“44条”が使われすぎ?

許可なしで中国人が働けることにNO! 政府の決定に波紋

 


伝家の宝刀“44条”の発動で一件落着。ところが……。

プラユット暫定首相は15日、タイと中国が共同整備する高速鉄道事業のうち、バンコク-ナコーンラチャシーマー間(約250キロ)に対して超法規的権限(暫定憲法44条)を行使。これにより、工事着工を阻んできた農業以外の利用が規制される「農業改革地」内の制限、つまりはハードルが取っ払われた。しかも、44条には、おまけも付いた。中国企業の設計、電気・技術者といったエンジニアのほか、関連する専門家(人材)のタイでの就労(資格取得の免除)を許可。50億バーツ以上の予算執行に際して第三者機関による審査も免除する、至れり尽くせりな許可を与えた。

当然、計画遂行を願うアーコム運輸相は「44条の発動で計画がスタートできる。第一期工事(3.5キロ)は3カ月以内に着工する」、ソムキット副首相も「ナコーンラチャシーマー間が終われば、すぐにノンカーイまで延伸させる」と諸手を上げて(発動を)歓迎した。

ところが、今回の超法規的手段の行使にネットでは批判が殺到。タイの有名建築家のドゥアンリット氏は「中国人の建築家やエンジニアが許可無しで働けることに納得できない。タイ人の建築家やエンジニアは仕事がなくなる」と異論を唱える。また、タイ国鉄道エンジニアリング協会のディサポン会長も「そもそも中国の安全基準を信用できない。数年前に脱線事故もあった。技術力は信頼に値するのか」と疑問を呈した。

一方、こうした反論に運輸省のチルット広報官は「今回の決定は中国とのMOU(了解覚書)に基づいている。中国は2万キロの高速鉄道の整備実績を持ち、全て国際的な安全基準に従っていた」と一蹴。とはいえ、政権発足以来、44条によるスピード感ある政で、遅々として進まなかったタイの課題を解決したことも事実だ。「超法規」の良し悪しは、歴史が証明してくれるだろう。

 

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