無国籍民族ロヒンギャの悲劇

ロヒンギャ族の強制収容所だったと思われる山中の捜索

ロヒンギャ族の強制収容所だったと思われる山中の捜索

 

国を持たない少数民族の末路は、
犠牲者500人を出したタイ強制収容所だった

2015年5月1日、タイ南部ソンクラー県サダオ市にあるカオケオ山で、バングラデシュやミャンマーからきたロヒンギャ族難民男女26人の遺体が発見された。
警察によると、遺体は人身売買の被害者とみられ、周辺には、被害者らが収容されていた形跡のある建物39棟を発見。警察は、同地域一体が強制収容施設だったとみて捜査を続けている。

ロヒンギャ族は、バングラデシュやミャンマーに住むイスラム系少数民族だが、国籍すら与えられず、迫害の歴史はあまりにも有名。現在も迫害から逃れるため、同族の難民流出は続いている。なかには人身売買業者に身柄を拘束され、身代金の要求や強制労働者として売られるケースが後を絶たない。

ロヒンギャ族の受難は、今回に限ったことではない。ミャンマーでの迫害は、明々白々たる事実だが、タイにおいては“人身売買”による被害が大半を占める。今年1月には、ナコーンシータマラート県で5台のピックアップトラックにすし詰めに乗せられた98人のロヒンギャ族が発見され、うち3人は窒息死していた。不正入国する多くのロヒンギャ族は、「外国で働ける」との悪徳仲介業者の口車に乗せられ、多額のお金を渡した挙句、実際には劣悪な環境のタイの強制収容所に送られているという。

甥を人身売買業者によって殺された、あるロヒンギャ族はこう語る。「人身売買業者から『甥を返して欲しければ、9万5000バーツを払え』と身代金を要求され、払うとさらに12万バーツを求められた。『払えない』と断ると甥は殺され、一緒にいた甥の友達は売られていった」。また、生き残ったロヒンギャ族は、「(収容所)連行されたのは8ヵ月前だが、当時800人近くの同族民が住んでいた。そのうち500人は、栄養不足や暴行を受け死んだ」と非人道的な虐待行為があったと訴えた。

世界が注目するなか、5月6日、タイ政府は「ミャンマーやマレーシアにも協力を求め、すぐに対応する」と発表した。宗教や民族問題といった複雑な背景もあり、こと人権という視点では捉えきれない問題だが、一日でも早い解決を祈りたい。

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