風評被害のカベ

福島県産鮮魚、初の海外輸出。心無い言葉に中止

 


日本でも報道された通り、2011年の東京電力福島第1原発事故後、福島県産の鮮魚が初めて海外(タイ)へ出荷された。長年、風評被害による厳しい現状を耐えてきた地元福島の関係者にとっては、嬉しいニュースだったに違いない。ちなみに、タイに輸出されたのは、福島県相馬市の漁港に水揚げされたヒラメなど約110キロで、タイの日本食レストランに卸ろされる予定だった。ところが……風評被害の壁は厚かった。

タイのインターネット上では、「放射線に汚染されている」「食べたら危険」といった心無い言葉が飛び交った。果たして、福島の鮮魚は本当に危険なのか。タイ保健省のワンチャイ食品医薬品局長は6日に記者会見を開き、同県産の鮮魚について、「世界的に最も厳しい日本の検査を受け、かつタイでも厳密に検査済みで安全だ」と強調。その上で、「これまでタイ政府として、過去3年間、ランダムに独自検査を続けたが、一度も放射線汚染は見つかっていない」とも明かした。

現状、日本の8県(福島、群馬、茨城、栃木、宮城、千葉、神奈川、静岡)から輸入される食品は、日本の政府機関が実施する放射能汚染検査の試験結果(COA)の提出義務があり、COAがなければタイに持ち込むことはできない。タイ国家原子力技術研究所(TINT)は、「人間は、常日頃から空気中にある放射線を浴びている。仮に福島県産の魚を食べて身体に悪影響が起こるとしたら、一人1日数百キロの魚を食べることになる。現実的に無理だろう。もし、汚染を心配する人がいれば、その商品をTINTに送ってくれれば検査する」と見解を示した。

しかし、残念ながら福島県の協力のもと、現地の商社や飲食店が企画した「うまいものフェア」は中止されてしまった。風評被害により、飲食店側の営業に影響を及ぼしかねないという理由だ。震災から7年。編集子も何度か被災地に入り、取材したのを思い出す。本当の意味での復興には、まだまだ時間がかかるのだろう。

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