中国、アメリカのアセアン覇権争いの真ん中に立たされたタイ

超大国と軍政の関係

加速する中国のタイシフトを前に、
アメリカが悩ます立ち位置

最近、アメリカ大使館関係者などのタイ軍政批判がやたらと新聞を賑わすようになった。今、タイとアメリカの関係はどうなっているのか? 

どうやらアメリカが複雑な状況であることは間違いない。クーデター直後、アメリカは早々に軍政を非難し、恒例行事だったタイでの軍事演習中止を発表。しかし、アメリカはいつの間にか当初の主張を一変させ、先日行われた軍事演習に何事もなかったかのように参加した。背景にあるのは中国の存在。タイの識者は「中国が演習に参加したからだろう。中国はアセアンで兵器を売って、市場を握ろうとしている」と分析する。

民主主義に固執し、どこか足踏みするアメリカに対し、中国のスタンスは明確。事実上の一党独裁政権下の社会主義国でありながら、“資本主義流のビジネス”を巧みに利用する中国はクーデター直後、軍事政権への支持を表明。今年、中国は初の「中国・アセアン国防相会議」を、“アメリカと日本を外して”開催しようと計画しており、タイシフトの加速は確実となっている。

ただ、経済面からみれば、タイにおけるアメリカの地位はいまだに大きく、昨年の対アメリカへの輸出総額は約7678億バーツで、トップの中国に次いで2位(3位は日本)。輸入総額は約4741億バーツの3位(1位は中国、2位は日本)と、これら巨額な数字からも簡単にタイが中国になびくことができないのも事実。

これだけみてもタイ、アメリカ双方に複雑な状況が絡み合っていることがわかるが、最近になってアメリカが「戒厳令の解除」を訴える理由には、元タクシン首相の影響があるともいわれている。

赤シャツ隊の動きを抑制する戒厳令について、プラユット暫定首相は「今は解くわけにはいかない」と断固反対を貫いているが、タイメディアの多くは「アメリカはタクシン元首相の政策を好んでいた。元首相はアメリカの投資ファンドを受け入れ、PTTも民営化させ、アメリカには都合がよかったはず」と伝えている。このタイミングでアメリカが「戒厳令の解除」を訴えた理由は、タクシン派へのアシストという見方もできるのだ。

中国、アメリカのアセアン覇権争いの真ん中に立たされたタイはどう動くのか。火蓋はすでに切られている。

【写真上】2月11日、パットリック・マーフィー米大使がヨンユット副首相と会談。(写真提供:Royal Thai Government)

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