日本映画祭・上映作品『ちはやふる』小泉監督インタビュー

「100年後も観てもらえる映画を目指して」

競技かるたに没頭する少女らの青春を描いた『ちはやふる』(全3部作)が、国際交流基金主催の「日本映画祭」で一挙に上映。小泉徳宏監督が語る同作の制作秘話、そして監督業とは。

本作は人気漫画の実写化でしたが、意識したことはありますか?
映画の依頼が来た時には、すでに大人気の漫画でした。原作ファンを裏切らず、どのくらい忠実に映像化するか悩みましたが、最終的には「原作者の想い、伝えたいメッセージを表現しよう」という答えに至りました。漫画のキャラクターに似せようとしすぎると失敗に終わる気がして……。漫画を読んでいない人にも楽しめる作品を作ろうと心がけました。それに、何十巻もある漫画のすべてを、2時間で伝え切れるわけがないことはわかっていたので、どこを残してどこを削るか。原作にない部分の提案も含めて、相談を重ねました。

キャスティングについても漫画のイメージが付いているので大変でしたが、一人ひとりのキャラクターとやる気を見て、決めましたね。それこそマッケン(新田真剣佑)は演技初心者でしたけど、撮影前に原作の舞台である福井県で1カ月ほど暮らしてもらって。現地の空気を体感することで役を掴んでもらいました。本作を通して、役者が持つ潜在能力を最大限に発揮させることが、監督の重要な役割の一つだと改めて教えられましたね。

自分の作品が海外で上映されることについて
バンコクの前にインドネシア、フィリピンなどの日本映画祭でも上映して頂いたのですが、日本と同じシーンでリアクションしてもらい、映画に国籍は関係ないと実感できました。また海外で上映されることで、改めて日本文化に対する世界の見方を感じましたね。本作は、百人一首や着物といった日本の伝統を感じられる要素が強いので、より興味を持ってもらえるのではないでしょうか。

私はこれまで邦画を撮ってきましたが、常に海外に向けた作品づくりを意識してきました。日本人だけの、内輪だけの面白さではなく、もっとフラットな目で見て楽しめる作品を常に意識しています。

今、監督として思うこと
昔は、制作前に思い描いていたものが形にならないと失敗だと思っていましたが、決められた予算や期間があり、役者やプロデューサーなど多くの人が関わっています。自分のイメージが変化していくのは当たり前ですし、今は、その時々で出来上がったものが自分のベストだと思えるようになりました。いつだって作りたいのは、国籍も時代も関係なく“みんなが笑って楽しめる作品”です。自分のエゴを強要するのではなく、観終わった後に、内容について少しでも考えてもらえるような映画を、これからも残していきたいです。100年後も、観てもらえるように。

今後の活動について
今の私は、スポーツに打ち込む青春を描く「スポコン」作品の監督というイメージが強いかもしれませんが、時代劇やアニメ、ミステリアスなものも撮ってみたいですね。それに監督業に限らず、脚本やアニメーションなど何でも挑戦したいです。


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青春映画の枠を越え、日本文化を発信する『ちはやふる』


PROFILE
小泉 徳宏 こいずみ のりひろ
1980年東京生まれ。ROBOT所属。2006年に「タイヨウのうた」で劇場長編映画監督デビューを果たし、大ヒットを記録。新人や若手俳優を次々に起用する先見性と、繊細かつ情緒豊かな演出手腕で各方面から高い評価を受ける。

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