勝間和代さんインタビュー【後編】
AECで発展する企業 沈みゆく企業

弊社主催セミナー「AECで発展する企業 沈みゆく企業」で登壇した勝間和代さん。多くの駐在員を前に、約2時間に渡り、日本経済や今後の中国との付き合い方、ASEANの将来について語ってもらった。先週に引き続き、後編として、当日セミナー後のインタビューをお届けする。

 

落ち込むとされる中国と
どのように付き合うべきか

―日本経済が復活するとおっしゃっていました。
安倍政権が退陣しなければ、日本は復活するはずです。金融と為替のコントロールができていれば、大きな問題ではないですから。民主党政権はそれをやらなすぎたんですよね。ただし、消費税を8%から10%に上げた場合は、どうなるかわかりません。10%が実現したときには、安倍政権は倒れるかもしれません。

―消費税は上がる気運にあります。
このままでは8割方、10%に上がるでしょう。そのときに政権が変わるかどうかは半々でしょうね。消費税は、政府にとってはすごく徴税コストが安いので、やりたがるのはわかるのですが、その前にやることがあると思うわけです。消費税は政府にとってラクですが、その分景気への影響は最悪になるでしょうね。

―消費税が10%になることで何が起こりますか。
消費支出が4〜5%下がります。それによって経済成長が2年間くらい止まることになるでしょう。それを我慢できるかどうか。金融課税や固定資産課税など、先に上げるべきものがあるので、その後に考えるのが得策ですね。特に日本は金融課税が低すぎです。だから、IPOとかをしている人達が儲かるわけです。株を売っても税金はわずか2割。アメリカだと5割くらいですよ。

―安倍政権は続いたほうがいいですか。
現状であれば、続いたほうがいいと思います。割と良心的な政権ですし、あまり利権誘導や党内の権力争いで時間を使わないので。しかし、安保問題は余計でしたね。あれはプロセスが本当によくなかったです。みんな安保改正に反対したのではなく、単独採決に腹を立てているようでした。民主主義でそれをやると、風当たりがきつくなってしまいます。ただ、安保法案については、個人的にはどういう形になってもいいと思っています。

―将来的に中国経済が落ち込むということですが、具体的なリスクとは何でしょうか?
政権の不安定さ。あとはディスクロジャー(情報公開)の不完全さ。中国というのは、「嘘をつかない」「誠実である」ということが文化としてないのです。嘘をつかない人や、誠実に約束を守る人が評価される制度になっていない。漢民族が政権を握ったのはこの100年くらいのことで、ずっと征服王朝が政権を執ってきたわけで、文化的な民主主義などに慣れていないのです。もちろん全員が悪いわけではなく、善良な人たちや、コピー製品ではない良質な製品もいっぱいあるのは事実ですが。

―今後、日本は中国とどのように付き合っていくべきでしょうか。
いつでも切れる関係にしておくこと。もしくは中国人全部が汚職にまみれた人ではないので、善良な人を探していくことでしょうか。政府と付き合うことは危険ですが、民間のメーカーなど、誠実な人たちを探して付き合っていくのが大切です。もしくは台湾系、シンガポール系のエージェントを仲介させるのもいい。マージン代はかかりますが、少なくともリスクはそこで軽減します。商社でもいいでしょうね。直接取引は危険です。中国と取引をして潰れた会社をこれまで何度となく見てきました。お金を払わなかったり、失踪してしまったりなど。彼らに契約の概念というのはないのでしょうね。親密に付き合って心中するのは避けたいところです。

―今、日本はアメリカと協調していますが、今後はどうでしょうか。
まだアメリカの方が「まし」なんです。少なくとも「フェア」という概念は強い。私はアメリカ系の企業に勤めていましたが、すごくフェアでした。多民族国家だからフェアにしないと崩壊するわけです。「日本を食い物にする」という感覚はないですよ。要するに「役に立つ分には貢献してあげるよ。役に立たないなら切るよ」とそれだけ。非常にドライなんです。困っていれば助けるし、貢献したらありがとうと言います。そう考えると、アメリカが日本に取っている行動、そのままじゃないですか?

―そうですね。では、EUとの関係はどうするべきでしょうか。
EUにおいては、フランスやイタリアなど、経済においてあまり日本と親密ではない国との距離をもう少し縮めたほうがいいと思います。今後アフリカ圏が発展した場合、元々フランス語圏が多いですから、確実にフランスの力が拡大します。もうすぐアジアのフェーズが終わり、次はアフリカなので、伸びる国と付き合うべきです。とはいえ、アジアはあと20年くらい大丈夫ですよ。タイ政府も付き合う相手としては悪くないですが、少し中国寄りという気がします。

一人当たりのGDPに注視
AECの共通通貨はダメ

―タイにも15%は華僑がいますし、中国の影響は大きいです。
そうなれば、結局、内部情報を持っている華人に聞けばいいわけです。中国ビジネスの基本です。政府とか社会を信用できないから仕方がないのですが。中国人のビジネスマンは、政府を信用してないですからね。そのため情報を持っている華人と付き合うのはおすすめですよ。まだ中国は伸びますから、弾けるまで付き合う必要があります。少なくともあと2〜3年は伸びるでしょう。ただ、その後はどうなるかわかりません。
あと、「一人当たりのGDP」には注視した方がいいですよ。それで国の発展状況がわかるといっても過言ではありません。日本が今3万6000ドルですね。普通、1万ドルくらいまでは発展するんです。中国は7500ドル。タイは5400ドルですね。2万ドルを超えると、政治活動がものすごく難しくなり、1万ドルを超えると成長が減速するんですよ。韓国は万8000ドル、アメリカ5万4000ドル、欧州の多くが5〜6万ドルですね。シンガポールも高い。ただ、日本のGDP世界三位というのは、人口が多いだけですから、日本は中進国ですよ、そういう意味で。自動車産業は強いですが、ほかにはあまり強みがない。それは大きな課題です。

―では、タイの企業はどうしたらいいでしょうか。
華人とのネットワークを生かしつつも、地政学的にはいい場所とされています。ここがポイントなんですが、今より中国が悪くなっても、日本は大きな影響はないでしょうし、アメリカも堅調でしょう。構造的なリスクは中国が一番大きいんです。その3国に挟まれながら、タイもほぼ同じように引っ張られていくでしょうね。タイは輸出入が根幹ですから、為替の影響が大きいと思いますよ。バーツがどのくらい高くなるのか安くなるのか。そのため、タイの金融政策を注視した方がいいですね。

―AECでの共通通貨はよくないとおっしゃっていました。
絶対にやめたほうがいいです。シンガポールに全部持っていかれて終わりです。ドイツを見ればわかりますが、貨幣の信頼度の高い国が得をするだけなんです。ただ、なぜギリシャが参加したかというと、最初に一瞬だけお金が集まるんですよ。それが怖い部分でもあります。

―通貨の壁が、成長の妨げにはなりませんか。
技術力とかスキルが上がってからの方がいいですよ。ASEANはEUのような先進国の集まりじゃないですから。まだタイは一人当たりのGDPが5400ドルですよね。もうちょっと成熟するまで、弱い通貨のままのほうが得になりますね。

―タイは英語ができない人が多いです。言語はAECでの成長の足かせになると思いますか。
人材面では足かせになりますね。割高になるので。インドでは英語ができる人が安いのに、タイでは高い。インド人は全員英語を話せますから、どんなに安い人を雇用しても英語でコミュニケーションが取れます。だから多くの人がインドに行くんです。ムンバイでは、ITセンターなどが立ち上がりますが、タイでは聞かないじゃないですか。英語ができないと、同じ能力の人を雇うのに人件費が1.5倍くらいになっちゃうんですよ。だからタイは微妙ですね。

―ただ、タイは地の利がありますよね。
内陸国じゃないのは強みになります。内陸国って本当に可哀想ですよ、特に製造業。部品を輸入するにも輸出するにもものすごいコストがかかってしまうので。普通に考えて、当面の敵はベトナムじゃないですかね。地政学的に見れば、ベトナムの方が有利ですよ。ちゃんと開発されればコストも安くなるはず。英語も普通に話せますし、TPPにも参加しますしね。まだ、外資を受け入れる仕組みが確立されていないので、追いつくには時間がかかるでしょうけど。

―今後、駐在員はどうすればいいでしょうか。
例えば、キヤノンは「駐在したら骨を埋める気持ちでいろ」という方針だったと聞きます。少なくても3年かかり、やっと現地の何たるかがわかってくるものです。だからキヤノンは海外に強いんです。81%が海外での売上ですもんね。こういった現地化が重要になりますね。

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