dtac

タイ国民全員がインターネットを使える環境へ

CEO ジョン・エディー・アブドゥラー

《プロフィール》 米国モンタナ州立大学卒業(電気技術専攻)。2007年Maxis Telecommunication(マレーシア)CEO、08年Telenor(テレノール、ノルウェーの国営通信事業社)パキスタン現法CEO、 11年トータル・アクセス・コミュニケーション(英語:Total Access Communication Public Company Limited, 略称dtac)CEO
 

近い将来、新たな通信インフラを開発・構築し、 他のキャリアにレンタルします

—現在の加入者数と状況を教えてください
現在の加入者数は、2014年3月末時点で2822万人と、昨年(2013年第四四半期)の2790万人に比べ約30万人増えています。今後も、プロモーションの活用やサービス向上を続けることで、ゆるやかに増えていくと予想しています。タイでは、急速に携帯所有者が増え、多くの方がデータ通信を利用するスマートフォン(スマホ)ユーザーです。スマホの普及で、より高速な通信速度を求めるニーズが高まり、各キャリア(移動通信業者)間の競争も激化しています。



—第4世代移動通信システム(4G)がスタートしましたね
まず、現在、主流の通信速度3Gの加入者数は1590万人(14年第一四半期)ですが、ご存知の通りタイでも次世代通信規格4G(厳密には3.9G規格)が解禁され、弊社でもサービスを開始しました。初日だけで約2万人が申込み、1ヵ月弱で13万人まで増えました。今年の目標として加入者100万人を掲げましたが、順調に伸びている状況です。 4G対象エリアもインターネット利用頻度の高い、バンコク中心から随時拡大しています。主に、サイアム、チットロム、トンロー、エカマイなどのスクンビット通り沿い、ラマ4通り、サトーン、シーロム。またBTS(スカイトレイン)、MRT(地下鉄)構内をはじめ、ターミナル21、セントラルワールド、サイアム・パラゴン、セントラルラマ9といった人が集まる施設など約300ヵ所で通信設備を展開しています。



—dtacの強みは?
前述した3G規格において、850MHz、1800MHz、2100MHzの3つの周波数帯を効率的に活用する独自のネットワークシステム「TriNet(トライネット)」を構築したことで、他社に比べ、バンド幅が広くたくさんの人々が利用できる点でしょう。弊社では、より多くの国民がインターネットにアクセスできるサービス提供を目指し「Internet for All」を掲げています。

また、トライネットでは、サービスを開始した4Gと3Gを利用場所により自動的に変更されるため、そのつど、設定を変える必要はありません。一方で、規格以外にも「Loved by customers」という戦略名で、ユーザーに愛されるためのさまざまなプランやサービスを拡充しています。そのほか、案内、販売、アフターサービスなどを「ワン・ストップ・サービス」として一ヵ所のdtacショップで賄えるよう、約8億バーツをかけて設備投資を続けています。



—外国人ユーザーへのサービスもあると聞きました
弊社では、訪タイ旅行者向けサービス「ツーリストSIM」を3プラン設けて、展開しています。価格は時期によって変動しますが、①「ハッピーツーリストSIM 299B(7日間)」通話料金100B、インターネット1.5GB②「ハッピーツーリストSIM 599B(15日間)」通話料金100B、インターネット4GB ③「ハッピーツーリストSIM 49B(長期滞在用)」通話料金15B、その後、150Bチャージ毎にインターネット100MB利用できます。



—今後の事業戦略について
dtacでは、タイ人のライフスタイルを向上させ、2015年までに国民全員が携帯(スマホ)やタブレット端末を保有し、インターネットにアクセスできる環境を目指し、「Connecting Everyone by 2015-Internet for all」を掲げました。この理念をもとに、3つの事業戦略を打ち立てています。

1つ目が、前述した「Internet for All」です。3年後、2100MHz帯による4Gサービスをタイ人がタイのどこでも利用できる環境を構築します。 2つ目も説明した「Loved by customers」です。今日より明日を念頭に、顧客満足度を向上させ、ブランド・ロイヤリティを高めていきます。 そして、最後が「Efficient Operations」。これは、デジタル時代に見合った、株主やユーザーの要望に応じられる経営改革の実践です。

近い将来、他のキャリアでも利用できるインフラを開発・構築させます。実現すれば、各キャリアに対して通信設備などをレンタルすることで、業界全体の設備投資や管理運営といったコストを抑えられるほか、環境負荷低減にもつながるはずです。今後、タイでビジネスを展開する上で、環境問題への意識向上は欠かすことはできません。

dtac「トータル・アクセス・コミュニケーション(Total Access Communication Public Company Limited)」
タイの移動通信事業会社として1989年8月設立。タイ語の“良い”という意味のディー(Dee)を略称につけている。創業者は、タイの有力財閥ベンジャロンクン家。2001年にノルウェーの通信企業telenor(テレノール)が出資比率を引き上げたことで、現在はテレノールが経営する。国内2位の携帯電話キャリア。同社のプリペイド型のSIMカードは「Happy」のブランドで販売されている。2014年3月末現在の加入者は2822万6000件。


 

次世代通信規格(4G)開始で、 ひとり気を吐くdtacの本気度

世界中で注目される第4世代(4G)と呼ばれる携帯電話の次世代高速通信の国際規格。タイでも、国家放送通信委員会が4Gで使われる周波数を割り当てる入札の実施時期について、二転三転しながらも年内実施を決めた。当然、携帯電話キャリアとすれば、喉から手が出るほどほしい免許で、すでに大手各社は参加表明の名乗りを上げている。 そんな、新たな舞台(4G市場)での競争を前に、国内2位のトータル・アクセス・コミュニケーション(dtac)が、次々にビジネス戦略を打ち出している。

タイ地元紙によれば、dtacは、自社ブランドの携帯電話端末「トライネットフォーン」を今年末まで累計150万台の販売を目指すと発表。生産を中国企業に委託し、基本料金やデータ通信プランとセット販売する。販売価格は990〜5990バーツ。同社は、昨年から自社ブランド端末を発売しており、これまで100万台を販売してきたという。

また、同社は5月9日からバンコクで4Gサービスを開始。初年度100万人の加入者獲得を狙う。同サービスは、周波数2.1ギガヘルツを用いたLTEサービス。厳密には、4Gではなく3Gから4Gへ移行する一歩手前の3.9G規格。国際会議で「LTEも4G呼称でOK」となったことで表記が許されたにすぎないが、本格的な4G時代の到来を前に、存在感を示す意味でも大きい。普及促進のため、料金は月額399〜1299バーツで、通話料が150〜950分無料になる特典を付けた。

現在、タイ国内の携帯電話番号は6月10日時点で、9370万件に達し、総人口(約6500万人)を大幅に上回る。そのうち、dtacの加入者は計2822万6000件(3月末時点)。最大手のAIS(4236万3000件)に水を開けられているのが現状だ。4G呼称のLTEサービスは、AISは実証実験段階だが、国内3位のトゥルー・ムーブはすでにサービスを開始している。下からの突き上げを回避しつつ、業界トップを虎視眈々と狙うdtacの挑戦は続く。

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