PTT

タイ最大のエネルギー・コングロマリット

CEO パイリン・チューチョートターヴォーン

《プロフィール》 1979年チュラロンコーン大学工学科卒、82生東京工業大学大学院修士号取得、85年同大学院博士号取得。2011年タイ石油公社(PTT)社長兼最高経営責任者(CEO)。12年ファイナンス・アジア誌が選ぶ「BEST CEP 2012」受賞、13年CNBCアジア主催の「第12回アジア・ビジネス・リーダーズ・アワード(ABLA)」受賞。
 

電気自動車(EV)の普及に向け、 既存GSに電気スタンドを設置します

—改めて、タイ石油公社(PTT)とはどんな会社ですか
天然ガス、石油の採掘から精製、生産、販売を主にするエネルギー関連企業です。売上規模でいえば、世界81番目で、東南アジア(ASEAN)10ヵ国の企業で世界500番以内に入るのは、当社とマレーシアの石油会社のみです。昨年の業績は、売上高900億ドル(約9兆円)、純利益33億ドル(約3300億円)です。現在、世界33ヵ国で事業展開し、毎年8億ドル程度を投資しています。※1ドル=100円換算。



—輸入に頼る日本は、石油価格の変動が経済へ影響を及ぼしますが、タイはいかがでしょうか
タイは、エネルギーの4〜5割を自前で賄っているので、ほとんどを輸入に頼る日本と比べれば影響は受けにくいでしょう。エネルギー消費量のうち、発電に使われている約7割が天然ガスです。そのほとんどがタイ湾で採掘され、消費量の4分の3を国内生産で自給し、残りはミャンマーなどからパイプラインを通じて輸入しています。 とはいえ、タイ湾の天然ガスもいずれは枯渇するでしょう。そこで最近では、液化天然ガス(LNG)の受け入れ体制の整備を進め、将来の輸入拡大に備えるほか、ご存知のとおり、タイの食料自給率は100%なので、農業輸出国という強みを生かし、バイオマス(生物資源)エネルギーの利用率を高めるなど、代替エネルギーの導入を推し進めています。



—原子力発電所は必要ないと
色々な議論はありますが、個人的には時期尚早だと思います。



—水力、地熱、太陽光といった再生可能エネルギーの導入は?
水力や太陽光などの自然エネルギーの活用もはじまっています。ただ、太陽光は東北や北部では安定しますが、太平洋側は熱風や湿気が多く、太陽光発電はそれほど有効ではありません。それよりも、前述したトウモロコシ、サトウキビ、木材などのバイオマス燃料の方が効率よく、すでに中国やフィリピン向けに輸出しています。



タイにおける理想的なエネルギー割合の比率は?
これも個人的な意見ですが、ガス(バイオ、天然含む)が5〜6割、残りは水力・石炭発電、その他で賄うのがバランスのよい割合だと思っています。石油は自動車向けのみですが、これも今後10〜20年後には電気自動車(EV)の普及で変わっていきます。



—EVの普及には電気スタンドの設置が不可欠です
仰るとおりです。すでにPTTのガソリンスタンド(GS)に電気スタンドを設置する計画を米テスラ・モーターズと進めています。もちろん、日系メーカーとも幾つか話はあります。いずれバッテリーの共同開発ということもあるかもしれません。 何より、当社グループはタイ全土及びフィリピン、ラオス、カンボジア、ミャンマーのハイウェイ(高速道路)に1300個のガスタンクを保有しています。既存施設にEVスタンドを設置するだけで、EV普及への追い風となるでしょう。



—ASEAN全域での事業を考えているわけですね
もちろんです。10ヵ国中のそれぞれの国で、すでに1〜2つの事業を展開しています。特に陸続きのベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーは仏教国で国民も中国系が多いため、仕事も進めやすいですね。今後は、宗教や民族など、タイとは違いが多い南アジアでの事業展開を進めていきたいです。



—中国との関係も重要ですね
中国は日本と同じようにエネルギー需要が高く、北はロシアからパイプラインをつなげ、南はミャンマーから輸入する計画もあるようです。経済が発展する上で、エネルギー確保は死活問題だからでしょう。



—タイは恵まれていますね
前述しましたが、タイ湾の天然ガスはいずれは使い切ります。そのためのリスクヘッジとして、オセアニアやカナダでみつかった天然ガスや油田開発への投資もしています。

 

アマゾンコーヒーは 利益率が高く順調

—PTTのガソリン・スタンド(GS)で見るアマゾンコーヒー店も御社の事業と聞きました
アマゾンコーヒーは、弊社グループのなかでも稀有な事業ですが、実は順調なんです。2013年は7000万杯を売り上げました。グループ内での事業規模としては小さいですが、利益率が高く、エネルギービジネスとは違ったおもしろさがあります。 同様にGSに併設するコンビニも好調です。共働きの家族が多いアジア諸国では、深夜でも買い物ができるコンビニが人気です。ATMでお金を引き出せ、買い物、クリーニングとすべてが一括で賄える便利さが受け入れられているのだと思います。ラオスやカンボジアにも、コンビニやコーヒーショップ併設のGSを作りました。



—AEC(ASEAN経済共同体)発足で、ますますヒトやモノの往来が活発になると言われています
すでにAECを見据えた戦略を進めています。今後、5〜10年以内には、ベトナム・ミャンマーとを結ぶハイウェイにもPTTのGSを設置する予定です。タイ国内同様に、コンビニやコーヒーショップを併設し、フリー・Wi-Fiサービスも提供します。利用者が次のGSのプロモーション情報などを得ることで、快適なドライブを楽しんでもらいたいですね。



—日本よりも早くEVが普及しそうですね
日本の自動車メーカーと組んで、PTTとしてEVを販売する予定ですが、当社の役目はEV普及のためのインフラ整備です。


 

タイ石油公社(PTT) 1978年設立。タイで天然ガス、石油の採掘から精製、生産、販売を主に手掛けるエネルギー関連企業。同国最大の企業であり、300以上の子会社を有するエネルギー・コングロマリット。 タイ国政府工業省直轄のタイ石油公団として設立されたが、その後2001年に上場し、一部民営化された。ただ、現在も大半の株式を国が保有するため、国営企業でもある。

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