“夢じゃない”マイホーム

景気刺激策としてスタートしたローン政策が好評だが……家計債務は膨らみ続ける

「夢のマイホーム」が夢じゃなくなる!?13日、財務相は景気刺激策の一環として、月収3万バーツ以下の低所得者向け住宅ローンを発表。「物件の譲渡手数料とローン手数料は0.01%」「300万バーツ以下の不動産は価格の20%を所得税から控除」という明らかに債務者に優位な条件とし、ローン上限額も引き上げる大盤振る舞い。これまで月収1万バーツの所得者は60万バーツが上限だったが、100万バーツに増額。月収2万バーツは120万バーツから200万に、月収3万バーツは180万バーツから300万バーツとなり、かなり現実的に家を購入できるようになった。
受付初日の19日には、全国で2000人の申し込みがあり、政府住宅銀行(GHB)のアンカナー取締役は「用意した100億バーツは1,2ヵ月でなくなるだろう。委員会に提案し、さらに予算を増やしたい」と鼻息を荒くした。また、大きな反響を目の当たりにした民間銀行も”二匹目のどじょう”とばかりに動き出し、クルンタイ銀行は500万バーツまでの上限を検討、カシコン銀行は書類手続きの迅速化を視野に入れているという。
最も利益を享受するのは、不動産開発会社。仲介コンサルティング企業「コリアーズ・インターナショナル」によれば、コンドミニアムの97%、一軒家の59%が300万バーツ以下であり、2015年度の不動産売り上げは、前年比13%増の3300億に達すると見込んでいるから、笑いが止まらない。
一方、想像以上の反響に味をしめた政府は、景気刺激策の第2弾をすでに発表。16日、経済担当のソムキット副首相は、大手7社の不動産開発会社の代表と会談し、低所得者向け住宅として、50〜60万バーツの一軒家を販売するよう、協力を要請した。不動産開発会社側のメリットは、現在のところ”CSR”(企業の社会的責任)だけだという。
タイの家計債務の総額は、GDPの80%にあたる約10兆バーツ。景気刺激策として”夢”を持つ一方で、返済というシビアな”現実”が待っていることも看過できない。

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