ホテイアオイが大繁殖

 

暫定首相が怒り出し、政府機関も大慌て。
チュラ大准教授と一般人が論争するドタバタ劇

 

20世紀初頭に世界各地に分布した熱帯アメリカ原産の水生植物「ホテイアオイ」。その爆発的な繁殖力から「青い悪魔」として世界十大害草の一つに指定され、国によっては持ち込み禁止、タイでも政府やネット上も巻き込むほどの問題になっている。
8月に入り、台風により各地で洪水が発生。原因を調べると、ホテイアオイが河川や運河、ダムの水門をせき止めていたことが判明。これがプラユット暫定首相の耳に入ると「なぜこのような問題でわざわざ首相が動かなければならないのだろうか? 9月中にホテイアオイをすべて除去しろ」と声を荒げた。これを受け、同問題を担当する運輸省海事局、内務省、農業・協同組合省灌漑局は中部チャイナート県のチャオプラヤーダムの水門で、ホテイアオイ5万5000トンを1週間で除去。さらに灌漑局のトンプレーウ副局長が1億6400万バーツの予算をかけた除去計画を発表したが、予算が高額だと批判を受け、会計監査委員会事務局が「各担当が正当に予算を使っているか調査する」と乗り出すほど、各政府機関に影響を及ぼす一大事に発展している。
騒ぎはそれだけでは終わらない。チュラロンコーン大学理学部のチェサダー準教授はフェイスブックに「ホテイアオイは食べられる。地方の人たちにとっては普通のこと」と効果的な除去方法として食用を提言。しかし、これに対し、ある一般人が噛みつき、「ホテイアオイに毒性があると知らないのか? 河川や運河のものは毒素や農業用殺虫剤を吸い、食べることなどできない」と反論した。結局、同準教授の研究結果が28年前のものであることが発覚し謝罪する羽目に。「責任を取って、1週間フェイスブックには投稿しない」と不可解なコメントで決着した。
実はタイにはラマ6世の時代に「ホテイアオイ処理法(1913年)」なる法律が制定され、事細かに除去方法が明記されるなど、かねてより繁殖の危険性が指摘されていた。しかし、03年に「現代にはそぐわない」との理由で廃止となっている。そもそも実態を調べていたかどうかも疑わしいが……。
暫定首相から世間まで巻き込み、ここ最近にはなかったドタバタぶりが際立ったホテイアオイを巡る一件。果たして9月中に解決されるのだろうか。

この記事をSNSでシェア!

一番上へ戻る