し、安心感(相談窓口がある)を抱いてもらうよう努力してきました

 

ニーズはありましたか
相談は増えましたね。現在3人(日本人技術者)での対応では足りず、本部職員(250人のエンジニア)の力を活用(テレビ会議システム)しながら対応しています。後は、タイにある試験場を活用したいという問い合わせが多く、ローカル試験場ツアーを開催しています。
他にも、「製品に使う材料の品質を確認したい」「製品を作った際に付着した異物を検証したい」「強度を測りたい」といった具体的な相談も多いですね。
皆さん、品質=信頼に関わることですので、なかなか、社外の人に相談できなかったようです。公の機関であれば、守秘義務も徹底していますし、相談しやすいと仰っていただいております。

 

ありそうでなかった組織なわけですね
JETROやJICAでは、技術的な相談までは行っていなかったようです。同様な国の機関もなく、皆さん、都度、本社に送って試験していたようです。
実は、我々のような組織は47都道府県の多くに存在しますが、御存知の通り、どこも進出していません。公的機関が予算を確保し、単独で進出するのは難しいでしょう。
東京都という冠を掲げていますが、現在は、日本を代表し、都の法人のみならず、広く門戸を開けて受け付けています。2時間以上の相談を受けることもありますが、無料です。先ずはご連絡をください。実際に、判断を決め兼ねていた企業の相談に乗り、解決した案件もあります。

 

海外生活はいかがでしょう
民間のメーカー出身なので、過去に海外赴任生活は経験済みです。タイは、初ですが生活は予想以上に楽ですね。休みの日は、家族サービスに力を注いでいますよ。約2年間で近隣国は結構周りました。衣食住、まったく困らないのがバンコクですね。

 

2017年はどういった計画をされていますか
毎月のセミナーと定期的なイベント(METALEXなど製造関連)へも出展は続けますが、将来的には試験所設備を設けたいですね。本業が試験ですから、バンコクでも可能な体制を整えるのが当面の目標です。


 

編集後記
記者となり最初の配属が石原都政2期目の東京都庁担当だった。賛否両論はあるが、新銀行東京の設立は中小企業支援が目的で、当時は「貸し渋り」「貸し剥がし」といった言葉が流行るほど、中小企業が求めたのは資金繰り。理に適った船出ではあった。閑話休題。同センターは、これまでタイにはなかった、タイ既出の中小製造業が抱える、外部には言えない悩み(求める支援)を受け付ける組織だ。公設機関初の試験所開設を求める日系企業は多いはず。2年足らずで三桁の企業を訪問した西野氏に寄せられる期待は大きい。(北)

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